今持つべき4つのブランド
1 ジー・サカイ
2 スパイダルコ
3 モーラナイフ
4 オピネル
「ナイフは切れるのが当たり前、
しっかり握れるかどうかが決め手です」
「10歳くらいから父親たちに連れられて、山で狩猟をしたよ。狩猟にナイフは必需品。70年近く使い続けているね」
お気に入りのナイフを前に、自身とナイフの歴史を振り返る中條さん。78歳の今もシーズンになれば猟銃を持ち、山に入る現役ハンターが、ナイフに求めるものはシンプルだ。
「しっかり手にフィットするグリップ力。北海道の冬山では、日が暮れる前に獲物を解体することが鉄則。動物の脂は硬くなるし、手もかじかんでくる中、正確に素早くナイフを使いこなさないといけない。そんなときに、しっかり手にフィットして滑らないハンドルであることが重要なんだ。もちろん、よく切れることが大前提だけどね」
その考えに至ったきっかけは、20代のころのあるナイフとの出会いだったという。
中條さんの相棒ナイフ
(1)ランドール/M25
アメリカを代表する鍛造ナイフブランド。ハンドルに使われるスタッグはグリップ力が高い。
(2)松田菊男/ユクランケカムイ
関市に工房を構える松田菊男さんが作るナイフ。中條さんがデザインを手がけた愛用の一本。
(3)松田菊男/ベツカムイ
これも松田さんとのコラボモデル。スリムな刃で、狩猟の解体に役立つハンティングナイフだ。
(4)ガーバー/ゲーター
刃先に獲物の皮を切り裂く際に使う「ガットフック」がついたフォールディングナイフ。
(5)ガーバー/M400
フィンガーグルーブのついたハンドルが滑りにくい、寒冷地で使うのに適している。
(6)佐治武士/別注ナイフ
鍛造技術で作られた和式ナイフ。越前武生の鍛冶、佐治さんによるオーダーメイド品。
(7)佐治武士/ハンティングナイフ
佐治さんの刃物は、真冬の北海道でも刃欠けしにくく、切れ味が続くと中條さんは絶賛する。
(8)スパイダルコ/ポリス
波刃は、ロープを切ったりする際に役立つ。いつでも使えるサブナイフとして愛用する。
(9)スパイダルコ/エンデューラ
「サムホールは、素早く片手で刃をオープンできる。緊急時にも対応しやすい」(中條さん)
(10)ジー・サカイ/キムンカムイ
中條さんは、知り合いのアウトドア&DIYのカメラマンが製作した左上のシースに収納する。
(11)ジー・サカイ/キムンカムイⅡ
ユーザーの声に応える形で、キムンカムイをアレンジして獲物を切ることに特化させた一本。
(12)日野浦 司/副鉈(そえなた)
鍛冶屋による一点もの。「日野浦さんのナイフも寒冷地で使う際に理想的なスペックです」
「ガーバーのマグナムハンターというモデルを初めて手にしてゾッとするような凄味のある切れ味に度肝を抜かれた。立体的な成形のハンドルも手によく馴染んで当時使っていたナイフと比べものにならなかった。狩猟中になくしたけれど、諦めきれず山の中を2回も捜索したな」
と笑う中條さんは、以来、海外のアウトドア雑誌を取り寄せるなどして、探究を行なった。お気に入りのナイフはトライアルの結果残った「相棒」たちだ。
自らデザインを手がけたナイフも多い。処女作「キムンカムイ」は、鉈がわりにも使える頑丈さと、獲物に刃が食い込みやすい鋭い切れ味を共存させた。サブとして使うフォールディングナイフは、突発的な事態に備え、スパイダルコなどすぐに刃をオープンできるモデルをポケットに入れることが多い。
フィールドで使えるキャリーテク
シースナイフの場合は、ライフルの銃床が邪魔にならないよう左側の腰につけることが多い。
ランドールのシース。砥石を入れる小型のポケットにツールナイフを入れるのが中條さん流。
メインナイフはフィールドで落とすことを避けるためリュックの中に入れて持ち運ぶことが多い。
サブナイフはポケットに。すぐ使えるようライフルのスリングに装着できるシースも愛用する。
今も気になるモデルのチェックを欠かさない中條さん。ナイフの選び方のコツを伺うと「使用目的をはっきりさせること」という答えが返ってきた。
「私は、北海道の狩猟に特化したナイフを選んできたけれど、地域や用途が異なれば、別のナイフが必要になるはず。自らの身を守り、自然を楽しむためにナイフは不可欠な道具。気に入った一本を見つければアウトドアは一段と楽しくなるよ」
ハンター 中條高明さん
1941年、北海道生まれ。10歳のころから父親らに教えられながら狩猟を始め、北海道の伝統的な狩猟方法を継承する。その知見を後進に積極的に伝え続けながら、今も害獣駆除などに活躍する。「キムンカムイ」シリーズをはじめとするハンティング・ナイフのデザインも数多く手がける。
※構成/服部夏生 撮影/三原久明
(BE-PAL 2020年6月号より)