私の住む町が被災地になった
昨年、2019年9月9日の夜間、私の住む千葉県の南房総エリアに台風15号が直撃しました。今までに経験したことが無い轟音と、叩きつける雨の音に一睡もできないまま、不安な夜を過ごしました。
一晩明け、外へ出て愕然としました。自宅の庭は飛んできたトタンや木材が転がり、落ち葉で埋め尽くされていました。
近所には崩れた家や、電柱が倒れている場所もありました。山側を見ると木が根っこから倒れ、がけは崩れており、地形が変わっていました。
近年、日本各地でこれまでにない規模の台風、地震、洪水などの災害が確認されています。皆様の住む地域も、いつ被災地になるかわかりません。我が家の被災生活6日間の体験を踏まえて、生活に役立った情報をお伝えしようと思います。
食料の保存と炊飯について
被災したのは残暑が続く9月上旬。日中の気温は30℃以上でした。心配だったのは冷蔵庫の中身です。中にあった肉や魚などの傷みやすいものは早めに調理しました。おかげで初日の夜は食べきれないほどの豪勢な食事になりました。
冷凍室はなるべく開けないようにしました。中身を冷やす為に、コンビニを3件まわって板氷を探しましたが、どこも売り切れでした。結局、被災してから2日目には冷蔵庫の中身が全て傷んでしまいました。スーパーもほとんどの店舗が停電していたので、まともな生鮮食品や野菜が並んだのは5日目ぐらいからでした。
2日目からの食事はレトルト中心になりました。最近のレトルト食品は種類も豊富で味も良いのですが、さすがにレトルト食が長く続けば、飽きがきてしまいます。
そんな時に役立ったのは、乾燥わかめや梅干し、干しシイタケ、乾燥した油揚げ、味噌などです。栄養価も高く、ひと手間加えるだけで立派なおかずになりました。乾パンやラーメンだけではなく伝統的な乾物も優れた保存食です!常日頃からの備蓄をオススメします。
停電により電気釜は使用できませんでした。幸いなことにガスは生きていたので、家庭用のガスコンロと鍋を使って美味しいお米を炊くことが出来ました。キャンプ好きで良かったと思った瞬間です。日ごろから鍋を使った炊飯に慣れておけば、非常時も安心ですね。
夜の生活には
我が家にはキャンプ用のランタンが多数あったので、夜間にはこれらを使いました。
居間にガソリンランタンを1台、トイレと台所に300ルーメン程のLEDランタンを1台ずつ、枕元にはヘッドライトを置き、廊下や卓上にはロウソクやオイルランプを設置しました。居間はガソリンランタン1台で十分すぎる程の明るさでした。トイレに1台ランタンを設置することで子供たちも怖がらずに用を足せました。
電池に関しては、被災中に売り切れになっている店舗もありました。ランタン用の電池や燃料は多めの備蓄がオススメです。
電池や燃料の節約のために、夕食は日が落ちる前に済ませました。
普段通りの生活ならば、食後にはテレビやタブレット端末を眺め、子供たちはゲームやyou tubeに夢中になっています。
被災中には、一つの部屋で一つの灯りを家族全員で囲み、よく会話をしました。子供たちと一緒に絵本をたくさん読みました。便利過ぎる生活が一番ではなく、不便を経験することによって「家族の繋がりが深まる」というポジティブな面もあることに気がつきました。電池や燃料が限られているので夜更かしもできません。20時頃には床に就き、日が昇る5時頃に目を覚ます。自然のリズムに合わせた健康的なサイクルの生活でした。
充電やガソリンについて
停電中はテレビやネットが使えないので、携帯電話やラジオが外とつながる手段でした。充電にはキャンプのために用意したモバイルバッテリーとソーラーパネルを使用しました。幸い晴れの日が続いたので、ほとんどの充電をソーラーでまかなうことが出来ました。
車のカーチャージャーも携帯の充電に役立ちました。ただ、被災1日目はガソリンスタンドが閉店していました。2日目から車1台あたりの給油量を制限してガソリンを販売していましたが、長蛇の列ができていました。安定して購入できるようになったのは被災5日目からでした。
被災1日目の時点で、我が家の車のガソリン残量は半分以下でした。開いている店舗も少なく、自宅から最寄りのスーパーまで5km以上あります。ガソリン不足は気がかりの種でした。それ以来、車のガソリンは常に満タンにすることを心掛けています。
もし断水していたら・・・・
台風で影響を受けたのは電気と物流のみでした。ガスや水道のライフラインが生きていて本当に良かったと思います。電気がストップしたことにより、浄水場の機能が停止して、断水したエリアも近くにありました。
人間の体には1日に2リットル以上の水分が必要です。夏場の水不足は命に係わります。被災以来、ミネラルウォーターのストックを欠かさないようになりました。浄水器を持っていれば、汚れた水を飲み水に変えることもできます。もしもの時の為に、浴槽の水は捨ててしまわずに貯めておくことをオススメします。
電気が使えないので、風呂に入ることが出来ませんでした。日中は30℃以上あっても、日が落ちるとグッと涼しくなる時期です。冷水のシャワーを大人は我慢して浴びていましたが、子供にとっては苦行でしかありません。日中のプール遊びがお風呂のかわりになりました。
他に役立ったもの
近所には屋根瓦の大半が吹き飛んだ家が多くありました。すぐにプロの修理を受けることが出来ないので、一時的な補修が必要でした。雨漏りの防止の為にブルーシートで全体を覆い、風で飛ばないように、土を詰めた土嚢袋を重しにしました。市からもブルーシートや土嚢袋の配布が行われましたが、とても足りていない状況でした。
飛んできた物がぶつかってガラス窓が割れ、風が吹き込んでしまい、屋内がぐちゃぐちゃになった家もありました。シャッターがない窓の補強の為に木材をストックしておくことをオススメします。
また、ダクトテープ(強度のある粘着テープ)も家の一時的な修繕に役立ちました。ホームセンターではすぐに売り切れていました。
被災を経験して
人の力ではどうしようもない災害に直面した時、大切なのは日頃から食料の備蓄や道具の用意を怠らないことと、災害を想定した避難経路の確認だと実感しました。
また、個人的には「なんとかなるさ」という心持ちも大切だと感じました。常日頃からキャンプや登山、旅などのアクティビティーを通して、不便を楽しむことが出来ていれば、被災時にもあわてずに平常心でいられるはずです。自分に余裕があれば、困っている他の人に目を向けることも出来ますね。