水泳の授業や海水浴場の開設が見送られるこの夏。活動自粛による運動不足に加えて、管理者不在……そんななか、安全に水と触れあう術をリバーレスキューのプロとライフセーバーにたずねました。
身近な遊び場である河川、その危険はあちこちに(川編)
川で注意すべきポイント
1 濡れた岩場・護岸
2 上流に戻る反転流
3 強い巻き返しの流れがある堰堤
4 流れの速い本流
5 足が挟まりやすい岩場
6 浅瀬
7 流水にある倒木
「川で遊ぶときは下見を、とくに下流に堰えん堤ていなど危険箇所がないかを確認を!」
川での救助指導を行なう本間靖雄さんはそう話す。本間さんは「リバーセーフティー・ジャパン」を主宰する、河川救難救助の第一人者だ。
「急に深くなったり、流れの水圧が高くなったり。その変化が見えにくいので、慎重な行動が必要です」
また、海に比べて水温が低いために疲労が蓄積されやすく、イメージどおりに体が動かないことも……。
「さらに、渓谷では携帯電話が入らないこともあるので、事前に確認が必要です」
意外な危険が潜むのは堰堤などの人工物。仮に流された場合、コンクリート護岸は上陸しにくく、流れを吸いこむ消波ブロックに挟まると、大事故につながる。
「起こりうる危険を頭において、行動してください」
浅瀬に潜む危険
もし川で流されたら…
川遊びの鉄則
・遊ぶ前に必ず下見を(とくに下流をチェック)
・天気予報を確認(上流部を含む)。特に雨量
・足のサイズの合うシューズを着用する
・ひとりで行かない。子供、仲間から目を離さない
・深い場所、流れの強い場所ではPFDを(的確な着用を)
穏やかな海に潜む危険、風や潮などが大きく影響する(海編)
海で注意すべきポイント
1 滑りやすい岩場
2 陸から海へ吹く風
3 離岸流
4 砂地のくぼみ
5 干満で位置が変わる波打ち際
6 波が一気に崩れるダンパー
一方、監視員のいない海を安全に楽しむ術を、ライフセービング歴26年で日本ライフセービング協会で教育本部長を務める松本貴行さんにたずねた。「遊泳前に干満のライン、風向きなどを、自身がライフセーバーになったつもりで、確認してください」とのこと。水難事故の自然要因のうち、約50%を占めるのが、離岸流だという。
「打ち寄せた波が一定の場所に集まり、沖への強い反流を生み出す。この流れにパニックや体力の消耗が重なると事故につながります」
ここで強調するのは離岸流からの逃げ方ではなく、いかにそんな状況を防ぐか。
「そうしたリスクがあることを知り、それを避ける行動をとることが大切です」知識を支えるのは経験。松本さんは、四季を通じて海に親しんでほしいという。
「そのうえでKeep Watch。お子さんからは絶対に目を離さないでください」
溺れている人がいたら…CASE1
溺れている人がいたら…CASE2
海遊びの鉄則
・事前に気象や風、波の情報を入手する
・遊ぶ前に海岸全体を見渡す(波、離岸流、風向き)
・遊泳は足のつく範囲で。適宜PFDを着用する
・遊泳中は岸に目印を決め流されていないか確認
・ひとりで行かない。子供、仲間から目を離さない
離岸流からの脱出
川でも海でもPDFを活用しよう!
「パーソナル・フローティング・デバイス」と呼ばれる救命胴衣で、足のつかない場所、流れの強い場所で重宝。子供に着させる場合、サイズが合っていることがとても重要。股を通すベルトがあると、はずれにくい。
最後に…川でも海でも「飲んだら、泳がない。」
ライフセーバーが活動した全国 約 200 箇所の海水浴場統計によると、2019 年は、溺水事故の人的要因のう ち飲酒によるものは全体の「14%」で、泳力不足の次に多く報告されているという。 過去7年間を見ても、「遊泳中に溺れて心肺停止」となった方のうち、「約 3 割」が、飲酒をしていた。もちろん、海だけではない。川も同じ。お酒を飲んだら、水には入らない!
※構成/麻生弘毅 イラスト/近常奈央 取材協力/リバーセーフティー・ジャパン、日本ライフセービング協会
※この記事は2020年ビーパル9月号の記事を再編集したものです。