キャンプでピンピンなロープを張る!「3分の1倍力システム」を使ったロープワーク
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    2021.03.28

    キャンプでピンピンなロープを張る!「3分の1倍力システム」を使ったロープワーク

    私が書きました!
    山岳指導員(アルパインクライミング)
    ミツル
    山と自然に囲まれた長野県在住。登山では日本体育協会公認・山岳指導員(アルパインクライミング)の資格を持つ本格派。登山、バックカントリー、フリークライミング、アルパインクライミング、沢登りと山に関する遊びが生きがい。2児の父親をしながら、アウトドア系のフリーライターとして活躍中。

    キャンプなどで、ロープを張って服を干したり、ランタンをぶら下げたり……そんな機会は多いと思います。そんな時、ロープがピンピンに張れずに困ったことありませんか?そんなお悩みを解決するロープワークをご紹介します。

    ロープの張る手順

    以下の手順でロープを張ると、ピンピンにロープを張ることができます。

    1.ロープの末端を木にボーラインノットで結ぶ
    2.ロープを伸ばして張りたいもう一方の木にスリングを巻き、ガルダーヒッチで結ぶ
    3.フリクションノット用のスリングなどでクレイムハイストを結びカラビナを掛ける
    4.3で掛けたカラビナにロープ通して引っ張る(3分の1倍力システム)
    5.ロープがピンピンに張れたら、緩まないようにミュールノットで仮固定

    1〜5までの手順を詳しく説明していきます

    1.木にボーラインノットでロープの末端を結ぶ

    まずは、ロープを張りたい木に、ロープの末端をボーラインノットで結びます。なお、ボーラインノットは、呼び方が沢山あり、「ブーリンノット」や「もやい結び」とも呼ばれています。

    ボーラインノットは、結びやすく、強度があり、ほどきやすい、とても優れた結び方です。木に縛る結び方は、いろいろありますが、今回はほどきやすい、ボーラインノットで結びます。

    ボーラインノットの手順1。

    まずは木にロープを回し、末端とは反対側のロープを、時計回りに180度捻ってループを作り、そのループに末端を下から通します。

    ボーラインノットの手順2。

    次に末端側のロープを、もう一方のロープに回して、再びループに通して締め上げれば、ボーラインノットは完成です。

    末端をエバンスノットで処理する。

    このままでも十分な強度がありますが、万が一ほどけてしまわない為に末端処理として、エバンスノットで締めます。エバンスノットは、末端をロープに2周巻き付けて、巻いたところに末端を通して締め上げます。

    ボーラインノットと末端処理をエバンスで行なった完成形。

    2.もう一方の木にスリングを巻きガルダーヒッチで結ぶ

    続いて、もう片方の木に、ロープを張ります。まずは支点となる木に、スリングをカウヒッチで結びます。

    スリングをカウヒッチで締めて支点にする。

    カウヒッチは、まずループになっているスリングを、1本のロープと見立てて、木に巻き付けます。そして、一方のループに通して、締め上げれば完成です。

    ガルダーヒッチの手順1。

    続いてガルダーヒッチです。締め上げたスリングに、カラビナ2本をかけてロープを通します。

    ガルダーヒッチの手順2。

    2本あるカラビナの、1本だけにもう1周ロープを巻き付けます。ガルダーヒッチはこれで完成です。ロープを引くと、自動的にロックされるので、とても便利です。

    3.フリクションノット用のスリングなどでクレイムハイストを結びカラビナを掛ける

    次に、張りたいロープに、フリクションノット用のスリングで、クレイムハイストを作ります。

    クレイムハイストの手順1。

    クレイムハイストは、ループになったスリングを、1本のロープと見立ててグルグル巻きつけます。なお、フリクションノット用のスリングは、一般的に売られているスリングでも代用可能です。その他、アウトドアショップなどで、切り売りしているようなアクセサリーロープを、ダブルフィッシャーマンノットでループにしても使えます。

