いい大人が子供みたいに楽しく遊んでいる雑誌
BE-PAL創刊とともに日本にアウトドア文化がやってきて早40年。日本のアウトドアシーンを索引してきたキーパーソンへのインタビューリレー第3弾は、小説家の夢枕獏さんです。自他ともに認める釣り好きの獏さんとBE-PALの接点とは? インタビューの一部をご紹介します!
--最初にBE-PALに登場したときのことを教えてください。
「野田知佑さんとの対談だったかなあ。 その後、写真エッセイの連載が始まっ て。ビーパルって、創刊年くらいは 釣りとか魚のことをあまり取り上げな かったですよね。じつはそれが僕には不満で。ビッグコミックオリジナル の『釣りバカ日誌』の初代担当者で、 ハマちゃんのモデルにもなった小学館の名物編集者が編集長になったら、釣りの企画が増えて僕も否応なしに引きずり込まれた感じかな(笑)」
――釣りといえば、野田知佑さんとよく一緒にユーコン川を下っていましたね。
「はじめて紹介されたころ、野田さんは都内と千葉県の亀山湖を行き来する暮らしをしていました。最初に亀山湖の家へ遊びに行ったとき、野田さんは借りている大きな家の中にテントを張って住んでいて、面白い人だなぁと。愛犬のガクもまだ若くて、いつもカヌーに乗せてもらっていましたね。 1987年、僕が35歳ぐらいだったかなあ、野田さんが“獏さん、ユーコンへ行こう。向こうの川はいいぞ。サーモンもうじゃうじゃいる”というので連れて行って もらったんですね。ユーコンは3回。 周辺を含めるとアラスカには5回くらい一緒に行っていると思います」
--売れっ子小説家としていくつも連載を抱えていらっしゃるのに、よく時間を割くことができましたね。
「僕は今もそうですが手書き派で、原稿用紙と万年筆があればどこででも仕事ができます。野田さんも同じ。上陸 するとどちらともなく書き始め、町に着いたらFAXを使えるところを探して出版社に原稿を送っていました。僕の場合、アイデアがすでに頭の中にあれば時速5枚、つまり2000字をキープできます。乗らないときでも1時間4枚。乗れば 8枚書ける。釣りのときは、宿で 2時間 10枚くらい書いたら編集者に送ります。それから小半日釣りをして宿に戻ってまた原稿を書く。そんなふうに仕事と遊びを両立させています」
--オンとオフのバランスをとるのがうまいというより、オンとオフの境目が ない生き方をされている気がします。
「公私混同っていう言葉がありますけど、悪い言葉じゃないよね。BE-PALがこれだけ支持されてきたのも、制作に関わる人たちが公私混同の確信犯だった、つまり、いい大人が子供みたいに楽しく遊んでいるからでしょう。ちくしょう、うらやましいなって思わせてきた。コロナ禍を機にリモートワークが進み、日本人のオンとオフに対する考え方も急激に変わっています。ついに時代が追いついてきたよね」
公式YouTubeでインタビュー動画を配信中!
動画では「体感をもとにした実感がなければいいフィクションは書けない」という獏さんとアウトドアの関係を、もっと深く聞くことができます。野田さんとの思い出も、たっぷり語ってくださっていますよ。今すぐチェック!
※構成/鹿熊 勤 撮影/小倉雄一郎 聞き手/沢木拓也(編集部)