アイルランド生まれのヒロインが、英国王立園芸協会主催で世界最高峰のガーデニング&フラワーショー”チェルシー・フラワーショー”に挑むサクセス・ストーリー『フラワーショウ!』。ヒロインのモデルとなったランドスケープ・デザイナーのメアリー・レイノルズが来日。いま目指している理想のガーデニングについて語った。
――最初に映画『フラワーショウ!』の企画を聞いたときの印象は?
もちろん驚きました。でも監督のヴィヴィアンはパワフルな女性で、目的に向かってどんどん前進する人。信頼できると思い、いい作品になるよう協力しようと考えたのです。
――映画の中でヒロインのメアリーは”チェルシー・フラワーショー”で雑草とサンザシの木、石組みを中心にしたナチュラルな庭をデザインし、保守的なショーに新風を起こします。いまもメアリーさん自身はそうしたナチュラルな庭が理想ですか?
映画で描かれるのは私の人生の”ある一章”で、その後に考え方は大きく進化しました。それを説明するために今年、本を出したんです。当初は映画に入りきらない部分を書こうと考えていましたが、それまでの人生についてたくさんのことをヴィヴィアンに話したら飽きてしまって(笑)。確かに私がそれまで手掛けた、植物の形状やデザインのパターンは自然界に存在するものを使った美しい庭でした。そうしたデザインは宇宙的エネルギーをブロックすることなく、庭をイキイキさせると感じていたのです。でもいまは、そうしたデザインさえ大地に私のイメージを押しつけているのかなと。そこで親が子どもにするようにありのままの大地をしっかり見て守っていく、守護者となることが大地に対する人間の役割だと考えるようになりました。
――ご自身のデザインには植物への愛情が活かされていますよね。そうした感情を抱くきっかけがあったのですか?
私はアイルランドの農家で生きものに囲まれて育ちました。子どものころに両親はフルタイムで仕事をしていて、6人兄弟の末っ子として自由奔放に、でもひとりで過ごすことが多かったのです。いまのように農業が産業化される以前で、大地には生命力があふれていました。あるときトゲだらけの藪に囲まれた小さな空き地に長時間閉じ込められてしまって。最初は怖かったのですが、やがて日差しの美しさや飛び回るチョウやハチに心を奪われました。そのときにハッと気づいたのです。回りの植物は振り向いてほしくて懸命にアピールしている! と。改めて見ると、偉そうだったり生意気だったり、さまざまな個性を持つ植物がいました(笑)。大人になって振り返るとまさにあの瞬間、自分が自然の一部であることを知ったのだと思います。
――植物を愛でることでメンタル的にどんな効果があると思いますか?
自然に触れると気持ちが落ち着くのはそれこそが私たちのホーム、ふるさとだからです。自然の中にいるとありのままの自分でいられるし、自分を受け入れてもらっていると感じられる。自然と触れ合っていると幸福を感じることは科学的にも証明されています。
――自然の保護者であることを楽しむために、どんな方法があると思いますか?
いま地球が大きなダメージを受けている理由のひとつに”アグリビジネス”という産業化された食のシステムがあります。このように大地や水を毒すようなシステムから生まれた食べものをとり続けて、人間が生き延びられるとは思えません。そこで、自分で食べるものを自分でつくることをオススメします。たとえバルコニーのようなスペースしかなくても、小さな野菜でもなんでもいい。自給自足への第一歩ですね。私自身も畑でレタスやカリフラワー、ブロッコリー、玉ネギ、ジャガイモ、グリンピース、カボチャと、さまざまな野菜を育てています。それがたとえ小さな一歩でも、自分なりにできることをやってみると、得られる喜びは大きいと信じているのです。
メアリー・レイノルズ
1974年生まれ、アイルランド出身。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンで学び、97年にランドスケープ・デザインの会社を設立。02年「チェルシー・フラワーショー」のショー・ガーデン部門で金賞受賞。ロンドンの世界遺産「キュー王立植物園」の野生庭園やダブリンのファームリーハウス(官庁)の彫刻庭園の設計を手掛け、アイルランドでガーデニング番組の司会を担当した。
『フラワーショウ!』(配給/クロックワークス)
監督/ヴィヴィアン・デ・コルシィ 出演/エマ・グリーンウェル、トム・ヒューズ、クリスティン・マルツァーノほか
●7/2~ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
公式HP:http://flowershow.jp/
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