保育園の子供達と里山を走り回っていたら、大きな柿の木が目の前に現れた。木にはオレンジ色に輝くたくさんの実がぶら下がっているではないか!でも実までの高さは地面から2メートル以上の位置で、幼児ではそう簡単には採れない高さだ。
その柿を見た子供達は、一瞬で「採って食べる」というチョイスをした。みんなの目はハンターさながらの落ち着きを保った鋭さを持ちつつも、その奥にはいたずら心を宿しはじめている。この素晴らしい気持ちに乗らないわけにはいかない。さっそく柿捕獲作戦が始まった。
挑戦したのは年長と年中の子供達。まずは柿の木に登って上から実を採ろうと試みる“クライム作戦”に取りかかった。しかし何人か挑戦したものの、樹形の問題で登ることを断念。目の前に突然現れた“柿が採れない”という大きな壁が子供達の目の前に立ちはだかってしまった…。
全体の雰囲気が一気に下がり気味になった時、ひとりの男の子がその壁を破ってくれた。近くの台からジャンプをして手で捕獲を試みる“ジャンプ作戦”を開発したのだ。「もしかしたら自分なら届くんじゃないか?」という思いから全員が何度か試みるも、この作戦もうまくいかず…。
柿盗み作戦は、子供達のアイデアが積み重なり、枝を使って柿を採るという“枝作戦”というアイデアでまとまった。しかしながら周囲には短い枝しかなく、地面からそのまま枝を使って落とすことは出来なかった。
そこで彼らが思いついたのは、“ジャンプ&枝”の合わせ技。台の上から枝を持ってジャンプをして柿をたたき落とすという高度な技だ。
「○○ちゃん頑張って!」
「あ〜あ。届いたのにぃ」
「みんなちゃんと並んで、順番を守って!!」
白熱の柿盗み作戦は、とうとうクライマックスを迎えた。ひとりの女の子がとうとう柿をたたき落としたのだ。みんなが何度もたたいて少しつぶれた柿ひとつ。だいぶ痛んでしまったけど、子供達の輝かしい成果だ。
トライ&エラーを繰り返してやっと手に入れた柿を半分に割りみんなでかじり合う姿は、石器時代にマンモスを倒したかのようなたくましい姿と、甘い柿をかじって幸せそうな顔が入り交じっていた。
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長谷部雅一
アウトドアプロデューサー。
アウトドアイベントの企画・運営を手がける「Be-Nature School」スタッフ。人と自然をつなぐインタープリターとしても活躍中。
著作に『ネイチャーエデュケーション』1300円+税 みくに出版