「モーラナイフと出会ったのは、もう十数年前。ククサを作るのに、いいカービングナイフがないか探してて見つけたのが、この北欧製のフックナイフだったんだよね」
と、ネイチャークラフト作家の長野修平さんは語る。
使い込むほどに真価を発揮する、実用本意のモーラナイフ
いまでこそ、ブッシュクラフトの入門編ナイフとして、その名が知れ渡っている「モーラナイフ」だが、当時はまだ名前もあまり知られていなかった。
「木をくりぬくことに特化したナイフでね。刃が曲がっているから、深い穴でも周りに当たらず、彫り進むことができる。こんなナイフがあるってことに、驚かされたよ」
一本あるだけで、クラフトの世界急に広がる。ノミとは使い勝手が違い、削る時間を楽しめるナイフだ。
木彫り用のナイフ。右はボウルやカップ、スプーンなどの内側を丸く削るためのもので、左2本は削りやすいよう、ブレードが短く鋭利に尖っている。取っ手が楕円形になっており、握りやすいのも特徴。
「モーラナイフには、そんな専門性が高いナイフが豊富。クラフトもDIYも料理もアウトドアも。自分の中の4つのカテゴリーをすべて網羅しているのがすごく魅力的でね」
手工芸と金属加工業で栄えたスウェーデンの町「モーラ」で129年前に誕生したナイフは、とにかく実用本意。用途別に種類が選べ、コストパフォーマンスも高く、気兼ねなく、野蛮に使えるのがいいとも。
「コレクション用じゃない。ボロボロになるまで使い込んで、そこから新たな物が生まれる。あくまで主役は物で、このナイフは名脇役なんです」
現在は大ロット生産で年間400万本製造され、55か国へと輸出されている。スウェーデン王室御用達で、木工作家はもちろん、ハンターから林業従事者、水産加工業者と、さまざまなフィールドワーカーから支持を受ける。次はどの分野のナイフを生み出すのか、期待に胸が膨らむ。
薪割りと着火を1本でこなす
焚き火特化型ナイフ
ファイヤースターターが柄の後ろに内蔵された新モデル。刃が厚めで切る、削る、割るなど、ブッシュワークに対応。ハンドルがラバーで滑りにくく、雨でも使いやすい。ブレードはステンレススチールで手入れが楽。
●全長=238㎜●刃長=104㎜●重さ=約92g
サーメ人の刃物文化を受け継ぐ
クラシックモデル
赤い樺材のハンドルが特徴のクラシックシリーズは、スウェーデン人ならひと目でモーラナイフとわかる、シンボル的存在。小刀として木を削ったり、テーブルナイフとしても重宝する。刃はカーボンスチールで頑丈。
1/0●全長=204㎜●刃長=77㎜
2●全長=250㎜●刃長=105㎜
3●全長=292㎜●刃長=135㎜
問い合わせ アンプラージュインターナショナル 072(728)2781
(BE-PAL 2020年6月号より)