“鉄道王国スイス”ならではのソリの楽しみ方!
国土の7割が山地を占めるスイス人の冬の楽しみはウィンタースポーツ!ソリは老若男女に大人気。なんといっても長距離を迫力ある景色の中で滑走できるのが醍醐味だ。
レーティッシュ鉄道はグラウビュンデン州を中心に走る100年以上の歴史があるスイス最大級の私鉄会社。トゥージスからエンガディン地方のサン・モリッツを結ぶアルブラ線とサン・モリッツからイタリアのティラーノまでを走るベルニナ線。この伝統あるふたつの鉄道路線、そして、その素晴らしい景観と村が2008年7月7日に世界文化遺産として認定された。
冬季通行止めの道路がソリのコースに!
今回紹介するのは、標高1789メートルのプレダから標高1372メートルのベルギューンまで。約6キロ、標高差400メートルのソリコースだ。
冬に通行止めとなった道路がソリ専用となり、スキーでは滑走できない特別コース。街灯があるので23時までオープンしている日もあり、その場合はヘッドランプ必須。スイスでは1台のソリの後ろが男性、前に女性が乗り密着して滑走するのがデートの定番。男性側のソリのコントロールやリードが決め手となる。
プレダ~ベルギューン区間の路線には高度差を調整するためのループトンネルを5つもある。ここは、ロマンシュ語の伝統が残る地域でもある。
プレダ駅でソリを1日レンタルし、終着点のベルギュン駅で返却できる。レンタルソリは、なんと2000個も用意があるそうだ。
木製ソリに乗っていざ出発!!
木で作られた伝統的なソリをレンタルして、いよいよ出発。この日、バックパックの中には撮影用など機材がたくさん。慎重に滑ろうと誓う……。
このソリには、機械式のブレーキはない。ブレーキは足を雪面につけてかけるか、ソリの先端を少し引き上げて減速させる。ブレーキ操作で足が冷えないよう、防水の登山靴かスノーブーツを履いて滑ることをおすすめする。
ハイライトは電車と高架橋の景観
タイミングが良ければ、橋の上に電車が通り大興奮!高架橋がヨーロッパの雰囲気を感じさせる絵になる。その様子は、まさしく電車との追いかけっこだ!
ここは鉄道好きに人気の絶景ルート「ベルニナ・エクスプレス」の路線でもあるので、運が良いとグレッシャー・エクスプレス(氷河特急)にも遭遇できるかも!?滑走時間は20~30分。ベルギューン駅まで滑ったら、また電車に乗ってプレダに上がり、1日に2~3本滑るのも楽しい!
アウトドアと歴史遺産を同時に楽しもう
ベルギューン村のはずれに行くと、「スグラフィット」という技法で描かれた壁絵があるたくさんの家に出会える。「スグラフィット」とは、スイス語で「ひっかく」という意味。2層の対照的な色の漆喰を塗りかさね、表面の湿った層を掻き落として線画を描くこの土地に残る伝統的な装飾技法だ。
この手法は、16世紀のルネサンス期にイタリアから持ち込まれた。30年戦争で困窮している時期に高価な大理石や装飾などを使わず、山間部へ物資を運ぶコストも抑え、石を掘り飾ったように見せるために発展したとのこと。
シンボルとなるモチーフは幾何学文様や草花、動物、家紋などが多い。ロマンシュ語で家訓や格言など、短い言葉が描かれているものもある。さらに、建造物をよく見ながら歩くと、魚や人魚、ドラゴンなどの壁絵や取手もたくさんある。
魚など海に関連するモチーフが多いのは、イタリア人が海のないスイスへファンタジーの物語を持ち込んだ影響とのこと。海や魚への憧れもあったのでしょうか?
乾燥した空気のおかげで、このエリアにはオリジナルの状態で保存されたものがたくさんあるそうだ。スイスには、歴史的価値のある文化財を修復をし、地域文化や景観の保存に努めている小さな村がたくさんある。
ベルギューンは人口約450人の小さな村。山岳観光地で、夏と冬は観光客で賑わう。
近くにはラッチという人口約60人、標高1589メートルの小さな村がある。ここを舞台に1952年にスイス初のハイジ映画(1955年に続編)が撮影された。当時とまったく変わらない情景が残るこの地は、2015年に制作された最新作の映画『ハイディ(邦題:ハイジ〜アルプスの物語)』でもロケ地に選ばれている。機会があれば、ぜひ実写版からスイスの風を感じていただきたい。
アウトドアが市民の生活に根付いているスイス。この国では、誰もが気軽に電車と文化の景観を楽しむことができる。そして、雪深い国ならではの大人も楽しめる遊び=ソリが大人気である様子が伝わると嬉しい。
●ソリ情報
https://berguen-filisur.graubuenden.ch/en/aktivitaten-erlebnisse/sledging