気持ちのいい場所を走るには最適なタイヤで!
3月から12月までのサイクリングツアーシーズンで、合計50台のクロスバイクを整備しながら多くのツアーをガイドしていると、使用しているタイヤの乗り心地、耐久性、軽快さがよくわかるようになってきます。ツアーはフロントバッグやシートポストバッグのみをバイクに装着して、日帰りサイクリングのように走るスタイルで、タイヤの選択は軽量バイクパッキング、軽量ツーリング用途と重なってきます。
今回はツアーで実際に使用しているタイヤ2本と個人で使用している1本をあらためてチェック。次のタイヤを選ぶ際に参考にしてみてください。サイズは700Cx幅32mmから38mmまでなので、多くのクロスバイク、ツーリングバイク、グラベルバイクに装着できると思います。
おすすめ1『シュワルベ/ マラソンレーサー』
乗り心地
「シュワルベ」のツーリングカテゴリーのなかでも軽量な「マラソンレーサー」。サイズは700x35Cで重量は465g。タイヤの両サイドの補強もしっかりしていて安心です。軽さを追及してサイド面を薄くしているタイヤもありますが、路面に落ちている障害物や段差などでサイドを切ってしまうことが結構あるんです。その点では軽快さと耐久性のバランスがとれたタイヤだと言えます。乗り心地はロングツーリング用の姉妹製品、「マラソン」に比べると柔らかくてクッション性があります。耐久性の高い、ゴムを厚くしているタイヤはゴムの上に乗っている感覚になっていきますが、このタイヤはまだ空気の上に乗っているような感覚が残っています。バランスの良さから、現在クロスバイクを使ったツアーのメインタイヤにしています。
タイヤのトレッドパターンと柔らかさ
新品だと2mmくらいの溝があって、雨天時の走行や、細かい砂利、砂が路面にあるような滑りやすい状況でも安心です。タイヤセンターにも溝が入っているので、直進時に抵抗になったり、ロードノイズが発生するような感じに見えますが、実際に乗ると気になりません。耐パンクの補強がしてあるわりにはタイヤはしなやかで柔らかいです。スポーツバイク的な軽快さを、日帰りサイクリングや、軽量バイクパッキングで味わうならいいバランスです。2年ほど使用してもゴムがひび割れてくることもなく、溝がある限り使えそうです。
タイヤ幅の実測
サイズは700x35Cですが、幅は実測32.5mm。実はメーカーのサイズ表記と実測が異なることが多いので、ここは注意が必要です。経験から言うと、実測32mm以上の幅のあるタイヤは舗装されているほとんどの路面に対応でき、クッション性も高くなるので、32mm以上の幅がおすすめ。
総合評価とスペック
僕が個人的にロングツーリングで使用している姉妹製品、「マラソン」の耐パンク性、耐久性にはかないませんが、この「マラソンレーサー」は軽量バイクパッキングで軽快に走るという目的にはとてもバランスの取れたタイヤです。
軽快さ ★★★★☆
乗り心地 ★★★★☆
耐パンク ★★★★☆
耐久性 ★★★★☆
サイズ:700x35C
重量:465g
価格:4,800円(税抜)
おすすめ2『サーファス/ツオーノハイブリッド』
乗り心地
軽量とコストパフォーマンスを追及するならばこのタイヤがおすすめ。サイズは700x32Cで、重量はカタログ値390gですが、実際に走ってみるともっと軽い感覚があります。軽さを追求しているのでサイド面は「マラソンレーサー」と比べると薄いですが、ロードの標準的なタイヤよりは厚く保護されています。全体的にゴムがしなやかで乗り心地はとてもソフトな感覚。ツーリングだけどロード的な走りも楽しみたい場合にはおすすめできます。
ただやはり薄く軽量なため、路面の障害物をうまくよけながら走るテクニックは必要。ちょっとした段差でサイドカットする確率は「マラソンレーサー」よりも高いと思います。僕は7日間のバイクパッキングでこのタイヤを使いましたが、パンク、サイドカットはなかったです。ツアーでの使用でも特にパンクが多いという印象はありません。そしてなんといっても2,600円(税抜)という価格は魅力的です。
タイヤのトレッドパターンと柔らかさ
タイヤセンターは溝のないスリックタイプになっていますが、サイド面は浅い溝が入っています。コーナーリング時のグリップはこの溝によって安心感があるし、またタイヤの柔らかさがグリップを助けてくれている気がします。センターは耐パンク補強がしてあって、ゴムも硬め。タイヤの減りは思ったよりもゆっくりで、3000㎞程度は使えます。2年使ったものでもゴムの劣化は顕著にみられないので、この軽さと、この価格に対してはとてもお値打ちだと思います。
タイヤ幅の実測
今回のテストはすべてのタイヤの空気圧を5bar (72psi) に合わせています。この空気圧でタイヤ幅は実測32.3mm。「マラソンレーサー」とほぼ同じ幅です。空気圧を推奨最大値の7bar (100psi) にするとタイヤ幅は実測33.1mmになりました。空気圧でタイヤが膨らむのは想像していましたが、通常使用する空気圧の範囲で幅が0.8mmも変化するのは驚きでした。僕の体重(61㎏)だと7barはちょっと硬すぎ、普段は5barで使っています。
