小豆島遍路を歩くモデルコース、4日目です。
3日目を12番岡之坊で終わりましたので、4日目はそこから始めます。ひろきや旅館に泊まった方は玄関を出たらすぐ出発。目の前が、お遍路道です。
4日目は約18km:11番札所観音堂〜10番西照庵
“生(なま)素麺”で有名な「なかぶ庵」の横を通り、車道を渡って田んぼの中道へ。川沿いを歩きます。
春は桜が見事な稲荷神社を過ぎた後、左に曲がって歩いているとなんだか醤油の香りが。その香りは「醤の郷(ひしおのさと)」に入ったサインです。この香りだけでご飯が食べられる。この日軽食を持参するなら、絶対おにぎりをおすすめします。
醤の郷とは、醤油蔵や佃煮屋が立ち並ぶ小豆島内の馬木(うまき)・苗羽(のうま)地区一帯のこと。オリーブ押しの強い小豆島が醤油で有名なことはあまり知られていないようですが、実は400年もの歴史がある伝統産業です。
その歴史景観を保存すべく各地域に散策路も整備されていて、町並みは経済産業省の近代化産業遺産にも認定されています。馬木散策路は昔ながらの原風景が見られる素朴な散策路、苗羽散策路にはマルキンを筆頭に大手の醤油蔵が並んでいます。
さてこの日初めの11番観音堂は、馬木散策路の少しだけ手前にあります。
こちらのご本尊は聖観世音菩薩ですが、お堂建立にまつわる伝説にイタチが出てくることから、地元では「イタチ観音」として親しまれています。
この観音様が興味深いのは、「お堂の壁に直接書いて祈願する」ということ。壁一面にギッシリと人々の願いが書かれています。すごいイタチ様がいるもんだ・・と思いつつ、私もしっかり書き込ませていただきました。
この後は醤の郷の中を歩いて9番庚申堂(こうしんどう)へ向かいます。先ほどご紹介した馬木散策路のすぐ横も通りますが、散策路は短く、くるりと周って元の道に戻って来ることができるので、観光がてらぐるっと周ってからいくのもお勧めです。
特に初秋には散策路の真ん中にとても見事なコスモス畑が現れますので、ぜひ。
一本西側には車が頻繁に行き来する道があるのに、どことなくノスタルジックな家々が並ぶこの遍路道、お花が咲き乱れる和やかな道で心が落ち着きます。
思わず足取りも軽く歩いているうちに、9番庚申堂に着きました。
庚申を「こうしん」と読めなかったので調べてみると、庚申信仰という仏教や密教、神道、医学などが複雑に絡んだ複合信仰に由来するそうです。
そして8番常光寺(じょうこうじ)へ。この道中も風光明媚な町並みが並びます。11番観音堂と9番庚申堂の納経は常光寺で。春は「ジョウコウジサクラ」で良く知られて花見客で賑わう、地元に開けた立派な境内を持つお寺です。
常光寺を出てすぐにあるのが7番向庵(むかいあん)。こじんまりとしていますが、苗羽地区の醤油蔵を見下ろせる眺めのいい丘の上にあります。
この後2番碁石山に向けて、この日初めの山道に入ります。距離にして2km程度です、が一気に300mほど登ります。そろそろお察しのことかと思いますが、小豆島遍路は、距離が四国遍路の10分の1ほどの分、こうして標高ほぼ0から一気に山を登る道が何度もあるのです。
だいぶ登ったところでふと見上げてみると、こんな巨石が頭上に広がる場所に出てきます。
ここまで来ればあと少し。お手洗いのある大きな建物が出てきますので、その横を通って本堂へ。
ばーーーーーーん!!!
という迫力が、私のつたない写真では伝わらないのがしごく残念ですが、海上安全を司る浪切不動明王がいらっしゃるところにたどり着きました!! 登ってきた苦労が一瞬で吹き飛ぶ超絶景かつ絶壁スポットです。
上り坂で足がガクガクしている方は要注意。本堂はこの下にあります。実は私、小豆島に来て一番はじめに度肝を抜かれたのはここからの景色です。それなのに普段誰もいない。小豆島は、そんな穴場スポットの宝庫です。
2番碁石山。お馴染みになってきました、山岳霊場。洞窟に埋もれるように建っています。納経は8番常光寺にて。
ちなみにこちらの碁石山には「女子遍路」や「卒業遍路」「ちょきちょき遍路」等々、色んな切り口で楽しいお遍路歩きを企画されている、引き出しの多い住職さんがいらっしゃいます。
旅行会社が主催する遍路ツアーとは違い、小豆島の住職さん自らが考案&引率して作法はじめ色んな雑談をしながら歩けるので、遍路や小豆島をすごく身近に感じることができます。一人で歩くのが不安だという方にも、以前遍路を歩いたことがある方にもお勧めです!
