【ソロ秘湯番外編】ほぼ前人未踏!深山に潜む『白い宝』の正体とは?(北海道)
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    2021.11.21

    【ソロ秘湯番外編】ほぼ前人未踏!深山に潜む『白い宝』の正体とは?(北海道)

    「白い宝」の正体を調査しに、道東の秘境へ行ってきました!

    わたしの秘湯歴史上、最も謎のベールに包まれた野湯へGO!

    みなさん、こんにちは。ソロ秘湯愛好家のゆみです。

    今回は、北海道新得町にある「ほぼ前人未踏の秘湯」を目指すお話です。そこは通称『カムイミンタラ白い宝』。「カムイミンタラ」の意味は「神々が遊ぶ庭」(*「ヒグマがよく出るところ」とする説もあり)、アイヌの人々は大雪山のことをそう呼ぶそうです。わたしがこの秘湯を知ったのは、グーグルマップの航空写真で北海道の山を調べていた時、巨大な白い物体が山肌を覆っているのを発見したのがきっかけでした。その後、その場所が気になり、ネットや文献を調べていくと約10年前の地質調査レポートを発見。それによると、その怪しき物体は、標高1100m、面積約9ヘクタール、国内最大級の石灰華(石灰華とは、温泉成分のひとつである炭酸カルシムの沈殿)で、世界的にも大変めずらしい場所であるということが判明したのです。また、その秘湯は、高低差50mの滝の上にあるため、アクセスするのが大変で、ほとんど人が足を踏み入れていないのだそう。はたして、温泉にたどり着くことができるのか…いや、そもそも、温泉法で認められた「温泉」が湧いているのか、それすらわかりません。でも秘湯探検家としては、どうしてもその正体を調査したくて、行ってみることにしました。 ちなみに、目的地は国有林であり、かつ特別天然記念物に指定される大雪山の地域内なので、いろいろと前準備が必要でした。まず出発の2か月前に『(1)入林届』と『(2)現状変更許可申請書』2種類の申請をしました。(1)は調査目的で国有林に入るということで地元の森林管理署さんへ申告。(2)は天然記念物の保存のため、訪問の目的や踏査の範囲などを記載して文化庁に提出、許可をもらいます。普段行く野湯は入林届だけでOKな場合が多いのですが、今回は許可をもらうのにもずいぶん時間がかかりました。

    「ソロ」ではとても行けない秘湯。どんな困難が待ち受けているのでしょうか?

    林道を往復約10時間の歩き…到達するのは狭き門

    『カムイミンタラ白い宝』への到達はそう簡単ではありません! 往復18km(徒歩10時間)で、夏の日照時間が長い時期でないと日帰りできません。つまり7月~9月のわずか2か月間が勝負。また、天気運や強靭な体力を持っているかなど、到達するためのハードルだらけの狭き門です。今回はさすがに「ソロ」では無謀なので、わたしの山の師匠でもある廣山さんに当日のガイドを頼みました。廣山さんに案内を依頼した理由は、地元の道に詳しいことはもちろんですが、クマ対策のプロなんです。「今年はクマの出没が多いから、訪問は必ず複数人で、しかも風が強い日はクマも人間の居場所を察知しづらいので日を選ぼう」など、あらかじめアドバイスを受け、万全の安全対策をして挑むことにしました。

    写真左が「山の師匠」こと廣山さん。藪が生い茂った林道ゲートから朝6時に出発!

    渡渉10回以上! ジャブジャブ入ってガンガン歩く!

    温泉までは、最初から最後まで沢沿いの林道を歩いていくのですが、林道が決壊している箇所もあり、ひざ下までの渡渉を10回以上余儀なくされました。まあ、そんなこともあろうかと思い、「長時間の歩き」と「沢渡り」どちらにも対応する特殊な沢靴『サワークライマー』を履いていったのですが、これが大正解。何も気にせず、ジャブジャブ入ってガンガン歩きます!

    川はそんなに荒れてないので、渡渉自体はそんなに困難ではありませんでした。

    こりゃなかなかの難所! 藪こぎ地獄

    全行程の半分まで来ると、昔、営林署の方が木々を運んだ「作業道」と言われる道に出ます。じつは、渡渉よりここが難所でした。フキやクマザサの茂みで視界がさえぎられ、両手で搔き分けても、足元が見えなくなるほどです。

    なにせ「前人未踏」の場所を目指すのだから、藪もすごい! 必死に前へ前へ…。

    時折漂う、フキの何とも言えないいい香り。 これには、「フキ味噌の香りだぁ♪」なんて、ついうれしくなっちゃいました。でも、はしゃいでいたのも束の間、師匠が「ほら、フキの茎が食いちぎられているでしょ? これはクマが食べた跡でね。切り口の新しさで、クマがいつ通ったかがわかるんだ」と一言。そして、おもむろにポケットから爆竹を取り出すと、「さ、ここらで1回鳴らしておこうか」。え? それってクマが割と近くにいる気配ってこと?「あ、はい!」言われるがままに爆竹に着火するわたし…。

    ヒグマが食べたと思われる、新しいフキの茎の切り口を発見。念のための爆竹は欠かせません。

    ついにラスボス登場。高低差50mの苔の滝!

