登山用のロープは、色々な種類のロープがあり、実際に使用する場面や状況によって、選択すべきロープは異なってきます。今回はロープの種類や、その使い分けについて紹介していきます。
ダイナミックロープとスタティックロープ
ロープは「ダイナミックロープ」と「スタティックロープ」の2種類に大別されます。この2つのロープの違いは伸び率です。登山やクライミングなどでは常にぶら下がる前提ではなく、落ちた時に止める命綱の役割もあります。
この場合は伸縮率の高いダイナミックロープが適しています。ダイナミックロープの伸縮率は、おおよそ10%前後~35%前後。この伸縮率によって、万が一墜落した際の身体への負担を軽減してくれます。
一方、スタティックロープは伸縮率はほとんどなく、セミスタティックロープでも伸縮率は5%以下になります。もし、スタティックロープで登山やクライミングをして墜落した場合、衝撃が身体に直接かかり大ケガに繋がります。スタティックロープは前提として、ロープに荷重を常にかけた状態で使う高所作業やツリークライミングなどに適しています(実際このような場面で使われるのは、セミスタティックロープがほとんどです)。
今回は登山を目的とした、ダイナミックロープの紹介をいたします。
登山用(ダイナミックロープ)の種類
登山用のロープには「シングルロープ」「ダブルロープ」「ツインロープ」の3種類のロープがあります。ただし、現在よく使われているのは、シングルロープとダブルロープの2種類がほとんどです。ツインロープとして売られているものもありますが、補助ロープとして使われることがほとんどです。
シングルロープ
クライミングシーンで、一般的に使われているのがシングルロープです。ロープの径は8.9mm~10.5mm程度のものが使われます。比較的直線的なルートで使われることが多く、1本のロープに命を預けることになります。
使用用途:フリークライミング、アルパインクライミングの直線的なルート
ダブルロープ
ダブルロープは、アルパインクライミングなどで使われる場合が多いです。ダブルロープは2本のロープを同時に使いますが、中間支点(登りながら取っていく支点)に1本ずつ通すことにより、屈曲したルートでも直線的なロープの流れになり登りやすくできるのが利点です。ロープの径は、8.0mm~8.9mmのものが一般的に使われます。
使用用途:アルパインクライミング全般、バリエーションルート、沢登りなど
ツインロープ
ツインロープは、ダブルロープと同様に2本のロープを同時に使いますが、使い方は異なります。2本のロープを1本のロープと見立てて、中間支点にも2本のロープを同時に掛けて登ります。使い方としてはシングルロープと同じなので、直線的なルートで使います。ルートが直線的になる、アイスクライミング(氷瀑などを登るクライミング)などに適しています。
使用用途:アイスクライミング、補助ロープ
ロープの選び方
登山用やクライミングで使うロープには、必ず規格に適合したロープを使う必要があります。アウトドアショップなどで切り売りしているような、アクセサリーロープは規格に適合していないものが多く、登山やクライミングなどで、使うことは絶対にしてはいけません。
規格の適合マークについて
UIAA安全規格
UIAAとは、「国際山岳連盟」という組織のことで、道具やギアなどに安全規格を設けて、これに適合するギアに適合マークを与えています。
EN規格、CE規格(ヨーロッパ規格)
ヨーロッパ欧州連合内で安全のため、製品規格を定めたものとなります。ヨーロッパで販売されるロープはこれらの基準に適合する必要があります。
登山やクライミングなどで使用する場合は、すべての規格を取得している必要はありませんが、必ず上記のいずれかの規格を取得しているか、確認することが重要です。
ロープの性能
登山用のロープには下記の数値があり、この数値でロープの性能が分かります。
1.ロープ径
細いロープは重量が軽かったり、嵩張らなかったりと多くの利点もあります。しかし、その反面ロープ径が細いことによって、物理的な破断リスクが高くなったり、ビレー(登っている人を確保すること)などで制動が弱くなったりと、デメリットもあります。初心者の方には、ある程度ロープ径の太いロープをオススメします。
2.耐墜落回数
ロープの規格適合試験の際の墜落の回数です。この回数は多ければ多いほど、ロープの耐久性が高いと言えます。ロープを購入する際は、この値が大きいものを選びましょう。また、ロープ選びに迷った場合、この項目は非常に優先順位が高いと言えます。
3.最大衝撃荷重
墜落した際に、身体にかかる衝撃の値になります。この値は数値が低いほど、身体にかかる負担が少なくなります。そのため、この数値は低い方がロープの性能が高くなります。
4.伸び率
静荷重や動荷重で荷重が掛かった場合の、ロープの伸びる率を表しています。例えば、50mロープで伸び率10%の場合、5m伸びる計算となります。
5.重量(1mあたり)
単純なロープの重量の事です。持ち運びを考えた場合、重量が軽い方が楽になります。ロープ径が細くても、メーカーやモデルによって重たくなる場合もありますし、逆も然りです。重量も比較したうえで、ロープを選ぶことが大切です。
6.防水加工
防水加工が施されていると、水を吸収しないので濡れても重たくなりにくいです。また、防水加工がされていることによって、汚れも付きにくくなります。なおロープは濡れたり、汚れたりした場合、ロープの強度が低下するのでしっかり覚えておきましょう。
ロープの長さについて
ロープの長さも色々な種類があります。一番オーソドックスな長さは、50mロープで汎用性がとても高いロープと言えます。ちなみにジムなどの室内がメインであれば、30mロープで問題ありません。また、フリークライミングやアルパインクライミングのルートによっては、60mロープを使わなければ届かない場所もあります。
中には100mや200mといった、特殊なロープもありますが一般的に使う場面はほとんどないと思います。
まとめ
ロープの種類はたくさんありますが、使用用途が決まれば選択するロープも自ずと決まっていきます。それぞれのロープは、一長一短でなかなか併用することは難しいと思います。まずはどんな場面で使うのかを想定して、購入すべきロープを選びましょう。