「キノコ採りのとき山へ持っていく道具? そんなにはねえぞ。剣鉈だろ。ザックだろ。おっと、大事なのがあった。鎌だよ。杖代わりだからあんまり意識したことなかったけど、考えてみりゃ、キノコ採りではいちばんよく使うな」
自然ガイド・高柳盛芳さん。1954年、群馬県みなかみ町生まれ。奥利根地域の釣り、クマ撃ち、山菜・キノコ採りに精通した日本のマウンテンマン。
と、奥利根の番長、モリさんこと高柳盛芳さんが車から取り出したのは、柄の長い小鎌だった。
近在の老刀鍛冶に剣鉈を頼んだとき、一緒に鍛えてもらったものだ。使っているハガネは玉鋼。日本刀に使われている伝統的な炭素鋼だ。なりこそ小さいが、鎌の峰はしっかり厚く、肌には荒々しい鎚目が残っている。
藤原国武五代壽宗作。刃長8㎝の片刃鎌。「ハガネは裏(接地面)に付いているんだが、微妙に反りが入れてあって、使いやすいんだよ。ああ、余計なものを引っ掛けないようにしてあるんだ。鍛冶屋の知恵っていうのはすごいなと思ったね」