小さな公園で遊んだこの日は、雨が降ったりやんだりでなかなか生き物と出会えない日だった。子供達は生き物を“捕獲”することに命をかけていた日だっただけに、少々意気消沈の様子。
そんなときに見つけたのが椿の実。椿は公園の生け垣に使われる、よくある低木だ。この椿の実で面白い遊びができないだろうかと思い、僕はみんなに実を見せながら子供達に聞いた。
「ねえみんな!この実で面白い遊びできないかな?」
すると子供達は様々な遊びを提案してくれた。
「いっぱい食べる!」
「土に埋める!」
「集めておままごとする!」・・・・など
微笑ましいものから間違いなく命の危険を感じるものまで、子供達からは新しい遊び方が止めどなく出てきた。
たくさんのアイデアからはじめにチョイスされたのは「投げる」遊びだ。遊び方はシンプルで、小さなあずま屋の屋根に椿の実を投げつけ、転がり落ちて来る実をキャッチするというもの。
子供達が名付けたこの遊びの名前は「コロコロキャッチ」。遠投や先読み能力を必要とするため、簡単そうでなかなか成功しない。子供達は投げては50メートルほど走って椿の実をむしりに行き、そしてあずま屋に走って戻り、何度も挑戦をする。成功者が全体の70%程度になるまで白熱した遊びになった。
続いてはじまった遊びは「ハナクソ」という遊びだ。この遊びは、なるべく大きな椿の実をハナクソに見立てて口と鼻の間に挟み手放しで立つというもの。なんともバカらしく面白い遊びだ。こういうシンプルでわかりやすい遊びは当然のことながら盛り上がる。誰もが我先に大きな椿の実を探しに走り、そして鼻にはめていった。もちろん僕も、この楽しい遊びに本気で参戦した。
「ハナクソ」は、子供達によってより難度が高い遊びに変わる。「どちらかの鼻の穴にちゃんと実がないとハナクソにはならない」とか、「すぐに落ちたらだめ」とか、時間が経過すると共に新しいルールが追加されていった。
椿の実だけで、遊べば遊ぶほどアイデアは無限に沸いてきた。野生児達が持つ遊びの力。ゼロから遊びをつくる能力は、きっと将来武器になるだろうな。
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長谷部雅一
アウトドアプロデューサー。
アウトドアイベントの企画・運営を手がける「Be-Nature School」スタッフ。人と自然をつなぐインタープリターとしても活躍中。
著作に『ネイチャーエデュケーション』1300円+税 みくに出版