新型コナウィルスも落ち着きを取り戻しているキャンプシーズン、アウトドアシーズンの秋です。一方で、毎年のように災害が起きる災害大国日本で暮らす私たちですが、防災士の資格を持つ災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんに、災害時に活躍するアウトドアグッズを聞きました。今回は「水編」です。
『キャンプ力』が高い人は『防災力』が高い
「台風、水災害、地震、大雪など一年を通じて様々な災害が、しかも毎年のように起きます。災害時には電気・ガス・水道といったインフラがストップして、普段とは違う環境下に晒されます。そんな緊急時は、インフラが回復するまで生き抜くことが必要になり、改めて考えると、インフラがない環境とはアウトドアアクティビティの環境でもあるんです。普段親しんでいるアウトドアグッズが、必ず災害時に役立ちます。つまりね、『キャンプ力』が高い人は『防災力』が高いんです」
厳密に言うと「防災力」ではなく「減災力」が高いと補足を入れてくれた和田さんでしたが、災害時に最も大事になる「水」まわりについて解説をしてくださいました。
命を守るレインウェア〜大事なのは透湿性
「アウトドアアグッズが災害そのものを防ぐわけではないのですけど、まずご紹介するレインウェアは、雨風を凌ぎ、寒さから身を守る必須アイテムです。災害時、濡れることは大敵です。水に濡れると体温が奪われていき、命の危険に晒されますからね。
また、避難所は自宅と違って暖房設備が完備されていない場合が多く、電気が止まってしまうこともあるわけですから、防寒対策も大事になります。そんな時にも活躍するのがレインウェアです」
キャンプなどアウトドアで過ごすとき、急な雨、風向きが変わる、急激な気温の低下など、天候の変化はよくあります。そんな“もしも”の備えとしてレインウェアは欠かせないと和田さんは言います。
「レインウェア選びのポイントは2つあります。1つ目は、防水性に優れていることです。そして2つ目がもっと大切だと思っていて、それは透湿性です。人は汗をかくでしょ。その熱を外に放出させて体温調節を行なうメカニズムを備えているのですが、透湿性が低い衣服の場合に、その熱が外に放出されず汗が冷えることで体温低下につながります。水の侵入を防ぐ防水機能だけでなく、蒸れ(水蒸気や湿気)を外に逃がす透湿機能を兼ね備えたGORE-TEXなどのレインウェアをオススメします」
水と瓦礫から守る防水シューズ
「レインウェアと同じくらい大事なアイテムが足元からの水の侵入を防ぐ防水シューズです。足が冷えると体温が一気に低下して、感覚を失うと危険です。低体温症を招くことだってあります。それと、災害時、外だけでなく、家の中でさえもガラスの破片などが散乱し、怪我を招きますから、ソールが分厚くて硬いものが良いです」
“枕元に靴を用意しなさい”…そう言われて久しいですが、防災意識が年々高くなっているとはいえ、実行している人は少ないのでは?瓦礫などに足を取られ、逃げ遅れる要因にも繋がることからも、アウトドア向けのシューズが災害時でも役に立つことを覚えておくと良いでしょう。
緊急時、携帯用浄水器が大活躍!
「『人間は水さえあれば、何日も生きることができる』。そんな言葉を必ず聞いたことがあると思います。災害時は間違いなく食糧不足になりますし、安全で清潔な水の確保も困難です。そんな時に活躍するのが携帯用浄水器です」
本来は飲料水の確保が難しい山域や、浄水設備が整っていない海外で使用することを目的に持参する人が多い携帯用浄水器ですが、災害時に大活躍すると和田さんは言います。
「今日お持ちしている携帯用浄水器は3000円程度で、特殊な活性炭で一般的な雑菌を99.9%取り除くことができます。市販のペットボトルの口に装着させることも可能なため汎用性にも優れています。飲料水としてはもちろん、目や傷口の洗浄にも役立ちます。災害時は、いつ来るか分からない救助や補給をアテにするのではなく、自らの力で生き抜く力が大切です」
さすがにグランピングのようにあらゆるものが揃っているものは別として、インフラがストップしてしまう災害時は、アウトドア環境と同じと話す和田さん。特に「水」は時に大敵となり、時に命をつなぎます。
水を理解し、水と正しく向き合うことで、適切な対策も取ることができそうです。今一度、あなたの“水回りグッズ”を確認してみてください。
<紹介したグッズ>
レインウェア:mont-bell ストームクルーザー ジャケット(GORE-TEX)
防水シューズ:mont-bellテナヤブーツ(GORE-TEX)
携帯用浄水器:携帯ボトル浄水器RJ-1
次回は「火」をテーマに引き続き、和田さんに解説して頂きます。
<PROFILE>
和田隆昌(わだ たかまさ)
NPO法人防災防犯ネットワーク防災担当理事。災害危機管理アドバイザーとして、自治体や企業の災害対策支援、被災地の視察、災害に関する講演活動、メディア出演を通じた情報発信を行っている。アウトドア雑誌の編集者としての経歴を持ち、防災観点のアウトドア知識の活用などにも精通している。
著書:『中高年のための 「読む防災」』ワニブックスPLUS新書 など
取材・文/山田洋 撮影/横田紋子