いろいろなアイテムがありすぎて悩み多い「ポタ電」の世界
キャンプや車中泊、防災などで話題になることの多いポータブル電源。搭載される電池はリチウムイオン電池と呼ばれるもので、鉛の電池と比べると軽量・ハイパワーなのが一番の特徴です。
また、本体にはインバータと呼ばれる装置が内蔵されていて、電池の直流電圧(DC12V)を交流電圧(AC100V)に変換することで家庭用コンセントを通して稼働する家電製品が使用できるようになっています。
ポータブル電源の選び方
ポータブル電源は、USBやDC12V端子を備えているのはもちろん、モバイルバッテリーとは異なりインバータを搭載し、AC100Vの製品が使えるようになっています。そんな基本中の基本を押さえたところで、どうやって製品を選んだらよいのか見ていきましょう。
使いたい家電製品の消費電力を足し算する
まずは、キャンプや車中泊といった場所でポータブル電源を使って動かしたい家電製品(AC100V)をリストアップしてみましょう。冷蔵庫・家庭用エアコン・電子レンジなど使いたいものをリストアップしたら、それらの消費電力の合計を足してみます。
例:冷蔵庫(40W)+家庭用エアコン(600W)+電子レンジ(1000W)=1640W
合計値の1.2倍から1.5倍の出力ポータブル電源を選ぶ
家電製品の消費電力の合計値よりも、ポータブル電源のAC定格出力が1.2〜1.5倍ほど多い製品を選ぶというのが定番の選び方です。上記の例なら、定格出力が2000W〜2500Wあたりのモデルとなります。ただ、家電製品を同時に使わないのであれば、もっとも消費電力の大きい家電製品の出力の1.2〜1.5倍程度でもいいと思います。上の例だと定格出力1500W前後のモデルということになります。
バッテリーの容量やサイクル数について
次にバッテリーの容量です。例えば1000Whと表記されていれば、分かりやすく言えば「1000W(ワット)の電子レンジを1時間(h・アワー)使えるバッテリー容量です」ということを意味します。厳密にいうと変換ロスなどもあるため、1時間ぴったりということではありません。
そのため、どんな家電製品を何時間使いたいのか?を計算する必要があります。
例えば、電気ひざ掛け(消費電力75W)を1000Wh容量のポータブル電源で使うのであれば、1000÷75=約13時間 という大まかな目安を立てることができます。
バッテリーの種類
次にバッテリーの特性と寿命です。ポータブル電源に使われるリチウムイオン電池は、「三元系」「リン酸鉄」の2種類がほとんどです。「三元系」はエネルギー密度が高く、低温時でも出力が得られやすいです。一方、「リン酸鉄」はエネルギー密度が低く低温時の出力は出にくいものの、価格がリーズナブルです。
バッテリーの寿命
寿命については各製品に書かれているサイクル回数もしくはサイクル寿命の項目を必ず確認しましょう。サイクルというのは0%→100%→0%を1サイクルとカウントします。例えば、「サイクル回数(寿命)1000回」とあれば1000サイクル繰り返し使えるということですが、そこでパタッと使えなくるわけではなく、1000サイクル程度を目処に電池劣化が起こりますよという意味。1000サイクル以上使うと電池性能が低下して、使いにくくなると思えばいいでしょう。
1年に50泊ほど車中泊やキャンプで使うというのであれば、サイクル回数1000回のモデルであれば、おおよそ20年使える計算です。
BMSもチェック
さらに、BMS(バッテリー・マネジメント・システムの略)と呼ばれる、本体に内蔵される管理・運営機能などについても、どんな保護回路が搭載されているか事前にスペック表で確認しておくと安心です。また、稼働できる温度も見ておくと、安全に製品選びができるはずです。
上記で説明したことを基本にしておけば、あとはポートの数とか細かい部分だけをチェックするだけで欲しいモデルがはっきりとしてくるでしょう。
車中泊やキャンピングカーに最適なのは?
前置きが長くなりましたが、ここからが今回の本題です。今年2月に開催されたジャパンキャンピングカーショーでもポータブル電源を採用、もしくはオプション設定しているキャンピングカービルダーが多く散見されました。
リチウムイオン電池と鉛電池
ポータブル電源の魅力はその手軽さです。搭載されるリチウムイオンバッテリーは、鉛のバッテリーに比べて小型で軽量・ハイパワーといった特徴があります。
いままでキャピングカーの車内で使う電源には鉛バッテリーが主でしたが、ここ数年でリチウムイオン電池へ移り変わってきています。ただ、リチウムの電装システムを構築すると価格もおのずと高くなってしまう……。そこへ登場したのがポータブル電源です。持ち運びがしやすいモデルが多く、設置場所も選ばない。ここ数年で価格もリーズナブルになってきており、使わないときは家に置いて防災グッズとしても活用できるなど、注目されるだけのポテンシャルが多いのはみなさんもご存知のとおりでしょう。
「EcoFlow」とは?
