一斗缶スモーカーなら冷燻・温燻・熱燻が 思いのままに!
「一斗缶は自作スモーカーの王道の素材ですが〝管〟を追加すると燻製の幅が広がります!」
そう話すのは、あらゆる保存食を自分でつくる発酵クリエイターの宮原悠さん。常温保存できる食品のひとつとして、燻製づくりにも取り組んでいる。
「燻製は燃焼を伴うのでどうしても熱が生まれます。食材を加熱する温燻と熱燻ならよいですが、25度C以下で燻す冷燻では熱が邪魔。そこで私は煙から熱を除く放熱管を加えています」
宮原さんのスモーカーは分離式。熱伝導性の高いアルミ管で燃焼室と燻煙室をつなぎ、管を通る間に冷えた煙で食材を燻す。
「食材が熱で変性しないのが冷燻の利点。長く燻した食材は長期保存ができ、生で食べたいものは香りだけを付けられます」
手軽な冷燻の見本に披露してくれたのは「スモーク刺身」。なんと、刺身を燻製に!?
「冷たい煙で燻せば刺身の鮮度が損なわれません。市販の刺身の盛り合わせでも、煙をかけるとまるで印象が変わりますよ」
そういうと宮原さんは下の缶に火の点いたスモークウッドを設置。ほどなくして上の缶に届いた煙に触れてみると、なるほど、本当に熱くない!
「15分ほど待てばスモーク刺身のでき上がり。気温の低い冬場は冷燻を楽しむベストシーズンです。ぜひ、皆さんも挑戦を!」
作ろうぜ! 一斗缶スモーカー
材料
一斗缶…3個
一斗缶のフタ…3個
アルミダクト(100φ×1m)…1個
アルミ皿…1個
鋼線(2φ×25㎝)…4本
蝶ネジ…8個
ボルト…8本
木ネジ…2本
ステンレスプレート…2枚
木の枝の輪切り…2個
熱を除く放熱管が決め手!
1 缶を切り開く
2つの一斗缶の側面を金切りばさみで開いて窓を作る。缶のひとつは底も開く。残った缶から窓をふさぐ扉パーツを2枚切り出す。
2 管を連結する
一斗缶のフタ2つにアルミダクトの外径を写しとり、マーカーの内側を花びら状に切り開く。ダクトを挿入したら針金等で固定する。
3 台座を作る
冷燻フォーメーションでは「熱は上りにくいが煙は送られる」程度の高低差が必要。アルミダクトを無理なく横引きできる台座を作る。
温燻・熱燻は直結フォーメーション
上下に直結すれば温燻・熱燻もできる。上の缶には食材を並べ、下の缶には燻煙材と汁受け(アルミ皿)を入れる。温燻・熱燻の場合は、底にウッドチップをまき、下からコンロで加熱する。
扉の取っ手には枝の輪切りを使用。裏側から金属プレートごと木ネジで固定し、可動式のロックにする。
上下に直結するときは、2つの缶の四隅に開けておいた穴にボルトを通して蝶ネジで締め付ける。
上の缶は窓の下部に2つのツメを作り、そこに扉を掛ける。下の缶はフタとの隙間に扉を挿し込む。
脱水シート&風乾で下ごしらえ
旨みを残しつつ水を抜く脱水シートで刺身を2時間ほど包み、その後軽く風に当てて表面の水気を飛ばす。今回はハーブをまぶした刺身とプレーンな刺身の2バージョンを用意。「ハーブをまぶすと洋風に。白ワインに合いますよ!」
冷たい煙で食材に火を入れずに燻す
熱くな〜い!
気温18度Cのこの日、冷燻フォーメーションの煙の温度は20度C! 「煙の温度を低くするコツは、放熱量の小さい燻煙材を使い、ダクトで効果的に放熱すること。モグサのような燃え方をするスモークウッドは、煙が多いわりに熱はそれほど出ないので冷燻向き。スモークチップは温燻・熱燻に向いていますね」
風味絶佳。
日本酒もってこ〜い!
左がハーブあり、右がプレーン。それぞれ右上から時計回りにマグロの赤身、中トロ、スミイカ、スズキ、サーモン、マダイ。「どれも美味しいけれど出色はスミイカ。薫香をまとったイカが日本酒を呼びます!」
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2022年2月号より)