新型コロナウイルス感染症の流行で、オフィスに出社せずに働くリモートワーク・テレワークが大いに注目されました。
通勤にかかっていた時間の有効活用や、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方として歓迎されましたが、同時に「自宅で仕事に集中する難しさ」も認識されつつあるように思います。
私はライターなので、パソコンさえあれば、まさに場所を選ばず仕事ができる職業。キャンピングカーは、テレワークの場所として有用でしょうか?
自宅の駐車場など身近な場所でテレワークを行なう場合と、旅先でテレワークを行なう場合、シチュエーション別に見ていきましょう。
自宅で行なうテレワーク
日本人の働き方に変革をもたらした在宅テレワークですが、孤立感が精神面に与える影響や、限られたスペースで家族全員が過ごす窮屈さ、仕事時間の区切りにくさなど課題も指摘されています。
日本の住宅デザインは、日中に家人が在宅することを想定していないとも言われます。しかし急に間取りを変えたり、防音室を生み出すことは困難です。
そんなとき、キャンピングカーでのテレワークはかなりの利便性があると言えます。使わないときには車両から切り離して定置しておけるキャンピングトレーラーは、さらにテレワークに向いているかもしれません。
メリットは「もうひとつの個室」として使えること
家族と同居している人にとってのメリットは、なんと言っても「もうひとつの個室」として簡単に書斎が誕生することです。
電話やインターフォンに作業が中断されることもなく、生活音も届きません。ドアや窓をぴったり閉じた車には、外部の音をある程度ブロックする効果もあります。私もオンライン会議時に重宝しています。
自宅なら給電も容易なので、サブバッテリーの残量を心配する必要もありません。軽食や嗜好品を持ち込むことも簡単ですし、疲れたら車内のベッドで横になれます。
自宅の延長線上で使えるので、慣れるとかなりの集中力を発揮できるのではないでしょうか。自分だけの小さなオフィスと呼んでもいいかもしれません。
また、一人暮らしのビジネスパーソンにとっての在宅ワークは、ときに閉塞感を強める孤独な時間になるでしょう。
そんなときに作業場所を選べたり、近所であっても少し車を動かして窓に映る風景を変えられることは、大きな気分転換になると思います。
在宅ワークでモチベーションを保つコツは、自宅であっても定刻に着替えをするなど、生活にメリハリをつけることだと言われます。車までのわずかな距離でも「出勤」の形を作れることには、心理的な効果もありそうです。
デメリットはある?
デメリットというほどではないですが、住宅密集地の場合、周囲への気遣いは必要かもしれません。
たとえば代表的な暖房器具であるFFヒーターは、車の近くに寄るとブーンというような燃焼音が聞こえます。私の車には搭載していないのですが、エアコンの室外機などもある程度の音がするのではないでしょうか。夜間にはドアの開閉音や、車の各種アラームも気になるものです。
地域の雰囲気や、隣家との距離にもよると思いますが、頻繁に車を出入りするのなら駐車位置や向きなどに配慮する必要があるかもしれません。
窮屈な姿勢のままにならず適度に身体を動かすことや、換気に気をつけることなどは通常のキャンピングカーの使用時と同じです。
旅先で行なうテレワーク
では、旅先でのテレワークの実態はどうでしょうか。コロナ禍よりも前から、リゾート地などで休暇を楽しみながら働く「ワーケーション」というスタイルが注目されていました。
長旅のときに私が実践している、旅先に滞在しながら原稿を書くというスタイルは、ワーケーションに近いかもしれません。私の考えるメリット、デメリットは以下のとおりです。
メリットは「限りある時間を有効に使える」こと
旅先で仕事ができる最大のメリット、それは「時間を有効に使える」ことです。普通なら仕事の休みに合わせて行き先を決めるべきものが、「旅に仕事を合わせる」という真逆のプランニングができます。
桜や紅葉の季節、年に一度の祭事、すいている平日など、その土地にもっとも適した時期に出かけ、仕事は行く先々で行なう。
「見られるもの」「体験できるもの」が何倍にも広がります。限りある人生、あとどれくらいの場所を訪ねられるか、と考えたときに旅を優先できることは無上の喜びです。
人によっては、旅先での刺激が仕事に好影響を与えることもあるでしょう。自宅よりも意欲的に働ける、という人もいるかもしれません。
では、デメリットはあるでしょうか。実は……私の場合は「結構ある」のです。
デメリットは「仕事モードへの切替が難しい」こと
パソコンから視線を上げると、眼前に広がる海や空や山々。すっきりと頭が冴え渡り、新しいアイデアもどんどん浮かんで仕事がはかどりそうなイメージですが……
実際にはきれいな景色、珍しい景色を前にして、心が求めるのは仕事ではなくリフレッシュやリラクゼーション。旅に出ているあいだは気分も浮き立ち、心が非日常の状態です。私にとっては「仕事モード」のスイッチを入れるのがとても難しいのです。
実際、上手く仕事が回るようになるのは旅に出て2週間、3週間と経ってから。2日観光したら1日は仕事、というような自分なりのリズムができてからです。雨の日は仕事、と最初から決めてしまうこともあります。
ワーケーションでは「遊び」と「仕事」というベクトルの異なる活動を同時に実行しなければなりません。1週間程度の短期の滞在では切替が難しく、どちらも中途半端になってしまうというのが私の実感です。
逆にワーケーションに向いているのは気持ちのオンオフが上手な人、仕事を短時間のブロックに分割できる人、と言えると思います。
どんな場所でもパソコンを開くだけで仕事モードに入れる人なら、キャンピングカーとの相性は抜群です。
実際にテレワークをするには
いずれにしても、快適なテレワークには通信環境が重要です。ライターに限らず、連絡、会議、資料のやりとり、職種によっては複数人での共同作業までオンラインで行なう業務は幅広くあります。
旅先の場合、スマートフォンでデータ通信をする、Wi-Fiを利用できる車中泊地に滞在する、モバイルルーターを持参する、などの方法があるでしょう。
ただしこれらの方法は、有線LANに比べると大容量の通信には向きません。短時間に決められたデータ容量を超えて利用した場合に速度制限がかかる事業者も多くあります。
私もたまにオンライン会議をする程度ならばスマートフォンのモバイルデータ通信で十分だったのですが、写真のアップロードを行ないたいときなどは少々困りました。
ファミリーレストランやファストフード店で提供されるWi-Fiを使ったこともありますが、接続や速度が不安定なケースも多々あります。
試行錯誤の末、私は数日に一度インターネットカフェに出向いて高速通信網を使う、といった方法に落ち着きました。
自宅の庭や駐車場などでのテレワークでは、作業内容に応じて自宅に戻ることが可能ですし、自宅のWi-Fiが届く場合もあるため問題にならないでしょう。
※電波法により、自宅敷地内であっても屋外では使用不可の周波数があります。関係法令をご確認ください。
結論、キャンピングカーはテレワークにも有用
どんな車が向いているか、どんな装備が必要か、という点については職種によって異なります。
私のようなパソコン1台でできる仕事の場合は特別な装備は必要ありません。ちょっとしたデスク、パソコンを充電できる電源、最低限の室内照明など、キャンピングカーの標準装備で十分です。
もし資料をたくさん広げるような職種なら広いテーブル、「顧客と商談する」といった職種なら対座ダイニングが望ましいですね。
フラットなデスクなど、ビジネスユースを意識したデザインのキャンピングカーも見かけるようになりました。キャンピングカーで仕事をするというスタイル、今後ますます定着していくのではないかと思います。