そんな数多いポータブル電源のなかで、「EcoFlow」はドローンで知られる「DJI」のメンバーにより2017年に誕生。筆者が初めての目にしたのは2020年に開催されたジャパンキャンピングカーショーに出展していた「EF DELTA」というモデルで、1260Whの容量・1600Wのインバータ定格出力というハイスペックさに当時は度肝を抜かれました。
現在、日本のキャンピングカービルダーでも取り扱っているところをよく見かけます。
EcoFlowの2モデルを使い比べ
さて、今回はそんな同社の大容量ポータブル電源シリーズ「DELTA」から最新モデルの「DELTA mini」と「DELTA Max2000」を比較してみました。
2モデルの共通点をチェック
デザインはどちらもそっくりと言っていいほどで、見やすいディスプレイをはじめ直感操作が可能なスイッチ類など、だれもがすぐに使えると思います。
電池は三元系のリチウムイオンを採用し、特許技術であるX-Streamテクノロジーによりアダプター要らずで急速充電が可能。また、バッテリー管理システムを搭載し、8つの保護回路を設けた安心・安全設計。
さらにスマホ専用アプリをダウンロードすれば、電池残量の確認をはじめ、ACやDC出力のオン/オフ切り替え、ACやアクセサリーソケットからの充電電流を調整まで行えます。さらに、本体ファームウェアの更新までもできる便利さは両モデル共通の大きな魅力だと思います。
なお、DC出力は両モデルとも126Wで、サイクル回数も800回。
ただし、サイズや容量などを比べてみるとさすがに大きく違います。
「DELTA mini」を車中泊でテストしてみた
まずは「DELTA mini」から。
サイズは37.7×18.4x24cmで重さは10.7kg。電池容量は882Whで定格出力1400W(瞬間出力2100W)。
給電の総ポート数は12口でそのうちACは5口。
独自のX-Boost機能は独自の高度なアルゴリズムにより、定格出力1400W超の電気製品の動作電圧を下げることで消費電力を定格出力1400W以下に抑えることで稼働させることが可能。
実際に筆者のクルマで1泊するときの電源に利用してみました。まず、片手でも持ち運べることにビックリ。車内では照明(AC)と冷蔵庫(DC)をメインに、途中、LEDランタン(USB)やデジタル1眼カメラ(USB)の充電に使用。
フル充電で使い始めたDELTA miniは、16時半から常に照明と冷蔵庫を使い続けて、翌朝7時まででバッテリー残量44%という結果でした。1泊2日の使用なら余裕で使えるだけでなく、電気ブランケットも併用できるほどだと感じました。
また、写真を見ても分かるとおり、ちょうどリアゲートとタイヤハウスにシンデレラフィットしたことも好印象でした。
「DELTA Max」を車中泊でテストしてみた
次に「DELTA Max」。
サイズは49.7×24.2×30.5cmで重さは約22kg。電池容量は2016Whで定格出力2000W(瞬間出力4200W)。
給電のポート数は15口で、そのうちAC電源は6口。
独自のX-Boost機能は、独自の高度なアルゴリズムにより、定格出力2400Wまでの電気製品の動作電圧を下げることで、消費電力を定格出力2000W以下に抑えることで稼働させることが可能。
DELTA miniは本体への充電がAC100Vやソーラー、アクセサリーソケット(DC12V)の3つなのに対し、MaxはEcoFlow発電機にも対応しています。ほかにも最大2つのエクストラバッテリー(別売り)を取り付けることで最大6048Whまで拡張することができるのも大きな魅力です。
上記スペックでの単純比較でも分かるとおり、容量で約2.3倍・出力でも約1.4倍も違いがあるので、DELTA Maxのほうがminiよりも様々な家電製品などを長く動かしたい人にはオススメと言えるでしょう。
ポータブル電源付きのキャンピングカーをチェックしてみた
実際、DELTAシリーズを採用するキャンピングカーもチェックしてみました。欧州のキャンピングトレーラーをはじめ、軽キャンパーをラインナップする「インディアナ・RV」では、「DELTA Max」「EF DELTA」の2機種を用意。
現在、クルマを購入する約9割の人がどちらかの電源付きグレードを選ぶほど、ポータブル電源付き車両の需要が高いそうです。なお、この電源で基本的に賄われているのは照明を含む12V 機器やオプションの テレビなどが主なものとなります。AC 電源の必要な温水器の稼働もできますが、消費電力が大きいためその使用には注意が必要です。
こちらの写真は、DELTA Maxに別売りの110Wソーラーパネルを搭載したフランス・トリガノ社のキャンピングトレーラー「エメロード406 VIP MAX」(車両価格354万円)。2人がけソファの下に綺麗に収納されており、本体の取り出しもしやすいように設置していますが、約22kgあるので持ち上げるのはひと苦労です。
電池容量がたっぷりなのでファミリーでの滞在には最適。さらにエクストラバッテリーまで追加しているユーザーもいるほどで、もしもの災害時でも容量・出力とも安心感が高いことの確かな例と言えます。
EF DETAと110Wソーラーパネルを装着している「エメロード376VIP」(333万円)は、単座のシート下に専用の引き出しを装備し取り出せる仕様。キャンプ場など外へ気軽に持ち出したい人はこちらを選ぶそうです。
まとめ
今回「DELTA mini」と「DELTA Max2000」を比べてみると、軽自動車や1ボックスなどスペースに限りがある車両や1泊2日程度の利用なら「DELTA mini」、空間に余裕がある車両や長期旅などに使うなら「DELTA Max2000」という選択なのがよくわかりました。
最近では家庭用エアコンや車載クーラーを搭載したキャンピングカーも多く存在します。もちろん、どちらも出力的には使用可能なスペックですが、電池容量を考えると、あくまで短時間。例えば、「ペットと一緒の旅で食事や買い物に出かけているときだけに使用」「夏場、寝る前や寝起きの短時間だけ使う」など、局所での運用となります。
両モデルとも本体への充電スピードの速さ、スマホで遠隔操作や残量や使用量の確認ができることなど、実際に使ってみてこの二つの機能については特に感動しました。
これから「車中泊カーがほしい」「キャンピングカーがほしいという人は」、自分の旅のスタイルと照らし合わせて真剣にポータブル電源や電装系について考えを巡らせてみてはいかがでしょうか?
EcoFlow:https://jp.ecoflow.com/
インディアナRV:http://indiana-rv.net/