バカンスではクルマに荷物を満載して長距離を走り、質実剛健なものを愛し、長く使うのがフランスの伝統。そんな国で作られるクルマのなかでも、プジョーは日本でも知名度の高い老舗。元々は歯車を製造した関係で、今もペッパーミルのブランドとして名を馳せ、自転車でも有名だ(すでに製造からは撤退済み)。ライフスタイルにも根ざしたプジョーの作るクルマはとても心地よく、スタイルもモダン。モデルチェンジした308の出来栄えをリポートしよう。
プジョー308ってどんなクルマ?
プジョー・308は9年ぶりにフルモデルチェンジされ、今回で3代目。初代からスタイリッシュなデザインとフランス車らしい優れた取り回し、そして“ネコ足”と評されるしなやかなサスペンションで、高い支持を得てきた人気車だ。その最新モデルはフロントグリルのセンターにあるエンブレムまで新デザインに変更するなど、すべてが一新された。
デザインコンシャスなプジョーらしく、外観デザインはスタイリッシュに変身。キーポイントのひとつとして目を引く超薄型マトリクスLEDヘッドランプや、ライオンのかぎ爪をイメージしたというリアコンビネーションランプはシャープな印象を与えてくれる。
ボディサイズは拡大され、旧型との比較でホイールベース60mm、全長は145mm、全幅は45mm、全高は5mm大きくなった。おかげでリアシートを中心とした居住空間の拡大だけでなく、荷室の実用性も拡大。最大積載量は5人乗車時で容量412L(VDA値)。後席背もたれを倒すと1323Lに広がる。この数値はクラストップレベルだ。
ハッチバックにつき開口部のへりは段差がついていて、後席をたたんでも車中泊ができるようなレベルにはない。
むしろ、深く掘られたラゲッジ形状を生かし、走行中の荷物のずれが起きにくい積み方を工夫すれば、最低でも2名、頑張れば3名分のキャンプ道具が積める。
ガソリンエンジン搭載の308に乗ってみた
308のパワーユニットは、プラグインハイブリッド、ディーゼル、そしてガソリンエンジンの3タイプが用意されている。このうち、燃費とパワフルな走りのバランスを考えると、ディーゼルのGT BlueHDi(396万9000円)は納得できるセレクト。走らせてみると力強く、そして速い。さらにディーゼル特有のガラガラ音がずいぶん抑えられ、早朝や日が暮れての移動時にあまり気を使うことはない。
一方で、ガソリンモデル(305万3000円)も捨てがたい魅力がある。ディーゼルほどのパワフルさはないが、130馬力の1.2L直列3気筒ガソリンターボエンジンは走り出しから上質なフィーリングで、心地よく速度が上がる。
小さなエンジンで実用性に優れた大きなボディを元気よく走らせるのは、フランス車の伝統。排気量任せではない走りの味つけはさすがだ。
また、カタログ値ではあるが燃費も17.9km/l(WLTCモード)となかなか。高速道路を使うことの多い人であれば、さらに燃費は良くなる。ディーゼルのパワフルさは魅力だが、軽快な走りと価格とのバランスで選ぶならガソリンモデルもありだ。
外遊びをサポートする安全装備など
現代のクルマでは不可欠となった安全装備。308ではADAS(先進運転支援システム)の機能がマルチファンクションカメラ(夜間、二輪車、歩行者検知機能に対応)となり、安心感は高い。さらに、従来型ではステアリングの奥に配置されていたスイッチ類が、ステアリング左側のパッド部分に集約して配置されている。おかげで目線を走らせることなく、より直感的な操作が可能となった。
リアトラフィックアラートと言うシステムもつく。これはリアバンパー内蔵のレーダーを使用し、後退時に接近してくる車両、自転車、歩行者などを検知し、警告を発するシステムだ。子供が駆け回ったり障害物の多いキャンプ場内の低速移動時で心強い。
上級グレード限定の装備として、進化したボイスコントロール機能もニュース。「OK、プジョー」と呼びかけることで起動し、ナビゲーション、エアコン、シートヒーター、オーディオ、電話、天気予報検索など、さまざまな機能を操作できる。
近年のプジョー車の特徴である小径ステアリングを握ると、メーターパネルがステアリングの上に見える。独特だが視線移動が少なくて済み、実に合理的だ。爽快な乗り味に清々しさを感じるのは、フランスらしい価値観に基づく設計が一番なのだが、もうひとつ魅力的な装備があったことに気づいた。
それは、全車に装備されているAQS(エアクオリティシステム)。HE (High Efficiency)フィルターを用い、外気の3つの汚染分子(CO、NOx、NH3)をモニタリング。汚染物質が確認された場合は、自動的に空気循環を始める。
プジョー・308は、見えない部分でも気持ちいいキャンプライフをアシストしてくれるのだ。
プジョー・308 Allure
- 全長×全幅×全高:4,420×1,850×1,475mm
- 車両重量:1,350kg
- 最低地上高:130mm
- 最小回転半径:5.3m
- エンジン:水冷直列3気筒DOHC 1,199cc
- 最高出力:96kw(130PS)/5,500rpm
- 最大トルク:230Nm(23.4kgm)/1,750rpm
- WLTCモード:17.9km/l
- 車両本体価格:¥3,053,000
問い合わせ先:プジョー・コール➿ 0120-840-240
自動車ライター
佐藤篤司
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行なう自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。