カブトムシやカマキリなどの昆虫、ウグイやエビなどの水生生物、野鳥やヘビなどの小動物…。郊外の住宅地のすぐ近くにある公園や河原では、多種多様な生きものたちが暮らしています。
そんな身近な生きものの世界を、横浜市泉区・戸塚区を拠点に生態調査や里山保全活動を行なっている“ご近所生きもの観察案内人”の相川健志さんがご紹介します。今回は、国蝶オオムラサキについて調べました!
オオムラサキってどんなチョウ?
オオムラサキは日本の国蝶です。大型のタテハチョウの仲間で、成虫はクヌギなどの樹液に集まります。
幼虫の食草はエノキ。冬場、幼虫は落葉したエノキの落ち葉の下で越冬し、春に若い芽が息吹くころ、エノキにのぼって葉を食べながら成長し、蛹を経て成虫になります。
先日、関東近郊の雑木林で行なわれた国蝶オオムラサキの越冬幼虫調査へ参加させていただきました。
エノキの根元の落ち葉を1枚1枚丁寧にめくりながら越冬幼虫を探します。オオムラサキの幼虫が1匹見つかると、その回りで数匹見つかることが多いです。環境条件の良いところに集まってくるんでしょう。起こしてしまってごめん……。
調査結果は?
この日は、たくさんのオオムラサキの幼虫を確認することができました。確認された幼虫たちは保護小屋(屋外のエノキを柵で囲った施設)に移し、成虫になったら放蝶されます。
越冬中のオオムラサキの幼虫、すごくかわいいんです。本来なら暖かくなるまで落ち葉の裏でじっとしているのですが、暖かい場所に出してしまったため起きてしまいました。ごめんね……。
ともにタテハチョウ科のオオムラサキとゴマダラチョウの幼虫は、同じ場所にいることがあります。違いは背中の突起です。オオムラサキは4対、ゴマダラチョウは3対です。
タテハチョウの仲間の幼虫はとってもキュートな顔しています。かわいすぎる!
越冬したあとの幼虫は?
越冬したオオムラサキの幼虫はエノキの葉をもりもり食べて、蛹になる準備です。小さいうちは落ち葉と同じ茶色ですが、大きくなると葉と同じ緑色になります。
他の生きものから見つかりにくくなる生きるための戦略です。
羽化間近のオオムラサキの蛹は、葉っぱとそっくり!よーく探さないと見つかりません。目を凝らすと、成虫の柄が透けて見えます。
そして、羽化したオオムラサキは羽を伸ばし、羽が乾くまで抜け殻につかまってじっとしています。そこから雑木林を飛び回り、次世代へ命をつなぎます。
オオムラサキと出会うには
オオムラサキは意外と身近なところに暮らしています。下記の条件に合うところを探してみてください。
-
食草となるエノキがある場所
-
クヌギやコナラなどの雑木林
ゆっくり身近な自然を観察しに、近所の雑木林などに足を運んでみてはいかがでしょうか?
この寒い冬場でしか見ることのできない生きものたちと出会えるかもしれません。