秋田の郷土食「いぶりがっこ」は、燻製器で作れるのか
燻製というのは、食材を長期保存に適した状態にするための方法であり、先人の知恵の結晶ともいえるものです。
私のふるさと秋田では、乾燥・燻製させた大根を漬物にしたものをいぶりがっこと呼び、近年秋田の郷土食として広く知られるようになりました。本来は大根を囲炉裏の煙で乾燥させながら燻し、その後漬物にします。
しかし今回は、漬物を燻製するという逆の工程で、いぶりがっこが作れるのかを検証します。秋田出身の私が見た目・味の二つの面で、果たしていぶりがっこと呼べる出来になるのかを、市販のいぶりがっこと比較してみます。
「いぶりがっこ風たくあん」の作り方
既にたくあんになっている大根を、燻って燻煙の香りを付け、いぶりがっこに近付けます。
材料はスーパーで市販されているたくあんを使用します。スライスされていないものは、短時間では燻煙の香りが付きにくいため、今回はあらかじめスライスされているものを選びます。
たくあんの余計な水分を抜くために、キッチンペーパーの上に並べます。しばらく置いておくと、たくあんの水分がキッチンペーパーに吸われ、たくあんがある程度乾燥します。
さらにたくあんを乾燥させるために、ドライネットに入れて2時間放置します。
燻製を作る方ならご存知かと思いますが、水分の多い食材を燻すと酸味や苦みが出てしまい、あまり美味しくありません。この段階で食材の水分を抜いておくことで、酸味や苦みが出づらくなります。
たくあんは既に漬物になっているため、火を通さなくても食べられます。このように火を通さなくても良い食材、火に近いと溶けてしまったり焦げてしまう食材は、熱源から離れた位置で燻します。
燻煙材はスモークウッド、もしくはスモークチップの2種類がありますが、バーナー等で置き皿を熱する場合はどちらを使っても構いません。
今回はさくらのスモークウッドを使用します。さくらは香りが良く、肉や魚その他の食材にもとても風味が合います。
火加減が強すぎると燻製器の中が高温になり、たくあんが焦げてしまう恐れがあります。温度計を使用して高温になる前に火を消し、温度が下がったら再度着火して燻煙を絶やさないようにします。
この方法を繰り返して、1時間程度燻します。
折り返しの30分で燻製器の蓋を開けて、たくあんの様子を確認したところ、薄い茶色に変化してきていました。
たくあんを裏返し、さらに30分燻します。
1時間が経過したところで火を消し、燻煙が出なくなるまで蓋を開けずそのままにします。
燻煙が落ち着いてから蓋を開けると、最初は黄色だったたくあんが燻煙を吸って茶色くなり、みずみずしかった見た目はカラカラに乾燥しました。
市販のいぶりがっこと比較
完成したいぶりがっこ風たくあんを観察すると、端がわずかに焦げていることが分かります。これは温度管理が甘かった証拠で、温度が高過ぎたために焦げてしまっています。
たくあんの水分が抜けて、しっかりと乾燥している様子が分かります。
たくあんを横に並べると、見た目が大きく変化していることが分かります。しかしいぶりがっこのような表面の黒みは出ておらず、いぶりがっこと異なる見た目になりました。
味はいぶりがっこより若干あっさりしている印象です。しかし燻煙の香りがしっかり染み込んでおり、口に入れると豊かな香りを感じます。たくあんのしょっぱさが残っており、お酒のつまみになりそうです。
居酒屋のメニューで見かけることの多い、いぶりがっことチーズの組み合わせを再現してみました。チーズをのせたことで味が適度にマイルドになり、たくあんのしょっぱさが和らぎました。
チーズ自体燻製すると美味しい食材のため、いぶりがっこ風たくあんの燻煙の香りとマッチし、違和感のない味になりました。
いぶりがっことはひと味異なる、新しい美味しさに出会った
いぶりがっこは大根を乾燥・燻製させたのちに漬物にするため、水分が多くしっとりとした仕上がりになります。
今回作ったいぶりがっこ風たくあんは、漬物を乾燥・燻製するため、水分が少なく乾物に近い仕上がりになりました。しかし燻煙の香りがすっきりとしており、いぶりがっこよりもクセのない味に仕上がりました。
個人的にはいぶりがっこは好きですが、クセのある味は人によって好き嫌いが分かれると思います。今回作ったいぶりがっこ風たくあんは、クセのない味なので、より多くの人に好まれそうです。
もしも燻製をする際には、たくあんを燻ってみるのはいかがでしょうか。いぶりがっことはひと味違う味が楽しめますよ。