自転車パーツはここまで進化した。ロマン溢れる”スラム”の最新ワイヤレス変速機を試してみた
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    2021.07.11

    自転車パーツはここまで進化した。ロマン溢れる”スラム”の最新ワイヤレス変速機を試してみた

    ワイヤレスの変速機、「スラム / GXイーグル アクセス」をご紹介する

    ワイヤレスの変速機の実力を試した

    ロードバイクやマウンテンバイクなど、スポーツ自転車には、ひと目でそれとわかる特別な機能がたくさん盛り込まれている。

    日常使いの軽快車(つまりママチャリ)などと比べると、とても軽い車体、よく回るホイル、制動力の高いブレーキなど、専用に開発された部品は多岐にわたる。なかでも、特徴的な機能と見た目を備えているのが「変速機」だ。最大で13段にもおよぶギア板と、チェーンを横移動させるディレーラー(変速機本体)が後輪の中心などに取り付けられ、手元でスムーズにギア比を変更することができる。

    なんともメカメカしい佇まいが、スポーツ自転車の趣味性をより深めていると感じるが、さらにメカ好きの心を掴むアイテムが発売された。その名は「SRAM / GX Eagle AXS(スラム / GXイーグル アクセス) 」。なんとワイヤレス=無線式の変速機だ。

    開発されて100年以上経過する自転車変速機の歴史

    通常、変速機は手元のシフターまで金属のワイヤーでつながっている

    自転車の変速機は、元々は1800年代後半に内装式として発明された。ホイルの内部に遊星歯車を設けたものが初期の自転車に組み込まれていたが、軽量化が難しく、そののちスポーツ車では外に取り付けられたギア板をチェーンで切り替える外装式が一般的になっていった。

    外装式の変速機では、チェーンで繋がった前後のギア板の大きさでギア比を変更する。坂道の前では軽く、平坦でスピードが上がった際はギアを重く変更する。初期の製品は自転車を降りてチェーンをかけ直すアナログな仕様だったが、現在はワイヤーを介して乗車しながら手元で操作が可能となっている。

    進化する自転車部品も、ついにワイヤレスへ

    ワイヤレス式のため、通常取り付いているワイヤーや配線がないため、見た目にすっきりしている

    スポーツサイクリングの頂点、”ツール・ド・フランス”などでは10年以上前から電動による変速機が使用されている。これはシフトワイヤーの代わりに電気用の配線を使い、ギア位置を変更するバネの代わりに小さなモーターが組み込まれている。

    しかし、今回紹介する「GXイーグル アクセス」はシフトボタンと変速機の間にある配線を排し、完全ワイヤレスで作動する方式が採用された点が新しい。たかが無線式の変速機と思われるかもしれないが、長くスポーツ自転車を楽しむ者としてはこの製品の登場に心が躍った。

    革新的なパーツを作ってきた「スラム」社

    「スラム」は1987年アメリカで設立された自転車部品メーカー。グリップシフトやダブルタップなど、革新的なパーツ開発で知られるが、2015年に発表した「Red eTap(レッド イータップ)」で無線式の変速機をリリースし、その後「アクセスシリーズ」としてロードバイクやマウンテンバイクなどラインナップの幅を広げている。今回取り上げる「GXイーグル アクセス」はマウンテンバイク用の普及グレードとして、手頃な価格帯が魅力だ。

    手元のシフターも、ワイヤレスのため配線はない。ボタン電池で作動し、操作しやすい場所に配置できる

    実際に使用してみて操作感はとても直感的。ふつうのシフターのようにワイヤーを引っ張る必要がなく、手元の小さな動作で変速が可能だ。しかしマウンテンバイクなどでグローブをした状態で扱うため、カチッカチッとあえてクリック感を覚える「味付け」が施されている。押し面も指に沿うように大きく、扱いやすい。無線とはいえ変速のスピードも申し分ない。

