「タイで雲海を見よう!」
そう言われたとき、あまりピンとこなかった。雲海って、標高の高い場所で寒い中見るイメージがあるけれど、タイは暑いし、そもそも高い山なんてあったっけ……?
今年1月、毎年恒例の子連れ旅でタイに行ってきた。結婚前にもそれぞれが一人旅で何度か訪れた大好きな国。そして、現在6歳の息子にとってはこれが3度目のタイ訪問となり、我が家史上もっともリピート率の高い渡航先でもある。
とはいえ、とくにタイに詳しいわけではなく、行けば毎回バラエティに富んでいて楽しくて、おいしいものもたくさんあって、と“間違いない”からつい選んでしまうような気もする。
でも、何度も旅しているタイだからこそ、未知のスポットに出会いたい。そう思っていたら、夫の口から飛び出したのが冒頭のセリフだった。タイ北部のチェンライから車で2時間ほどの場所にある、ラオス国境近くの「プーチーファー」に行けば見られるらしい。しかもシーズンは11月から1月にかけて。タイミングもバッチリだ。
タイに到着し、バンコク、チェンマイと回ってチェンライまでやってきた。当初はここからローカルバスでプーチーファーに移動して、現地で宿を探して一泊のつもりだったが、ベストシーズンにつき軒並み満室だという話を耳にした。さすがに子連れで宿なしはマズイ。そこで、チェンライから車で向かうことにした。
出発は深夜3時。息子は乗車してすぐ、横になって寝始めた。寝付けない大人は、窓の外のきれいな星空をぼんやり眺める。と、急にあたりが真っ白になり、雲ひとつなかったのが嘘みたいに一気に霧に包まれた。その後も、晴れたり霧が出たりを繰り返し、早朝5時前、プーチーファー近くの駐車場に着いた。車を降りたら、寒さに体がぶるっと震えた。よく冷えている、ということは、雲海に出会える可能性大かも。
ドライバーとはここで一旦別れ、乗り合いトラックに乗り換えて山の麓へ向かう。そこから2~30分歩いた先がビューポイントになっている。トラックを降りたところには、ジュースやカップラーメン、ニットキャップを売っている露店が並んでいた。
懐中電灯を出して、いざ登頂開始。真っ暗で全貌はいまいち掴めないが、比較的ゆるい傾斜の道が続くようだ。寝起きの息子は、軽い足取りでひょいひょい登っていく。
道のところどころには、民族衣装を着て腰をフリフリしながら歌っている子が。目の前にはチップ用の入れ物があって、少し離れたところで彼らの親とおぼしき人物が見守っている。
まもなく頂上というところで、視界が開けた場所に出た。あ! 一面真っ白な雲の連なりが見える。雲海だ!!
シーズンだからといって必ず見られるとは限らない。しかも、今年は乾季でも雨の日が続き、密かに心配していたが……、ああ、よかった。