キャンピングカーの暑さ対策
FFヒーターのような完成された暖房手段のある寒さ対策に比べ、暑さ対策はキャンピングカーの長年の課題と言われています。
断熱加工をしてあっても、あるいは金属ではないFRPシェルであっても、クルマであることに変わりありません。JAFの検証報告やニュースを見るまでもなく、直射日光にさらされた車内の暑さは危険なほどです。
地域によっても異なると思いますが、おおむね4月にもなれば晴天下でエンジンを切った車内には居られない、というのが実感ではないでしょうか。
一方でクルマを冷やす手段は限られています。夏に車中泊をしたいとき、暑さ対策はどのようにしたらよいでしょうか。
現状では家庭用エアコンが最適解
十分なスペースのあるキャブコン(トラックなどのキャブオーバー車に専用の居室を架装したキャンピングカー)なら、現状では家庭用エアコンが最適解と言えるでしょう。
ハイルーフのハイエースのような天井高があるモデルでは、バンコン(バンをベースにしたキャンピングカー)でもエアコン搭載車が見つかります。
家庭用だけあって冷房性能は抜群。「暑くて寝られない」といった不快な夜とは無縁になります。
一方で室外機の設置スペースは課題です。住宅ならベランダや勝手口など目につかない場所にあるので意識しませんが、車に積むとなれば相当な空間が必要。
床下に埋め込んだり、ボディー側面に収納してルーバーから空気を排出したりと、各社が工夫を凝らしています。
また、連続稼働時間も課題とされます。外部電源の使えるRVパークなどでは問題ありませんが、サブバッテリーだけで使う場合は限界が。
リチウムイオン電池の普及で稼働時間が延びているとはいえ、いつでも気兼ねなく使えるわけではない、というのがユーザーの統一見解のようです。バッテリー残量に気を配りながら、タイマーをセットしてピンポイントで使用するイメージでしょう。
近年では車載専用に設計されたDC12Vクーラーも製品化されています。省エネ、省スペース、高耐久性など車特有の事情に合わせて設計された製品は、全キャンピングカーオーナー待望とも言えます。
しかし現状では、家庭用エアコンでおよそ90万円(バッテリー増設など周辺加工を含む)、車載用クーラーでおよそ70万円(同)と、まだまだ高価な装備であることに変わりはありません。
十分なボディーサイズと予算があってこそ実現できる、夢の装備と言えるかもしれません。
家庭用エアコンが搭載できない場合
ここからが本題です。家庭用エアコンや車載用クーラーが搭載できないクルマの冷房事情はどうでしょうか。
コンパクトな標準ボディーハイエースを2ルーム仕様にしている私のクルマ。荷物の収納にも苦労するギリギリサイズなので、とてもこれ以上の装備を積む余裕はありません。
そんな私が、あれやこれやと試行錯誤をして「効果がある」「効果がない」と結論づけたのが以下の方法。
中には「やる前からわかるだろ!」というものもあるかと思いますが、いかに暑さから逃れたいと四苦八苦しているか、悪戦苦闘の痕跡です。
自然の風(効果:★★★☆☆)
春や秋であれば、日光に照らされた車内は暑くとも、外を吹く風は冷たいというシチュエーションが多々あります。そんなときは「いかに外気を利用できるか」が鍵になります。
通常、調理後の排気を逃すなど換気のために利用するベンチレーターですが、回転方向をIN設定にすれば外気を取り入れられます。ちょうど扇風機のように使えるわけです。
ただし、私のクルマの場合はベンチレーターがマルチルーム(トイレルーム)側にあるため、そのままでは居室に風が届きません。そこでクリップタイプのミニ扇風機を併用。
家電量販店で3000円程度で購入したもので、仕切り壁やアシストグリップなど、どこにでも固定できるのが便利です。「寝落ち」しても大丈夫なように、タイマーつきなのもGOOD。100V電源につないで使います。量販店では同様の商品が多数販売されています。
逆に、ベンチレーターをOUT設定にして、窓を細く開けることでも外気を取り入れられます。そのときに必須なのは網戸。
夏場はあっという間に車内が虫だらけになってしまいますから、Aizu社の「ロールインバグネット」を愛用しています。同社では車種別のマルチシェードやバグネットを多数展開しており、普通車でも便利なアイテムが見つかるはずです。
この2つの方法で「車内は暑いけれど、外は涼しい」というシチュエーションであればかなりカバーできます。季節によって数分後には寒く感じられるほど。また、そもそも車内温度を上げない工夫として、日陰への駐車やフロントガラスのサンシェードは必須ですね。
ただし車外も30度Cを超えるような日には扇風機も焼け石に水。「ぬるい風をかきまわす」という状態になってしまい、涼しさは得られません。
冷感マット(効果:★★☆☆☆)
