原始の焚き火を楽しむ「火おこし道具」を自作してみよう!
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  • 焚き火のコツ

    2020.10.21

    原始の焚き火を楽しむ「火おこし道具」を自作してみよう!

    「原始の火」をおこしてみよう!

    「木を擦り合わせて火をおこすという知識は知られていたけれど、実態としての技術は欧米や日本では衰退していたんです」

    関根秀樹さん/和光大学で「火の文化史」「音と楽器のミンゾク学」、多摩美術大学で「絵の具実習」を担当。著書に『焚き火大全』(編著。創森社)ほか著作多数。

    関根秀樹さんはリズムよく堅いケヤキを削ってゆく。北米先住民の消えゆく術を基にしたボーイスカウトの手法や、日本の神道の発火技術は実用性を失い、形骸化していた。

    「そんな古代の火おこし術を甦らせたのが、岩城正夫先生です」

    同教授から火おこしを学んだ関根さんは志を継ぎ、古今の文献を調べて研究を深め、その術と楽しさを世に伝えている。

    さっそく弓ギリ式発火具の作り方を教わる。ハンドピースと火きり棒に使うのは堅い木、弓にはしならない材を、カートリッジは、中央が空洞になっているウツギや、髄になっているアジサイ、キブシなどを選ぶ。

    「そうでないと、すり減るとともに先が尖ってゆき、煙は出ても火が着かないんです」

    それではと弓を引くと、たちまち煙が出て点火。その間、わずか5秒! 心の準備ができる前の早業だった。ならばと取材班も弓を取る。火きり板の穴の真上に左膝の先端を置き、左手を膝にあて、固定しながら弓を引く。はじめはうまくいかないものの、楽な姿勢と力の配分に気づいてゆく。同時に、火きり棒がまっすぐであり、ハンドピースとの接点が円滑に回ることの重要性が、動作を通じて理解できた。そうして弓を動かすこと30秒、しだいに煙は大きくなる。生まれたばかりの火種を火口に包んでくるくるくる……!! その瞬間、奥底を揺さぶるような情動が駆けめぐる。この感覚は、いったい……。見上げると、にっこりうなずく関根さん。

    「いまおこしたその火は、数千年前の縄文人がおこした火と、なんら変わらないものですよ」

    トルネード式火吹き竹を作ろう

    所要時間 約15分

    材料

    竹(φ4㎝ほど)、節を抜くための棒(φ1.5㎝ほど)。

    道具

    のこぎり、ナイフ、サンドペーパー(#80、150、280、500、10
    00、2000、4000)、火箸、ペンチ、雑巾。

    STEP1
    竹を切り、節を抜く

    image

     

    竹を45㎝ほどの長さに切る。このとき片方は節で、他方は節から5㎝ほどの位置で切断。

    image

    棒をたたき込むようにして「すべての節」を抜き、ナイフで整える。

    imageSTEP2
    吹き込み口を滑らかに整える

    image

    ナイフで内側を削ったら、サンドペーパーで凹凸をなくし、滑らかになるまで磨き込んで、空気を通りやすくする。

    image

    STEP3
    火にかざして水分と油を抜く

    image竹の表面の汚れを取り、長もちさせるため、焚き火か炭火でゆっくりあぶる。水蒸気が噴き出し、油が滲んでくるので、雑巾などで拭き取る。

    STEP4
    吹き出し口付近に吸引口をあける

    image
    ナイフと熱した火箸を使い、先端付近に吸引口を3~4か所、図のようにあける。吸引口からの誘引気流が竜巻状にねじれて風勢を増す。これが「トルネード式」の真骨頂!

    タテ断面 誘引気流 誘引気流 吹いた息 誘引気流を巻き起こす とともに竜巻状にねじれ、 風勢を増す ヨコ断面 誘引気流

     

    完成!

    image口をつけずに吹く東南アジア式をもとに、流体力学のコアンダ効果(粘性流体の流れが、物体にそって曲げられる現象)などを応用。呼気の数倍の強い風を楽に遠くまで送り出せる。

    弓ギリ式発火具を作ろう

    所要時間 約30分

    image

    材料

    ケヤキの枝(右から❶φ2×22㎝、❷φ3×22㎝、❸φ1×50㎝)、アジサイの枝(φ1㎝)、スギ板(厚さ1㎝)、綿の紐(55㎝)。

    道具

    のこぎり、ナイフ、彫刻刀、たこ糸、ペンチ、木工ボンド。

    image

    左上からハンドピース(軸受け)、弓、火きり棒、火きり板、カートリッジ、受け板。北海道の縄文人やアイヌ民族も使ったという弓ギリ式発火具。欧米のものより小型で、発火効率は抜群。携帯にも便利。

    STEP1
    火きり棒を作る

    image❶ ケヤキの枝①の中央に、カートリッジ(アジサイ)を差し込む穴(深さ2㎝)を開ける。

    image❷ 先端部が割れないよう、たこ糸を巻いてボンドで固着。本体は七~八角形に削る。

    image❸ カートリッジ用のアジサイを、❶であけた穴にきつく入るよう、ナイフで削る。

    image❹ 緩んでぐらつかないように❷を押し込む。火きり棒はまっすぐな素材を選ぶことが重要。

    STEP2
    ハンドピースを作る

    image
    ケヤキ②を使い、回転する火きり棒を押さえるハンドピースを作る。

    image火きり棒に合わせて②に穴をあける。火きり棒の上端はなめらかに回転するよう、丸く削る。

    STEP3
    火きり板を作る

    imageスギ板に60~90度の切り込みを入れ、その頂点から2~3㎜奥へ左右に斜めの傷をつけ、表面を削り取る。

    STEP4
    弓を作る

    imageケヤキ③の両端に穴をあけ、綿の紐を通して玉結びで固定。紐の長さは、火きり棒を2回巻いてゆるまないくらい。

    image

    火をおこそう

    所要時間 約5分

    材料

    image生み出した火種を焚き火へと育てる火口。左上からゼンマイの綿、下が解いた麻紐、スギの枯葉、シュロの樹皮繊維。

    STEP1
    弓を前後に動かす

    image火きり板の下に葉っぱを敷き弓をセット。ハンドピースで押さえながら前後に動かす。

    STEP2
    わずか5秒で点火!

    image煙とともに、焦げた木粉がV字の隙間に。木粉の火種を葉っぱにのせる。

    STEP3
    火種を育てる

    imageゼンマイ綿や麻をシュロで包み、鳥の巣状に。火種をゼンマイ中央に落とし……。

    STEP4
    くるくると回す

    image火種を包み込んだ火口の端を摘まみ、くるくると回すと、たちまちめらりと着火!

    ※構成/麻生弘毅 撮影/田渕睦深

    (BE-PAL 2020年8月号より)

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