本国・アメリカでこの夏、完売した店が続出したチェアがある。ニーモの新作「ムーンライト リクライニングチェア」(1万6500円)だ。
日本では夏発売と噂されていたが、なかなか実現せずやきもきしていた人も多いだろう。アメリカでは秋になって再入荷が始まり、日本でも発売の目処が立ったと聞き、さっそくその実力を試してきた。
「スターゲイズ」シリーズのおおよそ3分の1の大きさ
「ムーンライト リクライニングチェア」の収納サイズは10×10×35cmで830g。ライバルとほぼ同じ収納サイズで、後発だけあり重量はやや軽くなっている。
写真下側は「スターゲイズ キャンプチェア」(2万350円)で、収納サイズ53×17×17cm、重量2.7kg。キャンプファニチャーに革命をもたらした「スターゲイズ リクライナー」(廃盤)の後継モデルで、やや小ぶりで持ち運びやすくなっている。
こうして2脚を比べてみると見た目も重量も3倍ほどの「スターゲイズ キャンプチェア」をバックパックでの徒歩旅に持っていくのは億劫だが、「ムーンライト リクライニングチェア」なら気負わず持ち運べるだろう。
ニーモらしいフレンドリーな設計
左右の脚をつなぐフレームは断面が楕円になっていて、持ち上げて組み立てている途中で右脚と左脚の向きがずれ、シートをうまくかけられずイラッとするのを防いでくれる。
もうひとつ、組み立て中のイラッを軽減するのがシートとフレームをつなぐソケットとボールだ。
シート側にはしなやかな樹脂製のソケットが付いていて、ここにフレーム末端のボールを差し込む。ただ袋状になっているのではなくカチッとはまり、ちょっとシート生地がたるんだだけではずれてしまうことはない。ただ、慣れるまではボールの差し込み・取り外しが硬く感じるかも。
リクライニング機構の差は約10度
サイズを比べてみよう。
ムーンライト リクライニングチェア 49×53×H64cm
スターゲイズ キャンプチェア 92×65×H72 cm
スターゲイズ キャンプチェアは幅が約40cm、奥行きも10cmほどゆったりしていることがわかる。ムーンランダーテーブル(48×37×H40cm)の天板を基準にしてみると、ムーンライト リクライニングチェアの座面は天板よりやや下、スターゲイズ キャンプチェアはほぼ同じ〜上に位置している。その差は約5cm。座ったり立ち上がったりしやすいのは座面の高いスターゲイズ キャンプチェアだ。
もっともムーンライト リクライニングチェアはライバルとほぼ同じサイズで、決して窮屈とは思えないし、2ルームテントの中に並べるならこちらのほうがスッキリして過ごしやすい。コンパクトと快適を両立させた黄金比がこのサイズなのだろう。
であれば先行しているライバルを持っていれば買い換える必要はないのだが、ムーンライト リクライニングチェアが待ち望まれているのはスターゲイズシリーズで評判の“リクライニング機能”があるからこそ。
写真ではわかりづらいが、写真上のフレームの角度は75度、写真下では85度。約10度の違いはスターゲイズシリーズほどのインパクトはないが、座ってみるとガラリと異なる。
評判のいいチェアであっても「あともうちょっと後傾していれば(前傾していれば)いいのに」と感じることは珍しくない。スターゲイズシリーズに比べてわずかな差ではあっても、これ1脚で食事もくつろぎ時間も満足できるポジションに調整できるのがうれしい。
シームレスなメッシュシートが体になじむ
座り心地のよさはリクライニング機構だけによるものではない。
縫い目のないシームレスメッシュのおかげで、座ると体に心地よくフィットする。これも快適さの秘密だ。体を左右に揺らしたときにも自然になじみ、体の一部のみに体重がかかるようなことはない。
半面、オールメッシュは涼しく、これからの季節はカバーをかけるなど工夫が必要だし、比較的熱に強いポリエステル製のシートではあっても焚き火のそばで使うのはかなり勇気がいる。
それに耐荷重は136kgと一般的な使い方なら十分だが、樹脂製のソケットやポリエステルシートの長期的な耐久性が気になるところ。いずれ換えシートが登場すればいいのだが。
オートマチックではないものの、自分にちょうどいい角度を見いだせるリクライニング機構を搭載したムーンライト リクライニングチェア。発売は9月末予定とのこと。
星空を仰ぎ見ることは少々厳しいが山際からゆっくり昇る月を眺めるのにいい角度で、限られた空間で可能な限りリラックスしたい人は試してみる価値がある。
【問】イワタニ・プリムス https://www.iwatani-primus.co.jp/products/Nemo/