大画面から「おまけ」を探す
写真集からはじまるフィールド探検。
「水棲生物の写真集を見るのが好き」という荒俣宏さん。大画面の写真集には、ときにとんでもない場面が、意図せずに写り込むことがあるという。
「きれいな魚群の後ろで、カスザメが獲物に飛びつく瞬間などが写っていたりするんです」
そんな背景の隅々からもドラマや情報を読み取る……そのおもしろさに気づいたのは、アフリカの友人と劇映画を見たときのこと。友人は肝心のストーリーを追わずに「一瞬、うさぎが出た」とか「カラスが飛んでいた」というような細部だけに集中していた。
「大きな画面の中で狩りをする感じ。その面白さに決定的に気づいたのは、自分で水中写真を撮りだしたからです」
撮った覚えがない珍しい生き物が端っこに写っているという喜びと驚き。岩穴やらを撮影し、写真を拡大して「おまけ」が写っているのを探すのは、写真集を見る楽しさと同一だとか。
「こんなふうに、写真集からでも、フィールド探検ができるんです!」
民話妖怪:
民話の世界をビジュアル化した偉業!
『世界幻妖図鑑』
「日本では江戸時代から図鑑が存在するが、世界の妖怪を扱った点が特色。日本の妖怪も西洋画家の絵で紹介されている。化け物は民話の世界とされるが、これを図像化したのが妖怪だとすると、この図鑑は偉業といえる」
フロールチェ・ズヴィヒトマン文 ルトウィヒ・フォルヴェーダ絵
荒俣 宏日本語版監修 ¥2,980 2020年
フレーベル館 96㌻ 37×27㎝
深海生物:
専門家不要のマニアック図鑑
『チリメンモンスターをさがせ!』
「知り合いの小学生からもらいました。シラス干しに混じっている特殊な生き物を扱っているので、寒い夜中に海に潜らずとも深海の驚異を観察できる」
日下部敬之、きしわだ自然資料館、きしわだ自然友の会監修 ¥1,600
2009年 偕成社 64㌻ 28×22㎝
浮遊生物:
これぞ自然の大霊界!
『美しい海の浮遊生物図鑑』
「今や秋から冬の真夜中に極小なプランクトンを探す"変態ダイバー"が多い。そのほとんどが、世界初ではないか! と思うような奇想天外な生物だから。この図鑑づくりがどれだけ大変な仕事かを、ぼくは見て知っている」
若林香織、田中祐志著 阿部秀樹写真
¥2,400 2017年 文一総合出版
180㌻ A5判
昆虫:
嫌われる虫たちが秘める驚きの世界
『落ち葉の下の小さな生き物ハンドブック』
「ヤスデやダニ、ゴキブリやミミズ…
…。故意に虫、いや無視してきた驚きの世界。ご近所の未知への関心こそ、21世紀の博物学ではないでしょうか」
皆越ようせい著 渡辺弘之監修 ¥1,600
2017年 文一総合出版 120㌻ 新書判
作家・翻訳家・博物学者:荒俣 宏さん
10年間のサラリーマン生活を経て執筆生活へ、その後、幅広い分野で活躍。近著に『アメリカ怪談集』(河出文庫)がある
※構成/麻生弘毅 撮影/永易量行
◎紹介している本の書誌情報は、すべて発行当時のものとなります。
(BE-PAL 2020年7月号より)