自然を相手にする農業は、その年の天候に大きく左右されます。昨年は全国的な長雨と日照不足で野菜が高騰しました。今年の春も水不足から葉物野菜や玉ねぎなどが今でも高値を推移しています。今年の夏は、異常に短かった梅雨と猛暑の影響が必ず出ることでしょう。
3年目を快走中の「雨のちハレ、ときどき農業生活」では、100%オーガニックな鎌倉野菜を作っているわけですが、といっても、日常の仕事が最優先のプチ兼業農家みたいな感じで、週末農業が状況としては近いかもです。そんな素人たちが試行錯誤をしながらの失敗の敵は天候だけではありません。
天敵には天敵がいる!
天候以外の敵ですぐに思いつくのは害虫です。例えばイネに絞ってみるだけでこんな感じです。
- ガの幼虫:イネの葉や茎を食べる。
- カメムシの仲間:イネの穂から汁を吸う。
- ハムシの仲間:イネの葉を食べる。
- ゾウムシの幼虫:土の中でイネの根を食べ、成虫は地上で葉を食べる。
- イナゴ:イネの葉を食べる。
他にも、ビニールハウスなどで栽培されるトマト、ナス、ピーマンなどの野菜には、アザミウマ、アブラムシ、ハダニ、コナジラミなどが天敵として名前が挙げられます。でも、一方で、こうした害虫を好物にしている虫もいるわけでして、自然界の循環性の高さを感じます。例えば…..
- クモは自分より小さい虫を食べる。
- トンボは飛んでいる虫を食べる。
- カマバチはウンカやガの幼虫に卵を産み付け、寄生することにより虫を殺す。
- ウンカやガの幼虫に卵を産み付け、寄生することにより虫を殺す寄生蜂、虫を食べるアメンボやカマキリなどの虫。アマガエル、トノサマガエル、また、ツバメやスズメも害虫の天敵と言われています。
年間150億円以上の損害を与えている深刻な被害
虫と同じく天敵とされているのがサル、シカ、イノシシなどに代表される獣害です。農林水産省のHPによると、令和元年度の鳥獣による農作物被害は約158億円だとか。その内訳は
- シカ:約53億円
- イノシシ:約46億円
- サル:約9億円
- ヒヨドリ:約6億円
獣害には都市化と過疎化など、様々な要因があるそうですが、その被害額は年々増加傾向で、約46億円の北海道が突出しているものの、僕の住む神奈川県だけでも2億円の損害額がありました。サル・シカ・イノシシがいない鎌倉市での獣害はというと、市も認定している3つの外来種がそれに当たります。
鎌倉市も認める捕獲対象動物とは?
海のイメージが強い鎌倉市は、実は3方を山に囲まれた”山の町”でもあります。市内の森林率は40%もあるんですよ。そんな鎌倉市が認めている捕獲対象動物がいます。アライグマ・ハクビシン・タイワンリスの3種の外来動物です。市の環境保全課では、捕獲用檻「はこわな」を貸し出しているほどで、その被害状況はこんな感じです。
- サツマイモ、トマト、トウモロコシ、すいかなど畑や、家庭菜園の作物を食べられた。
- ブドウや柿など庭の果実を食べられた。
- 保管していたドッグフードを食べられた。
- 猫や犬などのペットが襲われ負傷した。
- 池の鯉や金魚などを食べられた。
- 外のポリバケツなどに入れておいた生ゴミをあさられた。
- 電線や電話線をかじられた。
- 山林、庭等の樹木の樹皮をはがされた。
- 店の商品を食べられた。
こういった小動物による被害は日常化していて、それらを知らない観光客が「かわいい♪」と言いながら餌付けをしてしまうことも遠因になっています。鎌倉でリスを見かけたら、絶対に餌を与えないでください!
3年目のトウモロコシの運命やいかに!
過去、見事に枯らしてきた夏を代表する野菜・トウモロコシですが、今年こそは!と意気込んでいました。上の写真は収穫直前の様子です。収穫の2日前に畑を訪れた農場主も「今年は行ける!」と確信し、画像付きでLINEしてくれたほどで、「よっしゃー!」とガッツポーズしたことを覚えています。ところが、収穫の朝に農場に行くと….
言葉を失うとは、こういう時のことを指すのだと思いました。たった2日前にはノーダメージだったのに……。夜行性の性質があるハクビシンの仕業だと思われ、プロとアマの違いをまざまざと見せつけられた昨年の失敗から学んだ今年も、私たちが収穫に来る数時間前の夜中に食い散らかされた模様です。
(昨年の失敗談はこちら:100%オーガニック農業の限界!?とうもろこしが大失敗)
美味しいタイミングをあいつらも分かっているんだろうな…..絶望と怒りがないまぜになりながら、今年もトウモロコシは失敗してしまいました。昨年の失敗を読んでくださった方がSNSで「トウモロコシなんて失敗する方が難しいよwww」と、叱咤激励を下さっていたので、見返してやる!と意気込んでいたのですが、今年も失敗でした。
害虫や獣害、小動物による荒らしなど、天候以上に厄介な敵と戦うのも農業です。ましてや農薬を使わない100%オーガニックを実践している以上、これらへの神経の使い方をもっと改善しなければいけないと痛感しました。でも、これもまた農業の楽しみや悦びの一つなので、前向きに取り組んでいこうと思います。