田舎の隠れ家的ゼロ・ウェイストのお店
「ゼロ・ウェイスト」という言葉が日本でもチラホラ聞こえ始めてきました。
ゼロ・ウェイストの意味は、“WASTE(ゴミ・無駄・ 浪費)をZEROにしよう”。英語のZERO WASTEがそのまま日本語として使われています。
一人一人が普段の生活で少しずつでも意識することができれば、実現不可能ではありません。でも、日本も今年に入ってようやく全国的にレジ袋廃止が徹底されてきたばかり。買い物1つするだけで、野菜やお菓子の包装やキッチン用品のパッケージ、レジ袋、とプラスチック製品がたくさん付いてくる環境では、身近に感じることも難しいとは思います。
そもそも買い物をするだけでゴミが出るのだから、ゴミをなくせるわけがない。では、ゴミ自体を出さないようにしよう。というポリシーを持つ店が、ゼロ・ウェイストの店です。
全国的にゼロ・ウェイストを掲げるお店が少しずつ増えつつありますが、自分の家の近くにはないという方もまだまだ多いはず。
小豆島も少し前まではそうでした。そしてついに6月21日、一軒オープンしたのです!!
その名も「タネむすび堂」。来店したお客さんを笑顔で出迎えてくれるのは、オーナーの片岡玲子さん。小豆島には8年前に移住してこられ、旦那さんは海藻や落ち葉を肥料にオリーブやくだものを育てる「タネむすび堂農園」を運営されています。
場所は、小豆島のちょうど真ん中あたり。「池田」という地区にある小豆島中央病院のすぐ近くです。
商店ですが大通りからは外れていて、民家の中にあるのでちょっとした隠れ家カフェの装い。
手作りの看板を見つけたら中に入ってみましょう。
門を入った途端、かわいらしい雰囲気のお庭がお出迎えしてくれます。
玄関を開けるとさらに懐かしい雰囲気。「ただいまー」と言いたくなるようなこの雰囲気はなんでしょう。買い物しに来たはずなのに。初めてなのに。
おばあちゃんが大切に使っていらした古民家を改装したお家なので、その空気感が残っているのでしょうか。田舎育ちの私にとってはとても馴染みのある感じ。
まず、入り口を入って右手はお店のエリア。ここには、量り売りの商品と、量り売りではないけれど玲子さんが厳選した商品が並びます。
すぐ目に飛び込んでくる存在感抜群のレトロなショーケースは、元古物商をしていた人の家から貰い受けたもの。実は店内にある他の家具には、1つも買った物がないとか。
知り合いからもらったり、壊れていたものを直したり、自分で作ったりしたそうです。「そういえば、店づくりの段階からゼロ・ウェイストでしたねー」と笑う玲子さん。
ショーケースのさらに右手には、さらに棚があります。ここに並ぶのはガラス瓶に入った量り売りの商品で、お客さんが持参した容器に自分で測って入れ、玲子さんに申告します。
万が一、容器を忘れても大丈夫。玲子さんが用意した、リサイクルの容器を使うことができます。
他にも、豆板醤や純胡椒、カレーなど、玲子さんが厳選したこだわりの商品が並びます。そのラインナップは、エスニック。
一方、入り口左手には縁側つきのお座敷があり、玲子さん手作りのランチやお菓子、ドリンクなどを味わえるようになっています。お天気のいい時はお庭でいただくのも気持ち良さそう。
玲子さんも、お店ではゆったりと販売しています。
日本の田舎の島にいるのにここだけ異世界のような感覚になるのは、壁の漆喰の色のせいでしょうか。モロッコのマラケシュを連想させる独特のサーモンピンクがアクセントになっています。
この壁以外のどこを見ても、玲子さんの想いがつまったこだわりの装飾が見られます。
自然な流れでお店を始めた玲子さん
——量り売りの店をしようと思ったのはいつ頃からでしょう? 何かきっかけはありましたか?
「5年以上前からです。神奈川県逗子市のマフィン屋さんを訪ねたとき、店内で量り売りをしていたのを見て『あ、これいいな』と思ったのがずっと頭の中にありました。
その後働いたカフェでもやってみたいという想いはありましたが自分の店じゃないし、実現できなくて。出産した後少し落ち着いてきたから何かやりたいな、と思ったときに思いついたのが、量り売りのお店でした」
——お店に置く品物を選ぶ基準はなんでしょうか?
「店内の商品はどれもほとんどオーガニックの物です。自分が普段から使うものや好きなものです。お店で扱うもので作ったお菓子も販売しているので、実際に食べて味わってもらうこともできます。
私たちが作っているオリーブオイルや椿油も販売しています。これから少しずつフェアトレードの雑貨や食品、コーヒー生豆なども入れていきたいと思っています」
玲子さんがご自分で作ったものの1つが「おしょうゆメープルナッツ」。
店内で量り売りしているオーガニックの無添加ナッツの色々に、小豆島に蔵を構える正金醤油さんのこだわりしょうゆ「純」とカナダ産オーガニックメープルシロップを絡めて作ったオリジナルレシピ。お試しに少しいただきましたが、手が止まらなくなる危ないヤツでした。
実は玲子さん、料理の腕が立ち、特にビーガン料理のプロです。15年くらい前、ご実家のある栃木で、当時からするとかなり先進的だった穀物菜食のカフェで働いていて、その時に料理の技術や知識を身につけられました。その経験が今のご自身のルーツになっているそうです。
——オープンしてまだ1か月ですが、お客様の反応はいかがですか?
「正直、小豆島ではまだゼロ・ウェイストやエコに関心のある方は少ないと思っていました。少しずつ認知されていけばいいな、くらいで始めたのですが、意外にも反響が多くて驚いています。量り売りを目当てに来店してくださる方がチラホラといて、『そうそう、こういうお店が欲しかったの』と言ってくださる方もいて、内心小躍りしています。笑」
学生の頃から海外に目を向け、生物学を学んだり海外でボランティア経験を積んだりしていたという玲子さん。昔から日常的に発生するゴミの多さが気になり、ブームになる前からマイ箸やエコバッグを持ち歩いていました。彼女にとって、ゼロ・ウェイストのお店を自分自身で始めることは自然な流れだったようです。
今は小さい子どもを育てながら一人で運営しているので、日曜日と月曜日の週2日だけの営業ですが、将来的には自然療法などのワークショップ等イベントも他の曜日に開催していきたいそう。
お店にずらりと並ぶ数々の商品と同様、聞くといろんな引き出しが出てくる玲子さん。まだオープンして2か月しか経っていませんが、すでに島の人たちの中では口コミで広まっている様子です。これからどのようなお店に育っていくのか、すでに楽しみです。
タネむすび堂
香川県小豆郡小豆島町池田1088-5
営業日:日・月曜日(不定休あり)
営業時間やその週のお菓子の内容などはFBやInstagramにて要チェック
https://www.facebook.com/tanemusubidou/
https://www.instagram.com/tanemusubidou/