オフグリッド生活を続けて10年になるシンガーソングライターの東田トモヒロさん。レコーディングも太陽のチカラを借りているそうです。東田家のソーラー発電システムも大公開ですよ!
自家発電を初めて10年が経ちました
光陰矢のごとしとは申しますが、東日本大震災から早いもので11年以上の月日が流れました。未だ復興道半ばで、日々奮闘されておられる皆々様には、この場をかりてお見舞い申し上げると共に、ささやかですが心からの声援を送らせていただきます。
さて日本では、本当にあの震災によって様々なことが変わったように感じます。ライフスタイルに何か変化がもたらされたと言う方も、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
何を隠そう実はね、かく言う僕もその一人なのですけれど。僕が10年前に真っ先に取り組んだのが、電気電力の一部自給というやつです、なんと。
この実践に踏み切ったのは、原子力発電所の事故がきっかけというわけではなく、前々から「オフグリッド」というスタイルに幾ばくかの憧れなるものを抱いていたからに他なりません。
都会暮らしの最先端は僕にはとてもじゃないけれどできませんが、田舎暮らしの最先端なら近づけそうな気がしてね、始めたかったのですよ、若い頃から何と無く。
さらに言うなら、こんなことやってみたいなーなんて悠長に構えていたことなんかも、震災を機に、もうこれ今すぐやるべきでしょって具合にスイッチがね、2011年春に入っちゃったんです。
実はその意識みたいなものは、いまも継続しておりましてね。どっかの予備校の先生のセリフじゃないのですが、「今でしょ」的な、決断即実行のライン取りという日々の最中にあります。しかもその感覚は年を追うごとに増している様な気さえします。なんせ生まれた時よりも確実に死期が近づいておりますからね、後悔しないように、自分の心に正直に、正しい行ないをとことんやって行きたいみたいなね、想いでいるのです。
自分で電気を作ると自由になるんです
ところで原発事故の後、日本国中ありとあらゆる場面で原発反対運動が起こりましたね。それに参加した、しなかった、という話は置いといて、例えば昼間、熱心にデモに加わったとしましょう。しかしその晩、うちに帰って電力会社から供給される電気をポッちっと押してちゃ、それ賛成してるようなもんじゃんっていう、矛盾のようなものも感じてしまいますよね、多分。
賛成反対云々する前に、まずは自前で電気作ってみると。それによって、電気というものからある意味自由になりたいという着想の元に、僕は自家発電を始めてみたのでした。国や一部上場の企業などといった大きな力に何もかも依存してばかりじゃ、なんかこう生きている実感が乏しく感じられるというかね。激アツなことを述べておりますが、落語家で言うならば笑点のステージだけじゃなくて、ちゃんと地道な寄席の現場でのパフォーマンスもこなしていたい的なそんな感じでしょうか、たとえになっていない様な気もしますが。
我が家の電力システムはこんな感じです
多少話が脱線しましたが、自家発電に戻します。
さて我が家のそのシステムは、いわゆる太陽光を利用したソーラーパネルによる発電で展開しております、はい。ソーラーと言いましても、あのよく新築の家々の屋根に整然と並べられているような売電のスタイルではなく、うちのはひたすら蓄電して自家で消費しています。発生した電気を売り物にはしません。
蓄電しているのは、車のバッテリーなどとは異なる、密閉型ディープサイクルと呼ばれる類のバッテリー。ゴルフ場を走るカートや電動のフォークリフトなんかに使用されているやつです。
ソーラーパネルを屋根に4枚、地べたに2枚の計6枚。それからご説明したバッテリー(1台30kg)が4台。
そしてね、これ設置するまで知らなかったのですが、道具ってそれだけじゃダメなんですね。加えて、インバーター、そして充電コントローラーなる物が必要になります。インバーターってのは流石に聞いたことのあるものでした。ソーラーパネルで発生した直流の電気を、交流に変換して家庭用の電化製品が使えるようにしてくれる優れもの。台湾製の物が上等ということだったので、うちではそれを使っています。1500wというなかなかのパワーに対応できるやつなので、割といい値段しましたね。
そして充電コントローラーですが、こいつはアメリカ製の「Blue Sky」なる洒落たネーミングの物を使っています。
話によるとアメリカでは、僻地でオフグリッドライフに専念する人々が一定数いるそうで、それ故この手の機材が発達したそうです。あの広大な土地、送電線が整備されていないエリアもかなり存在するでしょうからね。1970年代におけるヒッピームーブメントも、オフグリッド的スタイルの確立に一役買っているのかもしれません。合衆国の都会を離れて、人里離れた田舎でティピやタイニーハウスなどを建てて自由な生き方を体現する人々。うーん目に浮かびます。僕も嫌いではないので。