    スマホと繋げてガジェット感覚で扱える

    ボルト一本で固定するシフター。ボタン式のため、最大限扱いやすいよう設計がなされている

    組み付けもとても簡単。シフターは、ハンドルにボルト一本で固定し、ディレーラー側もチェーンを通してボルトを取り付ければひとまずOKだ。通常の変速機ではワイヤーを自転車に取り回す必要があるため、手間は雲泥の差といえる。またセッティングについても、スマートフォンのアプリと繋がることで、設定が視覚化されるなど使い勝手が拡張される。

    スマートフォンと接続して、シフターのボタン配置や細かい設定ができる

    例えばシフターにシフトアップ・ダウンのボタンが配置されるが、これはアプリ内で入れ替えが可能だ。ユーザーの好みで、セッティングを変更できる。また変速機のファームウェアがアプリでアップデートできるなど、無線になりスマートフォンと繋がった途端、自転車部品を超え「ガジェット」に変化する。

    現在のギアが可視化される機能も

    サイクルコンピューターやスマートフォンとはBluetoothで接続ができ、ギアがどの位置に入っているのか表示してくれる。また電池の残量なども表示させることができる

    ガジェットという点でいえば、「ガーミン」など手持ちのサイクルコンピュータと接続することで、ライド中にどのギアが選択されているかをその場で確認できる。またライドを終えたあとにどのギアをどの程度使用したかデータでチェックすることも可能だ。これはレースなど競技向けの機能だが、ガジェット本体とスマートフォンなどが繋がることで、データ回収など使い方の幅が広がることを実感する。

    ディレーラー側のバッテリーは着脱式。防水性も高い

    ディレーラー側のバッテリーは本体に直接装着されており、取り外して充電をする。一度の充電で5〜25時間使用が可能と説明書に記載があるが、この幅は変速の使用頻度、つまり坂道の有無などで変化するためだ。変速機のインジケーターランプでも充電状況は確認が可能だが、スマートフォンやサイクルコンピューターでも見ることができるため、充電し忘れも防ぐことができる。

    見た目すっきりで機能的なワイヤレス変速機

    ハンドル周りもすっきりする。左右のブレーキホースのほか、サドルを下げられるドロッパーサドルのワイヤーが残っているが、ドロッパーも同系列のメーカーからワイヤレスタイプが登場している

    組み付けのしやすさ、性能の高さ、外部アプリなどによる使い勝手などメリットの幅は広いが、なんといっても自転車の見た目がすっきりすることもお伝えしておきたい。ワイヤーや配線がないことにより、ハンドル周辺、変速機本体周辺がすっきりし、見た目のクリーンさがアップする。

    既に実走で使用した際ディレーラーに傷をつけてしまったが、「オーバーロードクラッチ」という機能が本体を守ってくれた。衝撃を感知した瞬間に内部のモーターがギヤボックスから外れ、破損を防止してくれる機能だ

    今回ご紹介した「GXイーグル アクセス」のほか、ロードバイク用にも同じく普及グレードのワイヤレス変速機を今年発表した「スラム」。長く自転車競技を楽しんでいる方も、自転車に触れて日が浅い方も、自転車パーツの進化を直接体感することができるはずだ。

    GX EAGLE AXS(スラム / GXイーグル アクセス) アップグレードキット

    定価:10万7,800円
    キット内容:リヤディレイラー、シフトコンロールレバー、バッテリー、バッテリーチャージャー、バッテリーカバー
    製品のお問い合わせ:ダートフリーク サイクルグループ http://dirtfreak.work/cycle/

    私が書きました!
    CX / BMXアスリート
    腰山雅大
    自転車歴20年の社会人アスリート。BMXパーク競技を経て泥の中をレースするシクロクロスへ参戦、ボーダーレスな自転車競技活動を続けている。All-City Cyclesの本国契約ライダーとして国内トップカテゴリーを走る一方、本職では自動車整備業に従事。乗り物のほかコーヒー、銭湯、カメラにアウトドアなど、趣味は常に多彩でオーバーフロー気味。https://www.instagram.com/vhlg/

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