スイスの山といえば?マッターホルン!
スイスの山といえば?皆様は、どの山をイメージするだろうか?きっとツェルマットに聳え立つ4478mのマッターホルンと答える人が多いだろう。今回紹介する”ヘルンリ小屋”はマッターホルンの直下3260m地点にあり登山の拠点として有名な山小屋だ。ここからノーマルルートのヘルンリ稜、ツムット稜、北壁などの山頂を目指して歩いていく。天候次第だが例年7月~9月中旬までオープンしている。今年もシーズンが到来した。
マッターホルンは、イギリス人のエドワード・ウィンパーが1865年に初登頂を成し遂げ、1880年になりスイス山岳会が17ベッドのみの山小屋(ヘルンリ小屋)を建てた。その後、改修・拡張を繰り返し、1982年の工事で定員170名の山小屋となった。さらなる大規模改修を経て、マッターホルン初登攀から150周年を祝う2015年に新装オープンした。
清潔で快適な宿泊環境
ヘルンリ小屋では、ゴミ処理、水の確保、エコ発電などに留意しながら最新鋭の建築技術を導入している。なかでも新しいピカピカのお手洗いとシャワーはうれしい。ちなみに水は氷河から引き浄化して使用している。氷河のシャワーは日本にはないので、かなり貴重な体験では!?
ドミトリーの宿泊は朝夕食付きで150スイスフラン=約18,000円(2021年7月1フラン=120円)。
72時間前までは、HPからオンラインで予約ができる。その際、1人50スイスフランのデポジットが必要となるが、このデポジットはキャンセル時には返金されないので注意。インナーシュラフは持参するか現地で購入する。
宿泊料金が高いと感じるかもしれないが、清潔で快適、夕食は美味しい3コース、環境にも配慮した作りといたれりつくせり。お天気さえ恵まれれば一度は体験してみたい、ドラマティックな絶景を楽しめるはずだ。
2人、3人、4人、6人、7人、8人、9人部屋が全24室。窓からはマッターホルンを眺めることができる完全個室のシャワー&トイレ付きの2人部屋が2室ある。静かにくつろぐことができる山小屋とは思えない贅沢なプライベート空間だ。ちなみに環境保護のためテント泊やビバークは禁止されていて、違反者には罰金の可能性がある。
登攀をしないハイカーも宿泊できるので、おすすめしたい山小屋のひとつだ。ツェルマットからゴンドラに乗りシュヴァルツゼーで下車。そこから約2時間半ほど小屋まで登っていく。健脚の人なら可能だが、登りが続くので休憩や写真タイムを多く入れる場合はもっと時間がかかる。日帰りの際には帰りのゴンドラ時間も頭に入れて行動しよう。
ガイド登山の場合は夕方までに小屋に入り、ガイドと合流して装備のチェックをする。ロッカーには登攀に必要のない装備を置いていくことが可能だ。
食堂に配置された新しい木のテーブルは清潔感があって快適だ。窓の外の崩れた岩稜はマッターホルン、しかし近すぎて写真に入りきらなかった。
うれしい食事タイム!
夕食は3コース。スープのあとは牛肉と温野菜、マッシュポテト。おかわりも自由!お肉は柔らかく煮込んであり食べやすかった。
標高3260mでこの食事はうれしい!しかし高所で消化能力は落ちるので、飲酒と食べ過ぎには要注意。高所順応のためには水分をたくさん取るといい。
ハイカーが登攀者の出発シーンを見たい場合は、早起きすれば可能だ。日の出の時間によって登攀者の出発時間は異なるが、4時半前後。登攀者は出発の20分前くらいにモーニングコールがあり、ささっと朝食のパンをかじりながらハーネスを付けロープの準備を静かに淡々と行なっていく。
ガイド登山の場合はガイド1人に対してゲストも1人。そのくらい岩の登攀には危険があるのだ。ガイドも命がけ。出発する際の先頭を切るのはツェルマット出身の地元のガイド、しかも年功序列。その次にスイス、EU、アジア、一番最後に単独やガイドなしの登攀者達が続いていく。これが暗黙のルールだ。
起点となる最初の岩を登る場所では順番待ちが発生する。登攀者は焦る気持ちを抑えて進んでいく。
ハイカーで朝焼けを見たい人は、天候に恵まれれば素晴らしい景色を見ることができる。筆者は明けの明星の静けさが好きだ。標高も高く、かなり冷え込むのでレインウェアの上下を着こんで写真撮影した。
スイスの最高峰は、イタリアとスイスの国境に位置する標高4634mのモンテローザ(写真左)。まさしく赤い薔薇のような形だ。
ハイライトはマッターホルンの朝焼け!直下から見上げる景色には迫力がある。上から段々と朝日がおりてくる様子はドラマティックだ。今頃、登攀の先頭者はソルベイ小屋という避難小屋あたりだろうか。無事に戻ることを祈りつつ山を眺めた。
詳細なマッターホルンの登攀や山小屋での生活、レスキュー秘話などに興味のある方には、筆者が共訳した「マッターホルン最前線」をおすすめしたい。これはヘルンリ小屋の前管理人・レスキューの副隊長でもあったラウバー・クルト氏の自叙伝だ。山を登らない人でも読みやすく、楽しめる内容となっている。日本の登山や山小屋とは異なる、新しい世界にお連れします!
ヘルンリ小屋ホームページ
https://www.hoernlihuette.ch/home_15.html
スイス政府観光局サイト
https://www.myswitzerland.com/ja/accommodations/hoernli-hut/