充電コントローラーはバッテリーからの逆流を防いだり、電流の溢れなどを防いだりしてくれます。渋い調整役なので一見すると地味ですが、なくてはならない存在です。ジャイアンツで言うところの川相的な立ち位置ですねまさに、いぶし銀の内野手。
先に挙げたラインナップで構成されたエネルギーは、我が家において二つの部屋の電力を賄っています。一つはキッチン、それからもう一つはスタジオです。キッチンでは照明だけでなく冷蔵庫もこれによって稼働しています。ちなみに冷蔵庫って、日本製の新しいものほど省エネ機能が充実しているようです。それから冷凍室をビタビタにいっぱいにして、野菜室や冷蔵室はなるべくスペースを保つというのも省エネのコツだとか。
ある友人との出会いで生まれた我が家の電力システム
セルフ電力は、スタジオにおいて照明はもとよりアンプ、スピーカー、パソコンおよび周辺機器と録音機材、楽器など多岐に渡って大活躍してくれています。
自前の電気でレコーディングするなんて、シンプルにスッゲー気分いいものです。大工の修行を長年やってきて、ようやく親方からカンナを譲り受けた時の喜びとでもいうべきでしょうか、いつの時代の話ですかって。
とはいっても三日以上雨天が続くとさすがにバッテリーに負荷がかかるので、時には商用電力に切り替えたりと、工夫して使い分けています。機材の作りはそれぞれとてもシンプルなので、基本的には故障も少なく絶好調。劣化により10年目にバッテリーとインバーターを総取っ替えしましたが、それ以外はほとんどトラブルなく運用できています。
実は、このシステムを設置する際にお世話になったのが、ライブツアーで出会ったサーファーの友人K氏でした。K氏は東日本大震災以前からオフグリッドと自給的生活を実践していらっしゃった。しかも彼はなんと東京電力の元社員なのです。
原子力発電所の管理の仕事をなさっていた彼ですが、色々と思うところあったようで、退職後セルフビルド発電の道を進まれたというね、筋金入りの電力通。電力業界の最先端にいた彼が、次に選んだ最先端が、オフグリッドだったっていうね、不思議なというか、ある意味腑に落ちる話でもあります。
そんな彼が、他者の家庭にオフグリッド電力システムを設置するというのは、我が家がなんと記念すべき一例目だったのです。
運命的な出会いによってもたらされた我がオフグリッド電力ですが、実感できるメリットはというと、経済的な効果よりも、精神的なところが大きいような気がします。
売電しているわけではないので、利益にはつながりませんし、機材も決して安いものではありませんのでね。
僕の場合、一部でも電気を自前で賄えているというちょっとした「自立感」、なんかあった時に備えられている「安心感」、そしてやはり楽器や機材がそれによって動かせているという「ウットリ感」、この辺りの「感」的要素がメリットかと思います。
太陽の光によって蓄えられた電気。それによって機材を動かしてのレコーディングや撮影。音の粒子がまるで光のように感じられる、なんていうと大げさですが、気分はそんな感じですよ。なんかこうギターを持っていてもね、フォースによって光るライトセーバーですみたいなね、そんな心地になるんです一瞬。
一般的に電力会社から供給される電気って、エネルギーロスがかなり起こるらしいのです。熱エネルギーによってタービンを回転させ、電気を生み出す際に起こるロスやら、獲得した電気を遠方の各家庭などなどに送電する間に発生するロスなどね。
我が自家発電の場合は、それがほとんどないと考えていいらしいので、ロスがないよっていう点においてもお勧めできます。
それから10年前と今とでは比べ物にならないくらい機材も発達し、価格も抑えられているようです。僕のような大掛かりなものでなく、コンパクトなやつもたくさん出回っています。
例えばマルシェなどの出店者でも、折りたたみ式の太陽光パネルと、持ち運びもできちゃうポータブルのバッテリーなんかを使って照明をとったり、コーヒーミルを回してらっしゃる方も見受けられますし、キャンプなんかでも使ってるよーって方も増えましたよね、持ち運びできるソーラーパネルとバッテリー。しかも、ちょっとおしゃれだったりする。バッテリーの耐久性が最も重要なところだと思いますので、そのあたりをよくお調べになった上で購入されると良いかと思います。
まさに日進月歩のセルフ電力、緊急事態の備えにもありだと思いますのでぜひトライしてみてください。
今月のおすすめアウトドアミュージック
Hovvdy「TRUE LOVE」
ミュージックビデオとかすっげーダサいけど、そこががかっこいいですよ。演奏も下手だし、それが逆にイケてる。
東田トモヒロNEWS
シンガーソングライター東田トモヒロとつくる、持続可能な音楽のコミュニティです。
月額制のサブスクリプションで、独自の配信ライブや、インターネットラジオ配信等いくつかのオリジナルコンテンツを用意して、みなさんとコミュニケーションを図っています。ぜひご参加ください。