「車中泊禁止」のオートキャンプ場?
キャンプブームの中、テントを張らずクルマの中で寝る車中泊キャンプも人気を集めています。
タープだけ張ったり、カーサイドオーニングを使ったりして夜まで外で過ごし、就寝は車内。天候に左右されにくく、野生動物対策や防犯にも優れ、なにより設営や撤収の手間がいらない。車中泊仕様のクルマの増加とともに、これからも定番のスタイルとなるでしょう。
ところが先日、「車中泊禁止のオートキャンプ場」に関するインターネット記事に、多くの意見が寄せられていました。
私自身はこれまで車中泊を禁ずるオートキャンプ場に出会ったことはなく、「全国的な傾向である」「どんどん増えている」という状況ではないと思われますが、それでも衝撃とともに拝読しました。
原因となっている行為は、どれもわずかな注意や気遣いで防げることであり、それはキャンプ場に限らず社会生活そのものだと思うからです。
どういったことが問題になっているのでしょうか。オートキャンプ場を車で利用する際のマナー問題を改めて考えてみます。
車中泊の「音」問題
テントを張らない車中泊利用者による迷惑行為は、「音」と「光」に分けられるといいます。
代表格はエンジン音ですが、言うまでもなく長時間のアイドリングはマナー違反です。騒音だけでなく、排ガスによる環境汚染や一酸化炭素中毒の危険性を考えても、アイドリングを容認しているオートキャンプ場はないと思われます。
カーエアコンで暑さ・寒さをしのぐ目的ならば、ホテルなどへの避難も検討すべきでしょう。アイドリング禁止はキャンプ場のルールとして明記されていることも多く、管理者にも対応してもらえるはずです。
それ以外に悪気がなくとも「ついついやってしまいがち」な項目を、私自身の経験やキャンパーの体験談などから拾い上げてみました。
ドアの開閉音
クルマ特有の音問題といえば、ドアの開閉音。私も一番「しまった!」と思う項目です。
クルマのドアを閉める「バンッ」という音は、住宅街でも近隣トラブルを招くほどの騒音です。しかもテント泊と異なるのは、就寝準備のあいだや、家族でトイレに行くときなど何度も開閉を繰り返すこと。
車種や時間帯によってはアンサーバック機能(施錠・解錠時に音やハザードランプで知らせる機能)や音声アナウンス、ピーピーという電子音も大きく感じられます。
自分が車外にいるときは「用が終わるまでドアを開けたままにすればいいのに!」と思いますが、いざ当事者になると虫の侵入を防ぎたい事情も理解できます。
これらは、ギリギリまでドアを近づけてから素早く押し込むことや、子どもに閉めさせないこと、まとめて用事を済ますことなど、「周りに聞こえている」という意識をもつことでかなり軽減できるでしょう。
オートキャンプ場である以上「お互い様」なので、遠慮が感じられるだけでだいぶ心証が異なるのではないでしょうか。
盗難防止アラームにも注意
キャンプ場の静寂を破るもっとも大きな音といえば、クルマの盗難防止アラームの誤作動かもしれません。
たとえば多くのトヨタ車では、リモコンキーで外から施錠するとオートアラームが自動でセットされます。この状態で人やペットが車内で動いたり、内側からドアを開けたりすると大音量のアラームが鳴り響くことに。
防犯のためにはこまめな施錠が望ましいですが、自分のクルマのアラーム始動&解除の条件を正確に挙げられる人は少ないのではないでしょうか。
私の場合は、キャンピングカーの納車時に担当スタッフが「よくある失敗談」として注意喚起してくれたことが大いに役立ちました。
それがなければ、一度ならず爆音を響かせていたことは間違いありません。いざというときに慌てないよう、クルマの取扱説明書を一読することもおすすめです。
家電の音や話し声
電化製品を心おきなく使えるのがサブバッテリーやポータブル電源の魅力。オートキャンプ場では電源つきサイトも多いですから、ある程度の家電の使用は想定されていると言えるでしょう。車内に設置したモニターで映画を流しながら焚き火で晩酌、なんて素敵ですね。
しかし、外にもれるオーディオの音声や音楽を迷惑に感じる人が多いのもまた事実。
とくにテレビやラジオなどの人工音は耳につきますし、音楽にいたっては好みもあります。周囲が暗いと画面のちらつきも気になります。
個人的に心配しているのが、キャンピングカーの暖房機器であるFFヒーターの動作音。わずかですが「ブーン」という重低音がします。
