【写真家・三井昌志さんに聞く:前編】バイクに乗ったら自由になれた。写真家が挑んだインド4周目の旅
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    2016.05.18

    【写真家・三井昌志さんに聞く:前編】バイクに乗ったら自由になれた。写真家が挑んだインド4周目の旅

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    アジアの国々を中心に、農村や工場で働く人々の姿や、何気ないけれど見る人の心に沁みるポートレートを撮り続けている写真家、三井昌志さん。現地でバイクを借りて旅をしながら、一般の旅行者が訪れることのない場所にまで入り込んで撮影されたその作品は、人間本来の素朴な魅力と美しさにあふれています。つい最近も、インド国内を約4カ月もの間、バイクで回りながら撮影に取り組んでいたという三井さん。いったいどんな風にして旅をしてきたのか、お話を伺いました。

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    ——三井さんがバイクで旅をしながら撮影するようになった、そもそもの発端は何だったんですか?

    三井昌志さん(以下三井):最初のきっかけは、インドネシアのスマトラ島でバイクを借りて、トバ湖という湖のあたりを回ったことでした。借りてみたら本当に自由に感じて、これはすごく便利だ、行きたいところに行けるぞと。それ以降、バイクを借りられるところではどんどん借りるという旅の仕方になりました。それまでは、点から点へ移動する旅だったんですね。現地の交通機関を使うと、どうしてもそういう旅しかできない。でも、バスや列車の窓から外を見ていると、「ここで降りて写真を撮りたい! 歩きたい!」という気持になりますよね。バイクだったら、それが自由にできる。点から点への旅が、線の旅になりました。旅のスタイルだけでなく、写真のスタイルも大きく変わりました。

    ——具体的に、どんな風に変わったんでしょうか?

    三井:バイクで行動範囲が広がったので、普通の旅ではなかなか行けないところにまで入り込めるようになりました。もともと僕は「自分はこういう写真を撮りたい」ということはあまり明確に意識していなくて、現地の人々の表情を中心に撮っていました。でも、それまでなかなかアクセスできなかった農地や工場といった場所に自由にバイクで行けるようになってから、「俺はこんな風に働いている人たちの姿が撮りたかったんだ」とあらためてわかったんです。その結果として、写真も変わってきたのかなと思います。

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    ——これまでにどんな国々をバイクで旅しましたか?

    三井:インド、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、タイ、ベトナム、ミャンマー、インドネシア、東ティモール……といったあたりですね。

    ——どこの国でもバイクは簡単に借りられるものなんでしょうか?

    三井:アジアでは、バイクはたいていどこでも借りられますよ。レンタバイク店のある国では、1日あたり500円くらいの感覚で借りることができます。バングラデシュでは、バイク屋で中古のバイクを買って、旅を終えてから同じ店に売ってということをしましたが。

    ——バイクが途中で故障したり、タイヤがパンクしたりしたら?

    三井:どこの国でも、バイク屋や修理屋は至るところにあるので、何とかなります。修理屋もないところ、たとえば東ティモールとかでは、村の人たちが自分で直せる技術を持っているんですよ、素人さんなのに。そうしないと自分たちが困るので。それで村の人たちに直してもらって、お礼を渡そうとすると、「そんなのいらないよー」と言われちゃったり。

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    ——走るルートはどうやって決めているんですか?

    三井:今はスマートフォンの地図アプリを使っています。昔は、インドなら街で大きめの本屋さんを探して、その州のルートマップを買って、それで行き先を決めていました。場所によっては一つの州が日本全土くらいの大きさなので、そういうルートマップでも足りなかったですけどね。

    ——どんな道を走ってるんですか? ハイウェイは走らないですよね?

    三井:そうですね、基本的には下の道を、ゆっくり、40キロくらいで走ります。ハイウェイだけを走ったら、インド一周もすぐにできますよ。でも、写真を撮るには、そんな道だけを走っていても全然面白くないので。

    ——走っている間も、時々バイクを停めて撮影をしているんですよね。

    三井:しょっちゅう停まってますね。バイクや自転車でツーリングをしている人は基本的に走ること自体が目的なんでしょうけど、僕は根本的にそこが違いますから。できるだけ速くとか、長い距離とか、こんなところにまで行ったという到達感とか、そういうものは求めてません。バイクはあくまでも旅の手段でしかなくて、旅の目的ではないんです。

    ——自転車ではなくバイクなのも、撮影に集中するためですか?

    三井:自転車は大変ですよ。しんどいし、アジアは特に暑いですから、体力的にも精神的にも余裕がなくなります。余裕がなければ何かを発見して撮ろうという気にもなかなかなれなくて、「あー、こんなところで停まるの、めんどくさ」と思ってしまいますから。

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