次の1番洞雲山(どううんざん)も、名前からお察しのとおり、山岳霊場です。こちらは「夏至観音」が有名で、毎年6月1日から7月20日頃まで晴天の日の午後三時すぎの数分間、太陽の光で岩壁に夏至観音の像が浮かび上がる現象が見られます。
洞雲山を出たら、3番奥の院・隼山(はやぶささん)へ。この間にまた絶景の展望台が設けられています。
この後坂手港方面に向かって一気に下りますが、登ってきたときのような山道はほとんどなく、整備されたアスファルトの道を、海を眺めながら下っていきます。
坂手の集落に入ると、なんだろう、神社かな? と思う建物が。2013年の瀬戸内芸術祭で作られた、ビートたけしさんと現代美術家ヤノベケンジさんの共同作品「美井戸(びーと)神社」です。
ちなみにここのすぐ前には小豆島のクラフトビール、「まめまめびーる」さんがあります。遍路中に酒は・・と思われる方! ソーダやコーヒーもありますので、休憩にお勧めですよ。週末はランチ営業もされていますのでランチの選択肢としても。海を眺めるガーデン席もありますので歩いて汗臭くなった体でも気にせず入れます、笑。
3番観音寺。集落の中にありますが小高い丘の上に建っています。
坂手港から歩いてすぐなので、関西方面から神戸~坂手港のジャンボフェリーで来られる方はこちらの観音寺からお遍路を始めることができます。
坂手港の前には「大阪屋」さんという地元の人で賑わう海鮮食堂もあります。
さてこの後は「二十四の瞳」映画村で有名な田ノ浦半島へと参ります。ところで「二十四の瞳」の話は日本人なら誰もが知っていると思っていたのですが、最近平成生まれの若いゲストと話ししていると案外知らない、または聞いたことがあるけど映画を観たことはないことが分かってきて軽いジェネレーションギャップを感じております。
小豆島出身壷井栄(つぼいさかえ)の反戦文学の名作です、ご存じない方はぜひ小豆島遍路をきっかけに読む、または観て頂ければと思います。
▷二十四の瞳映画村 https://www.24hitomi.or.jp/
田ノ浦半島に近づくにつれ、また醤油の匂いが漂ってきました。この辺りに多い佃煮屋さんからです。
半島に入ってすぐ着くのは4番古江庵(ふるえあん)。
海の真横にあるこの古江庵、以前は砂浜とつながっていたそうですが、度々の水害で今は防波堤が設けられています。ご本尊は阿弥陀如来様ですが本堂の前にずらりと並ぶ石仏が目を引きます。お手製のオシャレな前掛けなどを着せられていて、地域の方たちが丁寧に手入れされているのがよく分かります。納経は8番常光寺にて。
ここから次の堀越庵まではアスファルトの車道ですが、風の強い日はすぐ水しぶきを浴びそうなくらい海面を間近に見ながらしばらく歩くので臨場感たっぷり。
堀越集落に着きました。
映画村に向けて右手にずっと車道が続いていますが、堀越庵へは左手へ。
半島の真ん中あたり、腰のようにくびれたところにある堀越。入り口には高級旅館の島宿真理さんの別館・海音があり、その横には家庭的なイタリアンレストランKAINAさんがあります。
しかしそこを過ぎると目の前は静かに広がる海。肩を寄せ合うように家屋が並びあう集落の中に、堀越庵と壷井栄の夫・壷井繁治(しげじ)の生家および詩碑もあります。
5番堀越庵に着きました。妙光信女という庵主さんが居た話が残されています。納経は3番観音寺にて。
堀越庵を出るとすぐこの日2回目の山道に入ります。次の田ノ浦庵まで約2kmと距離は短いですが、「馬立峠」と呼ばれる「馬も(二本足で)立てってしまうほど」急な峠を越えていきます。
この後から一気に急な山道を登ります。
下りも上りと同様に急な坂道なので、焦らずゆっくり下りましょう。