お互いが車内にいるなら気にならない程度ですが、もしテント泊の人が近くにいれば……。それ以外にも冷蔵庫やインバーター、電動ポータブルトイレなど動作音がするものは車内に多くあります。
また、プライベートスペースの感覚になりがちな車内では、話し声も大きくなることが想像できます。車内外を問わず「遅くまで酒盛りをしていて迷惑だった」という体験談もちらほら。
ほとんどのキャンプ場では「サイレントタイム」「クワイエットタイム」といった消灯時間が定められています。一方で世の中の決まり事の多くには、本音と建前があります。
たとえばクルマで道路を走っているとき、法律とは別に「暗黙の了解」や「不文律」があります。ルールを守っている人のほうが、かえって敬遠される場面さえあります。
その意味でいうとキャンプ場の消灯時間は、建前ではなく本当に遵守が期待されているルールと呼べるでしょう。「まさか21時に寝る人なんていないでしょ」などと軽視していると、周囲との深刻なズレを生じます。
キャンプ場では大多数の人が、日常を忘れて静かに過ごしたいと思っている、と考えるのが自然です。サイレントタイムは建前ではないと肝に銘じる必要がありそうです。
車中泊の「光」問題
もうひとつの迷惑行為とされるのが光です。「光害」という言葉もあるくらいで、クルマから発せられる光はランタンなどとは比較にならない光量をもっています。近年話題のオートライト機能も問題の芽をはらんでいます。
遠くまで届くヘッドライト
クルマのヘッドライトの威力は広く知られるとおり。照射距離はライト上向き(ハイビーム)で100m、ライト下向き(ロービーム)で40mと定められています。木立を切り裂き、容易にほかのサイトに届く距離です。
ヘッドライトを照明代わりに使って自サイトを照らすというのは、車中泊に限らずNGでしょう。
また、気をつけたいのがオートライト機能。発進前から点灯していたり、エンジンを切ってもすぐには消灯しなかったりと、ユーザーの意図しないタイミングで点灯することが迷惑になる可能性があります。
とくに駐車時には、私も通路の正面にあるサイトを明々と照らしてしまい「申し訳ない!」と冷や汗をかいたことも。
また、新基準の「ドライバーが手動で消灯できないオートライト」は、普及とともにさらなる波紋を呼ぶことが予想されています。
騒音問題とも関連しますが、日が暮れたらクルマを動かさない、ということが原則となるでしょう。明るいうちにキャンプ場に到着する、買い出しや入浴などは事前に済ませておく、といった気配りが求められます。
車内からもれる光
最後に、車内からもれる光。「まぶしい」「雰囲気が壊れる」といった声があるようです。
キャンピングカーでは住宅の照明と同じくらい明るい室内照明が点きますし、夜には想像以上に車内がくっきり見えていますから気をつけたいところ。
よその家族の生活の様子が丸見えというのも、ちょっと見苦しいものです。サンシェードや遮光カーテンを上手く活用したいです。
一方で「雰囲気を壊す」という漠然とした苦情には、危ういところがあるとも思います。なにを「いい雰囲気」と感じるかは、人によって異なるからです。
たとえばテント周りを電飾で飾るデコレーション。幻想的で素敵だと思う人もいれば、賑やかすぎて見苦しいと思う人もいるでしょう。
よほど実害をこうむることでなければ、キャンプとは自由であって欲しい。価値観を押しつけるのは、お互いに息苦しくなるだけです。マナーを守る意識とともに、自分と異なる考えを許容する心も必要なように思います。
「車中泊が問題」なのではない
いずれも「車中泊だから」ということではなく、利用者のモラルの問題であり、同じようなことがオートキャンプ、テントキャンプ問わず全国で起こっていると思われます。
オートサイトとテントサイトを分ける、利用者の人数によってスペースを区分するといった緩やかな区別は賛成です。目的の異なる利用者を自然に分けることができます。
ただし行き過ぎはちょっと怖い。寝る場所までルール化しなければキャンプ場が立ちゆかないのが現実だとすれば、行く末が心配です。
極端なことを言うと、「居住者の年代」「子どもの有無」「ペットの有無」といったことで居住区域まで細分化されるSF映画のディストピアのような世界に……。
ルールとルールのあいだのグレーゾーンを柔軟に埋めるのが、ほんのちょっとの配慮と思いやりなのだと思います。