狩猟に興味を持つ人が増えています。実践するにはハードルが高いイメージがありますが、銃を使わない『罠猟』なら比較的簡単に始めることができます。今回は獣害対策としても話題の罠猟について、概要・免許制度・ルールなどを解説します。
獣害対策で話題の「罠猟」とは?
イノシシや鹿・鴨など野生鳥獣の狩猟に使える猟具は、網・装薬銃・空気銃・罠の4種類と規定されています。中でも最近とくに注目されている『罠猟』は、さらに4つの猟法にわけられます。どのような方法があるか確認してみましょう。
罠猟には4種の方法がある
罠猟で使用する罠は、使い方を誤れば周囲や他人に大きな危険を及ぼします。法律によって使用が認められている罠は、次の4種類のみです。
- くくり罠
- はこ罠
- はこおとし
- 囲い罠
『くくり罠』は強度のある紐で獲物の脚を固定する罠です。『はこ罠』や『はこおとし』は、箱に入ってきた動物を閉じ込める罠です。
『囲い罠』ははこ罠やはこおとしに類似するタイプですが、獲物を群れごと捕まえることが可能な大型の罠です。一人で設置するよりは、自治体と協力して仕掛けることが多いようです。
これら以外の道具や方法もありますが、危険猟法や禁止猟法とされている場合が少なくありません。例えば罠として思い浮かべがちな『トラバサミ』は、過去には許可されていたものの、危険性が高いことから、現在は禁止猟法に指定されています。
獣害対策のほか、ジビエ料理にも注目
農作物や森林を獣害から守るために行われることが多い罠猟ですが、最近では捕獲した鳥獣を使ったジビエ料理も注目を集めています。
『ジビエ』とは、食材として狩猟した野生動物を指すフランス語です。食肉用に飼育される牛や豚・ニワトリとは違い、ジビエ料理に使われる鳥獣は肉が引き締まって脂肪分が少なく、独特の風味と力強さを持っています。
最近ではその味わいの奥深さや栄養価の高さから注目を集めていますが、衛生管理には細心の注意が必要です。
自分で仕留めた獲物でジビエ料理を作りたいと考えている人は、厚生労働省の『野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)』改正版に目を通しておきましょう。
参考:「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」の一部改正について|厚生労働省
罠猟には免許が必要
猟にはさまざまな知識が必要で、場合によっては危険も伴います。そのため国の定める狩猟免許を取得する必要があります。ここでは罠猟を行なうための免許を取得する方法や、必要書類を確認しましょう。
申請に必要な書類と流れ
狩猟免許は猟法ごとに4種にわかれていて、いずれも住まいのある都道府県に申請を行ないます。
提出書類は都道府県によって異なる場合がありますが、一般的には『狩猟免許申請書』と『医師の診断書』が必要です。
これらの書類と共に、受験票に貼るための写真(縦3cm×横2.4cm)と申請手数料(免許1種類につき5200円)の収入印紙(または現金納付)を同封し、都道府県別の申請先に郵送することで申し込みが完了します。
罠猟免許試験の内容
免許を取得するには、知識試験・適性試験・技能試験という3種類の試験をクリアする必要があります。
知識試験は狩猟に必要な知識を確認するもので、制度・猟具の使い方・動物の見分け方・自然保護や管理といった、幅広い内容が出題されます。試験時間は90分、問題数は30問です。正答率7割以上で合格となります。
適性試験は視力や聴力・運動能力が問われます。罠猟の場合、両眼で0.5以上の視力があり、10mの距離で90デシベルの音が聞こえること、屈伸や挙手など、体が自由に動かせるかどうかが確認されます。
技術試験では、狩猟可能な鳥獣の判別に加え、使用可能な猟具と禁止猟具の判別を行い、さらに使用可能な猟具1種類の組み立てを行ないます。
これら全てをクリアして初めて罠猟の免許が交付されます。
罠猟の前に必要な登録と心構え
免許取得後、実際に狩猟をするためには、猟を行なう都道府県で狩猟者登録をし、狩猟税を納付する必要があります。
狩猟者登録をするためには3000万円以上の損害賠償能力が必要です。3000万円以上の資産を証明できる書類、あるいは猟友会に入会して共済保険に加入しましょう。
狩猟免許を取得し、狩猟者登録・狩猟税納付を行なえば、晴れて罠猟を行なうことができます。
猟期や猟区を守り、自然に対する敬意を払ったうえで、安全に狩りを楽しみましょう。
ルールを守って罠猟をしよう
猟で使用する猟具は使い方を間違えると人を傷つける危険性があります。そのため、狩猟を行なう際にはさまざまなルールが定められています。安全で楽しく罠猟をするため、事前にしっかり確認しましょう。
場所や期間が決められている
猟は好きな場所でいつでもできるわけではありません。狩猟可能な地域である『猟区』が定められ、猟ができる期間である『猟期』も原則11月15日から翌年2月15日まで(北海道は10月1日~翌年1月31日)と決まっています。
猟区や猟期が定められているのは、事故を防ぐためです。冬は葉や草が枯れ、見通しがよくなります。また、農林業に従事する人が減るので山林での事故が起きる危険性も少なくなります。
猟期・猟区以外での狩猟は違反行為であり、大変危険です。万が一、地元の人や登山客が罠で怪我をした場合、罠を仕掛けた人に業務上過失傷害などの重い罰則が課せられます。
猟区や猟期をしっかりと確認しておくことは、基本中の基本といえます。
狩猟可能鳥獣や捕獲数にも制限がある
日本に生息する野生動物は約700種類といわれていますが、狩猟が許されているのはその中の48種(鳥類28種・獣類20種)です。これは、狩猟対象としての価値・農作物に対する有害性・生態への影響などを考慮し、環境省が定めているものです。
また、狩猟可能な鳥獣でも、捕獲方法や捕獲頭数が制限されていることがあります。この制限は都道府県によって異なり、年によっても変わります。
たとえば静岡県では、ニホンジカを捕獲する場合、くくり罠の輪の径12cmの規制が一部緩和されています。しかし、時期によってはニホンジカを対象とした罠であっても制限されている地域があるため、注意が必要です。
また、千葉県では2017年まで1人40頭までの捕獲制限がありましたが、現在は制限が解除されています。
このように都道府県や年によって制限が異なるので、狩猟地域の制限や狩猟可能鳥獣の確認は怠らないようにしましょう。
まとめ
アウトドアやジビエブームの影響で、自然の中で生きる動物を捕獲する狩猟行為に興味を抱く人は少なくありません。免許の取得が必要でさまざまなルールもあるので、スタートするまでのハードルは高めですが、『罠猟』は猟銃を使った狩猟に比べれば難易度は低いでしょう。
まずは免許取得の流れや決まり事などに目を通し、罠猟への理解を深めましょう。免許取得の手続きは都道府県ごとに異なるので、お住まいの地域の日程をチェックして備えましょう。