そもそも8ナンバーとは?
2022年4月1日、「キャンピング車」として登録できる車の構造要件が変更されました。
キャンピングカーをはじめとする特別な構造をもった自動車は「特種用途自動車」と呼ばれ、8から始まる分類番号が付されます。実は救急車や消防車、霊柩車などの仲間なんですよ。
キャンピングカーの場合、ナンバーはあくまで制度上の区分であって、車の使い勝手に影響するわけではありません。
たとえば、暮らせるくらい充実した装備なのに非8ナンバー車もあれば、外からは普通車にしか見えない8ナンバー車もあります。8ナンバーだからキャンピングカーとして上位にあたるとか、高性能だといったことは、まったくありません。
けれど、8ナンバーはしばしば車検や税金など管理上のメリットがあるために、定期的に「ナンバーどうするか問題」が話題に上がるのです。
かつてキャンプを目的としないのに節税効果だけを狙った「形だけキャンピングカー」が横行し、要件が厳格化されたともいわれています。
厳格化後は簡単には8ナンバー登録できなくなり、貨物自動車として4ナンバー登録するキャンピングカーも多くあります。荷物を積むスペースに、各自が就寝設備や電源設備を自由にのせているといったイメージですね。
- 1ナンバー 普通貨物自動車(例:トラックや大型バンなどの貨物車)
- 3ナンバー 普通乗用自動車(例:セダンやワゴンなどいわゆる普通の乗用車)
- 4ナンバー 小型貨物自動車(例:軽トラックや商用バンなど小型の貨物車)
- 5ナンバー 小型乗用自動車(例:コンパクトカーやコンパクトミニバンなど小型の乗用車)
- 8ナンバー 特種用途自動車(例:キャンピングカーなど特別な要件を満たした車)
これまでの構造要件
8ナンバー登録をするためには、いくつかクリアしなければならない要件があります。ざっくり言うと、決められた人数が寝られるフラットなベッドがあること、水道設備があること、炊事設備があることです。
炊事設備とはガスコンロなど調理ができる熱源のことですが、常設でなくてもOK。たとえばポータブルのカセットコンロでも大丈夫です。
ただし、大事なポイントがあります。
これまでは調理場所の床面から天井まで1,600mmの高さが必要でした。身長が160cm以下の人なら立って調理できるくらいの空間、ということになります。
この「車内で立てる」ということを条件にすると、ベース車にかなりの制限が生じることがおわかりと思います。
ほとんどの乗用車はアウト。人気のトヨタ・ハイエースの場合、スーパーロングタイプのハイルーフでようやく満たせるかなという数値です。
そこでビルダー各社は工夫を凝らし、いくつかの解決策を見いだしました。
ひとつは必要なときだけ天井が持ち上がり、テント生地の空間が生まれるポップアップルーフ。
就寝場所としても使え、秘密基地のようでワクワクする装備ではありますが、ボディ加工による価格アップや、悪天候時には使えないなどのデメリットもありました。また、目立つ装備であるため仮眠時には使いにくいという声もあります。
もうひとつの解決策は、逆に床下を掘り下げること。普段は収納として使い、必要なときだけ人が立つ空間にするというものです。
こちらもボディ加工が必要なことに変わりはなく、またギャレー(キッチン)のレイアウトが固定されてしまう難点があります。
標準ルーフ車での8ナンバー登録を実現する素晴らしいアイディアですが、実用面では使いやすいとは言いにくい装備でもあります。
改正のポイントは室内高
ところが、今回の改正では「室内高」に大きな変更が加わりました。
「調理台等を利用するための床面から上方には有効高さ1,600mm(調理台等の上面が、これを利用するための床面から上方に850mm以下の場合にあっては1,200mm)以上の空間を有していること」
引用元:国土交通省
調理台が低いタイプなら、床面からの天井までの高さが1,200mmでよい、ということになったのです。ロースタイルのキャンプのように、座って調理をする想定ですね。
もちろん、ほかにも周囲の備品が十分な耐熱性・耐火性を有することや、窓・換気扇で換気が行なえることなど、細かな安全基準はあります。
けれど、もっともクリアが難しかった基準が大幅に緩和された、と言えるのです。これまで8ナンバー登録ができなかった小型・中型の車両も、今後はベース車の選択肢に加わっていくでしょう。
もうひとつのポイントは就寝定員
もうひとつの改正点は、就寝定員です。キャンピングカーは車内で就寝できることが最大の特徴なので、必要な就寝定員やベッド面積が決められています。新しい就寝定員の要件は以下のとおりです。
「乗車定員の3分の1以上(端数は切り捨てることとし、乗車定員2人以下の自動車にあっては1人以上)の大人用就寝設備を有すること」
引用元:国土交通省
端数が切り捨てになったことや、「就寝定員1名」が認められたことにより、これまでよりも少ないベッド面積で8ナンバー登録ができることになりました。
ベッドが狭くなって寝心地が悪化しては本末転倒ですが、シングルユースなのに2名分の就寝スペースがないと8ナンバー車として認められない、といったミスマッチをなくせます。
また、よりコンパクトなベース車をセレクトできるようになり、ユーザーの選択の幅が広がるでしょう。車両サイズは購入費用に跳ね返るので、これまで以上にリーズナブルなニューモデルが出てくるのではと期待されています。
つまり今回の改正は、コンパクトバンコンや軽キャンパーといった、取り回しのいい小型・中型キャンピングカーを求めるユーザーに朗報ということになります。
すべてのケースで8ナンバーがいいわけではない
基本的には要件緩和は歓迎されるべきニュースです。
ただし、同じ排気量の車を比べたとき、すべてのケースで8ナンバーが経済的に有利というわけではありません。軽自動車か普通自動車か、など比較対象によって損得が異なります。
たとえば新車の普通乗用車なら初回の車検が3年後なのに対して、8ナンバーは新車でも2年後です。自賠責保険の金額が普通車より高かったり、8ナンバー車の加入を認めていない任意保険が多いために保険料が割高になることもあります。
また、8ナンバーにすることで構造要件を遵守しなければならず、自分には必要ない水道設備や炊事設備を形だけ搭載するとなっては元も子もありません。8ナンバーにこだわらない方が、自由にレイアウトできるという側面もあります。
一方で、横向きベンチシートは8ナンバーにしか認められなかったり、1・4ナンバーよりも車検が少なくていいといった、8ナンバーだけのアドバンテージもあります。
確実に言えるのは「かつてのような8ナンバーの圧倒的な優位性はない」という点だろうと思います。トータルで考えたときの維持費には大差ないかもしれません。
以前4ナンバーに乗っていて毎年の車検が憂うつだった私としては、車検が2年に1度になっただけでも8ナンバーにメリットを感じます。個々のケースに合わせて、取得ナンバーを検討してみてください。