総合評価とスペック
ロードバイクにも乗っていて、クロスバイク、グラベルバイクでツーリングもしてみたいという方にはおすすめです。ロードのような軽快さを引き継いでいて、耐パンク、耐久性もロードのように路面に気を付けながら走れば大丈夫です。ただし、荷物が多め、悪路があるかも、7日間以上のロングツーリングの場合には「マラソンレーサー」などを選んだほうがいいかもしれません。
軽快さ ★★★★★
乗り心地 ★★★★☆
耐パンク ★★★☆☆
耐久性 ★★★☆☆
サイズ:700x32C
重量:390g
価格:2,600円(税抜)
おすすめ3『シュワルベ/G-ONE オールラウンド MicroSkin, TLE』
乗り心地
このタイヤは実はグラベル用に開発されているのですが、ツーリングでもおすすめです。僕もグラベル用に使い始めたのですが、今では舗装のツーリング時でも気に入って使っています。舗装道のツアーでは現在使っていませんが、これを使うのもありかと思い始めています。サイズは700x38Cでタイヤ幅は実測39.1mmあり、上記の2種類の32mm幅よりだいぶ太くなります。重量は460gと「マラソンレーサー」よりも軽量。タイヤサイドは薄めで、上記の2種類の中間くらい。軽量に作られているのと、実測39mmという幅で乗り心地はこの3種類の中で一番いいと思います。太いタイヤのクッション性と安心感は1日バイクの上で過ごしても快適です。軽量なため、走り出しが遅いという感覚もなく軽快。軽くて太いというのがこんなにもよかったというのが新しい気づきでした。
タイヤのトレッドパターンと柔らかさ
小さなノブがタイヤを覆っています。写真のタイヤは2年以上、距離は3000㎞程度走行後のものです。新品ではノブの高さは1.5mm程度、今ではセンター部分は1mm以下に。交換時期です。このノブのおかげでグリップ力はかなり高く、雨天時、細かい砂利程度の悪路も安心して走ることができます。気になるのがこのノブでの転がり抵抗とロードノイズだと思いますが、タイヤ自体がとても柔らかいので、転がり抵抗はノブのないタイヤとあまり変わりがないです。
実際にロードバイクに乗った友人と下り坂でペダリングを止めて大きな遅れがでるのか試してみたのですが、ほぼ同じスピードで下って行けました。ロードノイズもノブが小さいおかげか、タイヤからくるノイズなのか、舗装面の凸凹からくるノイズなのかわからないくらいで、ほぼ気になりません。ツーリング中は舗装のルートを走るつもりでも、工事や思いがけない土砂などで悪路となっている場合も多いです。このタイヤは安心、安全面からとてもおすすめです。
タイヤ幅の実測
タイヤ幅は実測39.1mm。舗装のツーリングにはとても太いな~とはじめは思いましたが、乗っていると太さを感じなくなり、荒れた路面に出くわすたびにこのタイヤでよかったと思いながら走っています。いきなり太くするのは、と悩んでしまう場合は同じタイヤで700x35Cという選択もあります。重量が700x38Cは460g、700x35Cは400gとさらに軽くなるので軽快さを追求する場合はいいかも。ただ僕は38Cの太さと重量のバランスを気に入っています。
総合評価とスペック
ツーリング用のタイヤとしては変化球ですが、ライド自体が楽しくなる点ではとてもおすすめ。ツーリング中に、これまで避けていた悪路がありそうなルートにも挑戦できます。山奥の秘湯温泉で、最後のアプローチが砂利道だったりすることがたまにありますよね。また、ルートによって路面が荒れている路肩が多いのもよくあること。グラベル用のタイヤは現在様々な種類が発売されていて、選択肢が多いのもいいです。安全性、快適度、そして楽しさをミックスさせていけるグラベルタイヤはツーリング用途にもおすすめです。
このタイヤは価格が9,800円(税抜)と高価な部類。ただ、現在僕も試している廉価版の「シュワルベ G-ONE オールラウンド パフォーマンス」は同じサイズ700x38Cがあり、価格は「RaceGuard」仕様ならば5,800円(税抜)。しかも重量は440gとちょっと軽いです。タイヤを触ってみるとしなやかさが通常版より劣るかなと感じますが、乗っている感覚は通常版に限りなく近いです。
軽快さ ★★★★☆
乗り心地 ★★★★★
耐パンク ★★★★☆
耐久性 ★★★☆☆
サイズ:700x38C
重量:460g
価格:9,800円(税抜)
まとめ
以上、僕がおすすめするバイクパッキング、ツーリング用、おすすめ軽量タイヤ3選でした。タイヤは気軽にできるチューンアップ、そして効果が体感できる最大のものかもしれません。タイヤの感触を確かめながら走って、次のタイヤをどれにしようか考えるのも楽しみのひとつです!