夏が近づくとインテリアショップやホームセンターで見かける冷感寝具のシリーズ。マットやシーツ、タオルケットなど多様な商品が展開されています。そこでキャンピングカーのベッドにも取り入れてみました。
とにかく触り心地が抜群。繊維のフワフワ感がまったくない、つるりとした質感が気持ちよく、触ると確かにひんやりします。
「シルクのよう……」と言えば大げさかもしれませんが、延々となでていたくなる質感です。とても気に入りました。
とはいえ、あくまで効果は「冷感」であって「冷却」ではありません。「冬用寝具に比べれば、確実に心地よい」とは言えますが、暑さ対策としては心許ないでしょう。夜が明けて気温が上がってくると、たとえ冷感寝具であっても、じっとりと汗が出てきます。
効果は「気休め」程度ですが、快適性アップという意味では購入してよかったアイテムです。
ネッククーラー(効果:★★☆☆☆)
こちらはサンコー株式会社のユニーク商品、首を冷やす「ネッククーラー」です。発売後しばらくは入手困難になるほどの大ヒットでした。シーズンごとにバージョンアップを繰り返しています。
古くからの生活の知恵で、首、太ももの付け根、脇の下などを通る大きな血管を冷やして体温を下げるというものがあります。通常は冷えたタオルや保冷剤を使うと思いますが、それを電気で実現するもの。
最新機種では本体充電やモバイルバッテリーで使えるなど、携帯性にも優れています。通勤やキャンプ、スポーツ観戦など屋外での使用に最適。
首にあたる金属板は、びっくりするほど冷え冷えになります。しかも電気式ですから、ぬれタオルや保冷剤のように冷却力が弱まるということがありません。
ところが、私の場合は同じ場所にずっとあてがっていると、肌が慣れて冷たさを感じられなくなりました。おそらく体を冷やす作用はあると思うのですが、むんむんと蒸れた車内では「暑い……!」という体感的な苦痛は減らず。「快適になった」とまでは言えませんでした。
なお製品は年々改良されており、現行では図書館でも使える静音設計や、冷たさの強弱を生む「ゆらぎモード」が搭載されるなど、当初の課題が解決されている模様です。私の所持しているバージョンと比べると、だいぶ使用感が改善されているかもしれません。
また、就寝時の使用は禁止されています。肌の感覚が弱っている方は使えないなどの制約もあるので、購入時には注意事項をご一読ください。
スポットクーラー(効果:★★★★☆)
エアコンの代替品として大本命、スポットクーラー(ポータブルクーラー、パーソナルクーラー)。室外機のある本格的なものから、オフィスのデスクで使える簡易的なものまで多様な製品が販売されています。
冷却の仕組みもさまざまで、大型になるほど冷却性能もアップしますが、私のクルマでは小型家電が限界。そこでショップジャパンの人気商品「ここひえR4」(税込8980円)を試してみました。タンクに水を入れ、気化熱で冷感を得る「冷風扇」です。
晴天下、室温33度Cの締め切った車内。黙っているだけで汗が出てくる状態で、とてもくつろいだりパソコン作業をしたりといった活動は困難です。そこで「ここひえ」を稼働してみると……
室温マイナス3度Cほどの冷風が吹き出してきます。メーカー公称値はマイナス10度Cですが、それは吹き出し口に触れるくらい近くの場合。
けれど、自分の首や顔にピンポイントであてると、はっきりとわかるほど「ひんやり」します。先ほどまで「とても居られない」と思っていた車内でも普通に過ごせます。少なくとも「いますぐクルマから出たい!」という切迫感はなくなりました。
ただし、風は出てきた瞬間からぬるくなっていくので、車内全体は冷やせません。まさに小型軽量の「パーソナルクーラー」で、複数人の使用には向きませんし、常に至近距離に設置する必要があります。あくまで自分の肌にあてると涼しい、という商品です。
ちなみにスポットクーラー+扇風機という組み合わせも、まったく効果がありませんでした。「熱風が吹きつけてくる」状態になってしまい、かえって暑いくらいでした。
結論:春秋には扇風機、夏にはスポットクーラー
春や秋など、外気が涼しい時期にはベンチレーター&扇風機がいちおし。普通車でも網戸を設置して、アシストグリップにクリップファンをつけて空気を循環させるのは効果的だと思います。
いわゆる熱帯夜のような、外気そのものが暑いときには風だけでは不十分です。スポットクーラーは、車内全体を冷却するほどのパワーはないものの、身体をピンポイントで冷やすことには実力を発揮しました。ソロ使用ならよさそうです。
とはいえ酷暑、猛暑と呼ばれるシーズンには無理は禁物。「夏は車中泊のオフシーズン」と呼ばれるほどです。夏は北海道専門という人や、標高の高い場所にしか行かない、という人もいます。熱中症には十分に注意して、健康第一でお出かけください。