田ノ浦集落に着きました。今日もまた猪の住処を歩いていたようです。
6番田ノ浦庵。最近改修されてとてもピカピカのお堂です。納経は3番観音寺にて。
田ノ浦は先ほどの二十四の瞳の舞台となった漁村。田ノ浦庵のすぐ近くに当時の分校(小学校)が「岬の分教場」という名前で保存されていて、中を見学できるようになっています。
堀越にも田ノ浦にも古き良き時代を感じることができるノスタルジックな空気が流れていますが、この校舎の中に足を踏み入れれば一瞬で昭和にタイムスリップしたかのよう。
二十四の瞳映画村は、ここから徒歩5分程。二十四の瞳だけではなく小豆島で撮影された映画に関する展示などもありますので、興味が沸いた方は立ち寄ってみても。
隣にローストビーフの醤丼で有名な「サクラヰ」さんという食堂や、軽食が食べられるお土産屋さん「かまとこ」さんもあります。
さて田ノ浦庵の後はまた堀越へ戻るのですが、道が2通りあります。
1つ目は半島の北側で、繁忙期は大型バスの通行も多いアスファルトの車道ですが海を眺めながら歩けます。2つ目は南側のサイクリングロード。樹林の中で視界は開けていないですが、車が通らないのでゆっくり歩くことができます。時期や気分で選んでいただければと思います。
(ちなみにちょっと宣伝・私たちのセンゲストハウスは北側にあります)
堀越まで戻ったら、この日最後の10番西照庵(さいしょうあん)を目指してまた醤の郷に帰ります。
10番西照庵。周りに大規模な醤油や佃煮工場が並ぶ中、車道沿いに小さな公園と並んでさりげなく建っています。納経は8番常光寺にて。
この地域は苗羽(のうま)と呼ばれ、西照庵の正面にあるタケサン記念館・一徳庵をはじめ、京宝亭、マルキン記念醤油館、金両など大きな工場を併設するお店が立ち並び、午前中に歩いた馬木エリアとはまた違った醤の郷の雰囲気を感じることができます。
どこのお土産屋さんもこぞって「醤油ソフト」「佃煮ソフト」「もろみソフト」などオリジナルのソフトクリームを販売しているので、休憩にぜひ。キャラメルみたいな味で美味しいですよ。
醤油や佃煮屋さんの他にもこの辺りには小豆島唯一の酒蔵・MORIKUNIや2019年瀬戸内芸術祭で作られたGEORGES gallery+KOHIRA café、かわいらしいお菓子屋さんなど観光気分をくすぐられる所が集まっています。
西照庵までで全行程約18kmです。3日目に比べてなんて楽!! 笑。
4日目は観光で〆る選択肢も
5日目は朝一番に山、しかも小豆島遍路で最高標高にある清瀧山に登りますのでこの日は遍路中日(なかび)の休憩として早めに歩き終わり、観光を楽しむのもいいかと思います。13番栄光寺までお参りしておければ5日目が少し楽ですが、この日の〆方は2通りです。
① 13番栄光寺(えいこうじ)までお参りして、終了。ひろきや旅館に泊まれば翌朝はすぐ山道に入れます。
② お醤油ソフトクリーム等ですっかり観光気分になってしまった方。それも大いにアリ! お参りは西照庵までとし、その後は醤の郷の観光を楽しみつつ安田バス停まで歩く。安田バス停から醤の郷周辺(安田~坂手・古江)にある民宿やゲストハウス、ホテルに移動して宿泊。(当ゲストハウスへもバスで移動できます)。
安田バス停まで歩いておけば、だいたいどの宿にもバスで行けますし、翌朝も同バス停までバスで戻り、そこから13番栄光寺までは約1kmなのでスムーズに歩き始められます。また、安田にはスーパーマーケットも2軒ありますので素泊まり宿に宿泊する場合は買い出しができます。
先に宿泊施設に荷物を預けた後、身軽になって観光を楽しむのもひとつ。霊場以外の小豆島の魅力、つまみ食いしながら発見していってくださいね!