人気のない場所でひとりを楽しむ
ナレーションも説明も一切なし。動画の主がソロキャンをする姿が穏やかな音楽とともに流れるのみ。何か特別なことが起きるわけでもなく、ただただゆっくりとキャンプの時間が流れていく。その世界をなぜだか、ボーッと眺めてしまう。独特な世界観で人気が急上昇中のYouTubeチャンネルが「outdoor_life 23」だ。
「最初はただ外でコーヒーを飲むとか、そういうところからアウトドアを始めました。学生のころからBBQはしていたから、その延長線でやってみようかと思いました」
どっぷりキャンプにハマったのは、スノーピークのテントを買ってから。
「スノーピークのテントはInstagramでいろんなキャンパーを見て、直感で買いました。グループキャンプをするつもりで買ったから、少し大きいんですけど、今でも気に入って使っています」
グループで何度かキャンプに行き始めると、どんどん「キャンプに行きたい欲」が高まっていった。その中で友達と予定が合わないのであればひとりでも行こうと思ったのが、ソロキャンの始まり。それ以来、どっぷりソロキャンにハマっている。
「さみしいかと思ったんですが、想像よりひとりの時間が充実できることが楽しくて。グループでワイワイするのも楽しいのですが、ソロだと純粋に”キャンプ”を楽しめる。その魅力にどんどん取り憑かれていった感じですね」
ソロキャンで行くときのこだわりは、とにかく人がいない場所を選ぶこと。
「キャンプの良さって景色のいい場所でボーッとすることじゃないですか。その気持ちよさを動画でも伝えたいと思って編集しています。だからキャンプ場はかなり吟味していて、第一条件は景色の良さ。あとはあまりメジャーなところには行きません。人気を感じさせず、完全にひとりというのもソロキャンの魅力なので、人工物がない場所というのも大事にしています」
2021年は「キャンプドラマ」という新しい切り口での配信も始めている。
「去年の春頃、コロナ禍でモヤモヤしていたんです。自分はYouTubeを通して発信ができる立場にいるので、キャンプ動画というより少しメッセージ性のあるような内面的なところが出る動画を作ってみました。自分が出るよりも、より客観視して見てもらえるかと思って、同じくキャンプを題材にしたことをSNSで配信している方に声をかけさせていただいて出演いただいています。コメント欄などを見ていると、いろんな方に共感いただけたのがすごいうれしいですね」
キャンプに行く理由やひとりで過ごす夜に思うことなどに、共感の声が多数寄せられ、登録者数も急増。キャンプ動画の世界に新しい風を吹かせている。
キャンプに行きたいと思わせる動画を作りたい
冒頭でも紹介したように、outdoor_life 23さんの動画ではナレーションなどは一切ない。出てくる道具の説明もとくにされない。しかし、その使い心地や良さは動画からしっかりと伝わってくる。それも「狙い」なんだそう。
「動画では僕のキャンプのすべてを見せています。口頭で説明するより、実際に使っているシーンをたくさん入れれば、使い心地がわかりますよね。僕の動画を見て、選択肢の幅が増えたらいいと思っていて。『このスタイルなら真似できるかも』と思ってもらえる動画を目指しています。最近はもっと自分のありのままを見せたいと思って失敗も動画内に入れ始めました」
道具はひとつで多様に使えるものを選ぶのがこだわり。それもまた、動画を見ているとどう使われているのかがわかるので、おもしろい。それらの道具情報は直接お店に出向いて仕入れている。
「店員さんに質問したり、あとはネットですね。実は道具はそんなに持っていなくて、もしかしたらちょっと少ないぐらいだと思います。コレクションしていく考えはないので、あまり高いもので大事に使いすぎるものってキャンプに向かないと思っていて、もし壊れたとしても代えがきいて、また買い直せるものがいいと思っています。あくまで道具は、キャンプを充実するためのツールですからね」
また、2021年はオリジナルブランドもスタート。販売されたテーブルは即完すするという人気ぶりだ。
「まずはテーブルだけなんですが、自分でデザインから工場選びまでして製作したものです。木工職人の方に作っていただいているので、品質には自信があります。2022年は、どんどん新作を販売する予定です!」
outdoor_life23
ソロキャン動画を中心に道具レビューなども配信。2021年以降、急激に人気が高まり登録者数は13万人以上(2022年2月現在)。
構成・文=中山夏美