BE-PALは今年創刊40周年を迎えた。創刊当時は第一次アウトドアブームが到来していた1981年、40年経った今、第2次アウトドアブームが到来している。BE-PALゆかりのアウトドア達人たちに、今伝えたい、それぞれの「至高のキャンプ」を教えていただいた。まずはレジェンド中のレジェンド、作家・カヌーイストの野田知佑さんの「至高のキャンプ」をご紹介しよう。
WATER SIDE CAMP
作家、カヌーイスト
野田知佑さん
カヌーやユーコン川の魅力を日本に紹介するのみならず、旅する意味を深く世に知らしめる。『北極海へ』(文春文庫)ほか著作多数。
カナダ・アメリカ ユーコン川
ひとりであることを心身に刻む、自由の大地
今までのキャンプで最高の場所はユーコン。広く自由なユーコンを味わうなら単独行がいい。ぼくは「独り」を愉しめる人間だからね。肉体と頭脳を目一杯使い、意志的に生きるさまを「フルライフ」という。ユーコンで2、3か月漂泊の暮らしをすると、心身のぜい肉を一片残らずそぎ落とすことができる。犬のガクは当初クマよけの目的で同行させた。彼はキャンプ地から森に出かけ、出遭ったクマと喧嘩をし、やりあったあと、ヒャンヒャンいいながら戻ってきた。クマはバキバキと音を立ててやってくるので、銃を構えて待機することができる。空に向けて撃つと、たいがいのクマは退散する。それでも逃げなければ、足許の土を撃って脅すと逃げる。広大な河原を書斎とし、銃を傍らに置きながら本を読み原稿を書く。クマの住む空間にいる緊張感がおもしろい。
頭を垂れるガクに「逃げるときはテントと反対方向に逃げろ」と叱ると「ワカッタ」。ただ、その後も何度かクマを連れてきた。
※構成/麻生弘毅
(BE-PAL 2021年7月号より)