    フリクションノット(クレイムハイストなど)は一般的に、張りたいロープの径より、細ければ細いほどフリクションは効きます。ただし、あまり細すぎても、強度が不足するのでロープの径マイナス2〜3mm程度が理想です。

    クレイムハイストの手順2。

    スリングの末端を、もう一方の末端のループに通します。

    クレイムハイストの手順3。

    ちゃんとフリクションが効いているか、引っ張って確認します。その後、ループを通した末端にカラビナを付けます。

    4.カラビナにロープを通して引っ張る(3分の1倍力システム)

    あとは、このカラビナにロープを通して引っ張るだけです。

    このシステムで、ロープを引っ張ると、通常の力の3倍の力で引くことができます。これを「3分の1倍力システム」といい、救助などで人を引き上げる際に、救助隊が使ったりする技術でもあります。

    力が3倍になる分、引っ張らなければならない長さも3倍になります。例えば3m引っ張っても、実際には1mしか引き上げられません。その点は、頭に入れておく必要があります。

    3分の1倍力システムの全体像。

    システムが完成すると、このような形になります。使い方は引っ張るだけですが、引っ張ってくると、クレイムハイストで結んだところが、ガルダーヒッチのところまできてしまいます。そうなると、引っ張れなくなるので、クレイムハイストのグルグル巻いている部分を握ってスライドさせます。

    5.ロープがピンピンに張れたらミュールノットで仮固定

    3分の1倍力システムを使ってロープがしっかり張れたら、仮固定をしてロープが緩まないようにします。基本的には、このままでも緩むことはないと思いますが、何かの拍子でロープが緩んでぶら下げておいた物が壊れてしまったら元も子もありませんので行っておくといいでしょう。

    まずは3分の1倍力システムで使った、スリングなどをすべて外します(ガルダーヒッチはそのままです)。

    ミュールノットの手順1。

    余った方のロープを、ループにしてガルダーヒッチのカラビナに通します。

    ミュールノットの手順2。

    カラビナを通したループを、180度捻ります。

    ミュールノットの手順3。

    余っているロープを、このループに通して締め上げます。この際に、カラビナとの間に緩みなどがないように、しっかり締め上げます。そして、締め上げたループ状のロープは、長めに出しておきます。

    ミュールノットの手順4。

    締め上げたロープ(ループ状の)を、ピンピンに張った方のロープに巻き付けるようにして、オーバーハンドノットで結んで完成です。オーバーハンドノットとは、簡単に言ってしまうと、一般的な「豆結び」です。

    ミュールノットの完成形。

    これが、ミュールノットの完成形です。

    3分の1倍力システムの応用編

    3分の1倍力システムを使って、重たいものを引き上げる際、この倍力システムをもってしても、引き上げられない場合があります。そのような時には、「5分の1」「7分の1」「9分の1」とシステムを増やすことによって、倍力をさらに強力にすることができます。

    5分の1倍力システム。

    こちらが「5分の1倍力システム」です。すごく複雑そうに見えますが、やっていることは3分の1倍力システムで引っ張っていたロープに、さらにクレイムハイストを作り、もう1回折り返して、引っ張っているだけです。理屈を覚えてしまえば意外と単純です。

    この要領で、「5分の1」「7分の1」……と理論上は増やすことが可能です。ただし前述したとおり、倍数が増えればその分引っ張る量も増えます。現実的には、著者は最高7分の1で重たいものを引っ張ったことがありますが、それが限界だと感じました。7m引っ張っても、1メートルしか上がらないのですから、現実的ではありません。状況に合った、適度な倍力システムの利用を、オススメします。

    まとめ

    今回ご紹介した「3分の1倍力システム」は、一見とても難しく複雑な技術にも見えます。しかし、ロープの結び方をある程度習得してしまえば、決して難しいものではありません。キャンプなどに行って、手際よくこのシステムを使って、ピンピンにテンションの張ったロープを張ったら、周りの人はあなたを見る目が一気に変わります。

    また、ロープをピンピンに張る以外でも何かと使える技術なので是非習得してみてください。

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