    そうこうしているうちに、歩き出して5時間半が経過。だいぶバテ気味で最後の沢を遡上していると、突如目の前に巨大な「苔の滝」が出現。その姿は、まるで最後の宝を守るラスボスのようにも見えます。「この滝の上に石灰華があるから気をつけて行ってこい。俺は下で待ってるからな。大丈夫だ10分で登れるから。はっはっは」と、余裕の師匠。「え、師匠? この滝 50mはありますよ。10分で行けるワケない…」。それにしても、この滝…ラスボスなんて例えてみましたが、鮮やかな緑、そこを流れ落ちる絹のような鉱泉といい、苔マニアじゃなくても飛びつきたくなる美しさです!

    50m上部の大地から流れ落ちる鉱泉の滝は絶景です。

    「そうそう、この滝に見とれてる場合じゃないのよ!日暮れまでに戻らなきゃならないんだから」。 戦闘モードに切り替えて、大量の鉱泉が流れ落ちる滝の斜面(傾斜35度)を滑らないよう慎重に登っていきます。途中、ちらっと後ろを振り返ると、下でこちらを見つめる師匠が「米粒」みたく小さく見え、足がすくみます…。 案の定、私の登山技量では10分では登りきれるはずもなく、30分以上悪戦苦闘。「やっと最後の難関までたどり着いたんだから、絶対、頂上までたどり着いてやるもん」。 とにかく落ちないように岩肌に両手両足で必死でしがみつき、一歩ずつ登ります。

    岩肌の斜面は、なだらかな階段状になっていて、見た目よりは滑りません。

    「白い宝」のありかへ、ついに到着!

    ようやく滝を登り終えると、パッと視界が開け、ものすごい硫黄臭とともに目の前に広大な白い大地が現れました。山肌には大量の鉱泉が流れ、白濁した湯川となっていました。温泉成分のせいか、大地には草木がほとんど生えず、枯れ木が1、2本ポツンと立っている程度。豪快に鉱泉が流れる音以外、物音ひとつしません。静寂とともに神々しい雰囲気が漂っています。 「つ、ついに『カムイミンタラ白い宝』到着。やったぁ!」

    「はぁ~、しんどかった!」無事に登りつめると目の前に圧巻な景色が広がる…。

    トルコの世界遺産『パムッカレ』ここにアリ!?

    「神々が遊ぶ庭」と訳されるだけあり、まさに桃源郷…。岩の間にいくつもの湧出孔があり、そこから大量の鉱泉が溢れ、白い石灰華が「千枚田」状になっているんです。まるで、トルコの世界遺産『パムッカレ』のよう!

    開けた山肌のあちらこちらから、ぬるめの鉱泉が湧き出ています!

    今回の目的、泉質を調べるために、石灰華を傷つけないよう靴を脱ぎ、ゆっくりと鉱泉を汲んでみました。後日、サンプリングボトルに入れた鉱泉を研究機関で分析してわかったことですが、≪泉質:含硫黄-カルシウム・マグネシウムー炭酸水素塩泉、泉温:24度C・pH6.8≫のれっきとした「温泉」でした。しかもなんと、国内トップクラスの濃い~硫黄泉なんだそうです。

    透明の温泉だけではなく、黒い温泉も湧いていました!

    秘湯中の秘湯で、あらためて思ったこと…。

    日本にこんな「手つかずの秘湯」があるなんて本当に驚きです。「苔の滝は、この神聖な場所への<関所>の役割で、登りつめた一握りの人だけが、この神秘的な白い宝を目にすることができるんだなぁ」。そう悟ったと同時に、この場所はこれから先も、ずっとこのままであってほしいなと思いました。

    ちなみに、ご紹介した『カムイミンタラ白い宝』、正式名称は『ワッカタリベツ川石灰華群』と言い、地質学者や自然カメラマンなどにはその名で知られています。野湯マニアですら訪れないほどのアクセスの厳しさなので、わたしも今回ばかりは、「ソロ秘湯」ではなく、ガイド随行の調査目的「番外編」として紹介したわけです。日本には世界遺産にも負けず劣らずの、こんな自然が各所に残されている…秘湯探検家として、その感動と存在をみなさんにお伝えしたかったのです。

    <コースタイム>

    林道ゲート(5時間30分)→苔の滝下(40分)→カムイミンタラ白い宝(30分)→苔の滝下→林道ゲート(3時間30分) ※行きは休憩含む。帰りは休憩含まない。

    <持ち物いろいろ>

    (服装)夏山登山の格好 (装備)ストック:モンベル アルパインポール、登山靴:モンベル サワークライマー、リュック:ノースフェイス テルス25バックパック、レインウェア:バーサライト ジャケット、虫よけスプレー、爆竹、クマスプレー、クマ鈴、Bluetooth対応ラジオ、(食料)お弁当、チーズ、水2リットル、(温泉関連)サンプリングボトル500mL、pH計、温度計

    『カムイミンタラ白い宝』

    ● 泉質:含硫黄-カルシウム-炭酸水素塩泉

    ● 色・におい・味:透明、強い硫黄臭、炭酸味

    ● アクセス:(とかち帯広空港から)幸福ICより帯広広尾道 芽室帯広IC~道道75号線経由で約2時間。新得町屈足トムラウシの林道から歩きで片道6時間~7時間。

    <注意事項>

    ● 国立公園のため、森林管理署への「入林届」の提出、及び、文化庁への「現状変更許可申請書」の提出と許可が必要となります。

    ● この取材は「調査目的」です。温泉に浸かることを目的とした場合に、許可がおりるかどうかは保証できません。

    ● ルートは、一般に使用されていない未整備の林道になります。道の崩落、落石などの危険性があります。

    ● 訪問を検討される方は役場、地元の山岳ガイドさんに相談してください。クマ除けグッズは必携、複数人で行くのが原則です。

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