3日目。まだ薄暗く谷間の集落の灯りが見える早朝、子供が起き出して畑の麦を拾いに行きたいと言い出しました。集落に近いところにはジャガイモ畑、トウモロコシ畑、その周りに広がる段々畑は麦畑。宿から畑の中をゆるゆると麦畑まで下ります。
生活に使われるものはインドや中国からの輸入雑貨もありますが、天然素材を使った手作りのものが大半を占めます。ものを作る道具でさえ素朴な材料で手作りされています。壊れたら直し、そのまま放置してもまた自然に還るという安心感。
宿の前で出発前のひととき。子どもは集落の子たちと仲良くなってニワトリとヒヨコを追い掛け回していました。
トーサンに作ってもらったダブルストックで歩きます。日本では見かけない濃いオレンジ色の菜花。
「これ日本にないやつだよ。」とあれこれ見つけてはつぶやいていました。
子どもの装備ですが、ウエアはほとんど普段着ているもので、日本でハイキングに行くときも同じです(山登りというより遠足をイメージ)。ザックは22Lで着替え、水筒、シュラフ、ヘッドランプなどが入っています。(「疲れた…」となるとトーサンがシュラフや着替えを持ってくれます。)山で長靴?と思われる人もいると思いますが、日頃から山でもどこでも長靴で出かけることが多いので、本人にとってはとても歩きやすいのです。子どもは水たまりにすぐ入りたがるし、ドロンコも大好きなので長靴が大活躍です!
お昼はタトパニで。タトパニとは「温泉」のことで、ネパールでは温泉が出る集落はタトパニと呼ばれることが多いのです。ここの温泉は地震後に出なくなってしまったそうで、楽しみにしていたのですが残念でした。とは言え一番残念で悲しい思いをしているのはここの集落の人たちですね。
モモ(チベット式の蒸し餃子)は注文を受けてから粉を練って皮を作ります。もうゆっくり待つしかないのです。早さや時間の正確さは、それはそれで便利で安心ですが…気ままでゆっくりな時間の流れは身体が浄化されていくようでもありました。山奥ではメニューに載っていても材料が無いから作れないということもよくあります。
タトパニを出発して森の中の道を行くと、大きなノコギリを二人がかりで駆使しながら大木を製材している人たちがいました。電動のものは見当たりません…!
尾根を登り切ると目の前が開けて石垣の向こうに麦畑が広がりました。尾根や峠を越えるたびに思いもよらない風景に驚かされます。
このブレンダンの集落は畑の中に家が数件で、その半分以上が崩れたままでした。この人が居なければゴーストタウンかと思うほど人の気配がなく静か。この人はここで豆を挽いていて、すぐ近くでは焚火でロキシー(地元のお酒)用のヒエをグツグツと煮込んでいました。壊れた家の見かけとは違い、しっかりと地に足をつけていつも通りの生活しているのが伝わってきます。