私が住んでいる小谷村は、「海なし県」こと長野県の北西端にありますが、実は新潟県糸魚川市までは車で約1時間という場所。日本海側の糸魚川と内陸の松本間の物資を運ぶ道として、千国街道(糸魚川では松本街道、松本では糸魚川街道と、それぞれ行先の名を冠した別称があります)が通っており、上杉謙信が敵である武田信玄に塩を送ったという故事にちなんで「塩の道」と呼ばれています。国道と国鉄大糸線が開通するまでは、歩荷と呼ばれる荷運び人と牛たちが険しい峠道をいくつも越え、物流を担っていたのです。
「塩の道? 古道歩きかぁ、何だか渋いなぁ……」と村に来た当初は思っていましたが、これってロングトレイル?と思うとちょっといまっぽくて、アウトドアアクティビティ感もあり。実際に糸魚川~松本間の120kmは、日本ロングトレイル協会に「塩の道トレイル」として加盟しているそう。
村には生まれも育ちも小谷という澤渡勇治さんを会長とする「小谷 塩の道の会」という団体があり、道を整備しながら歩く活動をしているとのこと。まずは地元の小谷村をメインにした、糸魚川~白馬を複数回に分けて歩くこの会に参加することに決めました。
さっそく参加した初回は、北の出発点・糸魚川市から根知までのコース。このコースは糸魚川からのゲストガイドである渡辺さんの案内。まずは糸魚川駅前から海の見える国道8号線沿いの駅前海望公園まで歩きます。
道沿いには、古事記にも出てくるという奴奈川姫(ぬながわひめ)と息子である建御名方神(たけみなかたのかみ)の像。この建御名方神は今年7年ぶりに行われた御柱祭でも知られる諏訪大社の祭神。物流の道としてだけではなく、神話や歴史にまつわるエピソードもあり、いろんな側面から興味が持てるのが塩の道の面白さ。この諏訪大社との繋がりは、今後もよーく出てくるので覚えておいてくださいね。