藤原かんいちさんはこれまでスーパーカブでさまざまなダイナミックな旅を成功させてきた。とくに壮大なのが約20年前に達成した北南米大陸縦断の旅。1年8か月をかけて北極圏のカナダ・イヌヴィックから世界最南端の都市であるアルゼンチンのウシュアイアまで、約5万3000kmを50ccの小さなカブで走破した。しかも、バイクにほとんど縁がなく、自他ともに認めるインドア派だった奥様も一緒だったというから驚きだ。高い信頼性に加えて誰でもイージーに運転できるカブならではである。
1996年型 50㏄
ホンダ/スーパーカブ C50
プレスカブ用の大型リアキャリアを装備する藤原号。この年代のス―パーカブにはパンクしにくい「タフアップチューブ」が標準装備され、実用性がさらにアップした。
旅行家・イラストレーター
藤原かんいちさん(59歳)
小さなバイクで国内外を旅する。訪れた国は94か国に及ぶ。昨年より、eバイクによる旅プロジェクトもスタート。https://www.kanichi.com/
「スピードの出ないカブだからこそ見られる景色や人々との出会いが面白くて世界中を走りましたね。カブにはバイクと自転車の中間的な特性があるんです。人力よりもはるかに広範囲を移動できるのに、走り切ったときの達成感もちゃんと味わえる。そこが魅力ですね」
メキシコの灼熱の砂漠地帯から熱帯のジャングル、標高4000mを超えるアンデス山脈、強風が吹き荒れるパタゴニアの大地など、日本では考えられない過酷な自然環境でも、カブはパンク以外にこれといったトラブルはなかったそう。
「総予算10万円で日本一周ツーリングをしたこともありますよ。74日間で1万3390kmを走破して最終的に約1万5000円も余りました(笑)」
まさに究極のツーリングバイク。藤原さんの旅の遍歴はカブが秘めている無限の可能性、その証明でもあるのだ。
奥さんと地球縦断達成!
印象的だった場所のひとつ、ボリビアのウユニ塩湖。当時は今ほど有名ではなく、ここでキャンプするのが念願だった。
独クラウザー製のツーリングケースを装着。荷物満載でも安定しているのがカブの強み。
中米を走っている際に出会った道端で魚を売る少年。こういう出会いもカブ旅の醍醐味だ。
旅の足跡が刻まれてます
レッグシールドには道中で訪れた19か国の名が書いてある。エクアドルで赤道を越えた。
ハンドルにはグリップヒーターと風防を装備。寒い地域ではほとんど効果がなかったそう。
構成/佐藤旅宇 撮影/高柳 健
(BE-PAL 2021年3月号より)