日本国内にある長距離トレイルを順ぐり紹介する本企画。後編では、全国にある長距離トレイルの生みの親ともいえる「信越トレイル」の歩き方をお伝えします!
後編も前編に続き、信越トレイルを現地で維持管理する「信越トレイルクラブ」の鈴木栄治さんに話を聞きました。
歩ける期間は一年のうち、わずか5か月弱
信越トレイルがある関田山脈は世界でも有数の豪雪地帯として知られているため、例年では雪解けが進んだ6月中・下旬から、冬の訪れが聞こえはじめる11月の上旬までと、歩ける期間が限られています。5月には新緑の森を楽しむことができますが、トレイル上にはまだ残雪が点在するため、雪山装備や読図技術が必要です。
「残雪がなくなる夏の季節も楽しむことができますが、トレイルの標高が低いので厳しい暑さを覚悟しないといけません。そのため、おすすめしたいシーズンは、9月と10月の2か月間。秋になるにつれて気温が落ち着くので快適に歩くことができますよ。さらに毎年10月20日前後には紅葉が見頃を迎えるので、タイミングが合えば鮮やかに色づくブナ森を楽しむことができます」。
さらに季節が進み11月初旬になると雪が降り始める可能性があるので、トレイルに接続する峠道は閉鎖されてしまいます。そのため、信越トレイルで利用できるテントサイトは、10月末で一旦クローズ。深々と積もる雪の下で来年のオープンを静かに待つことになります。
スルーハイキングには4泊5日がおすすめ
全長80kmの信越トレイルは、6つのセクションに分かれています。セクションとはトレイルを歩く上で目安になる区間のこと。無理なく歩くには、1日1セクションの計画がおすすめです。ただし、歩き方は人それぞれ。たとえばテントを背負って一気にトレイルを踏破するスルーハイキングに挑戦する場合は、4泊5日の計画をおすすめします。各テント場にはトイレが併設されていて、水場も近くにあるので、テント泊初心者の方でも比較的安心して計画することができるでしょう。
公共交通機関を使ったモデルコース(4泊5日の場合)
1日目:北陸新幹線飯山駅〜(バス)〜斑尾高原ホテル〜斑尾山〜赤池テントサイト(約12km)
2日目:赤池テントサイト〜桂池テントサイト(約21km)
3日目:桂池テントサイト〜光ヶ原キャンプ場(約14km)
4日目:光ヶ原キャンプ場〜野々海高原テントサイト(約18km)
5日目:野々海高原テントサイト〜天水山〜栄村口〜JR飯山線森宮野原駅(約16km)
※4日目は距離が長くアップダウンが多くなるので、早めの行動がおすすめ
麓に立ち寄って温泉や地元グルメを楽しもう!
もちろんスルーハイキングだけでなく、1泊2日や2泊3日のセクションハイキングも考えられます。このとき利用したいのが、トレイルの麓にある地元の宿です。信越トレイルを管理する信越トレイルクラブに加盟する宿泊施設の多くが送迎サービスを実施しており、入山口もしくは下山口まで車で送ってもらうことが可能です。(※詳細は各宿に要確認)
さらに信越トレイルの周りでは、長野県側にある戸狩温泉をはじめ、野沢温泉、新潟県側にある越後田中温泉や松之山温泉など、地元の温泉を楽しむこともできます。もちろん温泉宿も信越トレイルクラブに加盟しており、泊まらなくても日帰り入浴ができる施設もあるので、ぜひ立ち寄って汗を流したいですね。
ここでしか味わえない郷土料理を要チェック!
そして地元グルメも見逃せません。
「かつて上杉謙信も食べたという、笹の上に酢飯をもり、山菜やシイタケなどをのせた“笹ずし”や、オヤマボクチというアザミ類の植物の葉をつなぎに使用した“富倉そば”が地元の名物。機会があればぜひ味わってみてください」。
中でも富倉そばは、セクション3で通過する長野県飯山市の富倉地区に伝わる希少な郷土料理。オヤマボクチの葉からつなぎの役目を果たす繊維を取り出す作業にとても手間がかかり、さらに生地を1時間以上もこねてから畳以上の大きさになるほど広く薄く伸ばす技が要求されることから、別名“幻のそば”とも呼ばれています。
スルーハイキングにしてもセクションハイキングにしても、温泉や食べ物など地元ならではのエッセンスをプラスすれば、信越トレイルをより一層楽しめること間違いなしです!
信越トレイルを歩くおすすめギア3選
最後に、信越トレイルを歩く上で持っていると便利な道具を厳選して3つ紹介しましょう。教えてくれるのは東京都三鷹市にある登山用品専門店ハイカーデポのスタッフ長谷川晋さん(詳しい紹介はこちら)。役立つ山道具を要チェック!
(1)荷物を軽く小さくしよう!HMG「ウインドライダー2400」
信越トレイルはそこまで標高が高くない里山を歩くのですが、細かいアップダウンがあるので荷物はできるだけ軽くコンパクトにするのがおすすめです。さらに雨が多い山域でもあるので、防水対策も考えたい。HMGの「ウインドライダー2400」はキューベン&ポリエステルのハイブリッド素材を使い、798gと軽量なのに、頑丈で高い防水性を備えています。
HMG「ウインドライダー2400」
¥40,000+税
容量:40L
重量:798g(本体668g、アルミステー110g)
詳細:https://hikersdepot.jp/items/1562.html/
(2)トレッキングポールがあるとラク! ブラックダイヤモンド「ディスタンスカーボンZ」
細かいアップダウンが多いので、やはりトレッキングポールを使ったほうがラクにハイキングを楽しめます。中でも軽くて丈夫なものを選ぶとしたら、ブラックダイヤモンドの「ディスタンスカーボンZ」がいいですね。フレームの素材は軽量なカーボンなのですが、従来のカーボンポールよりも剛性が高いです。ただし長さは調整することができないので、身長に合ったサイズを選んでください。
ブラックダイヤモンド「ディスタンスカーボンZ」
¥18,800+税
サイズ:100cm〜130cm(5cm刻み)
重量:300g(ペア、120cm)
詳細:https://www.lostarrow.co.jp/store/g/gBD82354100/
(3)雨対策のレインウェアも大切! アウトドアリサーチ「ヘリウムレインジャケット」
雨が多い山域なのでレインジャケットも重要です。そこで、軽さで選ぶならアウトドアリサーチの「ヘリウムレインジャケット」がおすすめ。軽量でありながら防水透湿性に定評があり、ハイカーズデポでも長年扱ってきた定番のアイテムです。今季から素材がパーテックスシールド・ダイヤモンドフューズに変わり、従来モデルと比べて耐久引き裂き性が約5倍も向上しました。
アウトドアリサーチ「ヘリウムレインジャケット」
¥21,000+税
サイズ:S~L
重量:約179g
詳細:https://www.aandfstore.com/store/commodity/0/19842910
延伸でさらに魅力がアップする信越トレイルに期待大!
現在の信越トレイルは斑尾山から天水山を結ぶ区間が開通していますが、2021年には天水山から、日本の秘境100選にも選ばれる秋山郷などを通り、苗場山まで道が延伸する予定です。いままで以上に“旅”の要素が加わることで、信越トレイルの魅力がアップすることは間違いなし。里山を中心に広がる個性豊かな魅力を発見するハイキングの旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
信越トレイルのさらに詳しい情報はこちら
https://www.s-trail.net/