伝説の花”ナルシス”を求めて歩いてみた
毎年楽しみにしている”ナルシス”の花が今年も開花!スイスのレマン湖地方のモントルーやヴィヴェイの上部にある牧草地では、5月~6月初めに可憐なナルシスの花が一斉に咲き訪れた人々を魅了する。標高1000~1500mの場所で真っ白な花が一面に咲き誇り、まるで雪原のように見えることから「5月の雪」と呼ばれている。
今回は標高1360mのレ・プレイヤードへ出かけた。ヴヴェイ駅からレ・プレイヤード駅までは約38分。スイス横断の絶景ルート「ゴールデンパス・ライン」の運営もするモントルー・オーベルラン・ベルノワ(ベルナーオーバーラント)鉄道/MOB鉄道に乗車。晴天に恵まれ、たくさんのハイカーで賑わっていた。この場所の魅力は駅舎から約5分でナルシスに出会えること。実は左下の白い花がナルシスなのだ!
近くで見るとなんて愛らしい!日本の園芸花としてよく見かける水仙とは同属だが、別の種類の花になるそうだ。
近年、群生地が急激に減少し絶滅の危機が心配されるようになり、保護団体「ナルシス・リヴィエラ協会 」が発足した。ナルシスの群生を守り伝統の風景を取り戻すための活動や、ナルシスを訪ねるガイドウォークなどが積極的に行なわれている。
様々なアウトドアスポーツを楽しむ人々も
今回は緩い下りが続く約5km、2時間のハイキングコースを歩いた。標高差も約200mでとても歩きやすい道のりのためか、親子連れもたくさん訪れていた。
スイスの山岳観光地ではパラグライダーも盛んで、春夏秋冬どんな時期でも楽しむ人々がいる。午前中は雲もない快晴のなか空高く飛ぶ姿が爽快だった。
この日は、トレイルランニングを楽しむ人も多く見かけた。ヨーロッパではストックを使うスタイルが主流で、姿勢が良くなり、膝に優しく、登りのサポートもしてくれる効果がある。
マウンテンバイクのコースも充実している。列車内には自転車を置く専用スペースがあるなど、移動手段にも配慮がされていて快適にライディングを楽しむことができる。
出発してすぐにレストランがあったが、今回は名残り惜しみつつ素通りした。逆コースで登る場合には、ラストスパート前のちょうどいい休憩場所になるだろう。
春爛漫!ナルシスの群生
尾根を下っていくと、可憐な白い花ナルシスの群生に出会った!今年は寒い春の影響で開花が少し遅れていたが、無事に見ることができて嬉しい。爽やかな風に揺れる可憐な姿が魅力的だ。標高によって咲く時期が異なり、低い方から高い方へと順々に咲いていく。この時期しか見ることができない貴重なナルシスの写真撮影を楽しむ人たちの笑顔が印象的だった。
ナルシスの花の名はギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスが語源だ。少年は泉に映る美しい自分自身の姿に恋に落ちてしまう。そしてその場から離れられなくなり、やせ細って死んでいったとも。または水面に映った自分に口づけをしようとして、泉に落ち水死したという伝説になっている。ナルキッソスが亡くなった場所からは水仙の花が咲き、ナルシスと名付けられたそうだ。
空の青とナルシスの白のコントラストが最高!みんな太陽に向かって一生懸命に咲いている。ベストな瞬間をとらえるため、いろいろな角度から写真撮影してみた。
黄色のお花たち!
たんぽぽ畑もなんて美しいのだろう!しかし、春はぬかるみが多いので、滑りにくいシューズを選ぶことも大事。多少の汚れは覚悟して出かけるといい。
ナルシス畑を抜けると、キンバイソウ属の”トロールブルーメ”も群生して咲いていた。先端の黄色の丸い花が可愛らしい。開いてないように見えて、これで咲いている状態だ。
最後は湿地帯。ここには木道が整備されていて、ぬかるみもなく快適に歩くことができた。ふと「尾瀬にも行きたいな」と思いを馳せる。のんびり初夏を堪能してご機嫌。
沼地を好むリュウキンカにも出会えた。力強い黄色が特徴で、茎がまっすぐ立ち金色にも見えることから、漢字では「立金花」と書くそうだ。今回はナルシスの白い花と、その他の黄色い花とのコントラストが印象的だった。
春先は牧草地のぬかるみが多く、靴はどろどろに。でもたくさんナルシスを見て楽しかったので気にしない!”スポルティバ”のトレイルランニングシューズは、沼や岩にも特化した滑りにくいソールなのでお気に入り。帰宅したらジャブジャブ洗おう!
レ・プレイヤードに戻る途中では若い牛たちが草をはみ、のんびり過ごしていた。のどかなこんな風景に癒される。午後になると雲が出てきた。やはり午前中が勝負!
ナルシスは、周辺のラリー、モンペルラン、モントルーから上に位置するグリオンやコーなどほかのエリアでも見ることができる。ナルシスの花を訪ねるハイキングは、花を愛する日本人にもとくに人気がある。来年はコロナが落ち着き日本からも安心して渡航ができるようになることを、心から願っている。
スイス政府観光局サイト
https://www.myswitzerland.com/ja/experiences/br-1/