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じつは梅雨の終わりから顔を出す夏キノコも
「キノコっていうと秋のイメージだと思いますが、じつは梅雨の終わりから顔を出す夏キノコもある。種類によっては秋のキノコを先取りすることもできるから、競争相手の少ない夏のキノコ狩りもいいものですよ」
と話すのは、写真家でありキノコ名人採りの柳澤牧嘉さん。
とはいえ、日本で現在認識されているものだけでも約6千種類以上にもなるといわれるキノコを全部覚えるのは不可能。どんなキノコを探すか、アタリをつけておくといい。
「やっぱり、日本のポルチーニ、ヤマドリタケを狙いたいよね。あとはハナビラタケに、高原ならハナイグチにも出合えるかも」
夏キノコの見つけ方
夏キノコを探すには、発生場所を知っておくことが先決だ。
「マツタケがマツの根元に生えるように、林とキノコの関係を覚える。ヤマドリタケはウラジロモミと共生しているので、まずはウラジロモミ林を探そう」
夏に採れるといっても、カラカラな晴天が続いた日はNG。2、3日シトシト雨が降ったあとが狙い目だとも。樹木はその木の高さと同等の根が伸びていると思っていいので、必ずしも根元を探す必要はない。
「4〜5m先の地面を見ながら歩く。草のなかに隠れていることもあるから、時々しゃがんで見てみる。斜面なら登りながら探したほうが見つけやす……あ、いやや、あれ? あれか!? ??」
柳澤さんの眼光が鋭くなる。キノコ好きにとって、獲物を前にしたらクールに解説などしている場合ではないのだ。
「いや〜どうやって食べよう」
憧れのヤマドリタケを前に、撮影もそっちのけ。
「夏キノコはね、傷みやすいから採ったらすぐ食べたい。持ち帰るのに神経も使うしね。だからこそ、その日食べる分だけを採る。夏の高原キャンプでだけ味わえる贅沢だよ」
8月はじめ〜8月半ばは、キノコも秋に向けてひと休み。梅雨明けの7月は希少な夏キノコシーズンなのだ。
「キノコ狩りはね、毎年同じことを楽しめるのも魅力のひとつ。ヤマドリタケなんかは特定の木と共生関係を持つから、環境が変わらない限り、毎年同じ木の下に出続けますよ」
実際に採食するときには、必ず専門家の指導の元で、やってみましょう~!
キノコ狩りの必須道具
撮影機材
カメラはバリアングルモニターがついた一眼レフやミラーレスカメラがおすすめ。撮影用にキノコを掃除するカッターやピンセット、下草を切るハサミも必須。
ナイフ
キノコ採取は刃が柔らかいカッターがいい。木に生えているキノコも採りやすい。小型のビクトリナイフと自作のミニハケは掃除用。
キノコ掃除用の刷毛
土や虫を落とすキノコ掃除には、塗装用のハケが最適。柄を短く切って活用。
防虫ネット付きの帽子
夏の雑木林はとにかく蚊などの虫が多いので、ネットつきの帽子(ホームセンターで購入可)が必須。
ウラジロモミ林で探す憧れのヤマドリタケ
ヤマドリタケは、1500m以上の亜高山帯針葉樹林のウラジロモミやトウヒの周りを探す。モミは深い森が多く、キノコの発生量も多い。
ヤマドリタケ
香り★★★
食感★★★
採取難易度★★★
ポルチーニとして名高い夏キノコの至宝で、希少。カサは橙褐色で光沢があり、柄の表面に網目模様がある。香りが高くパスタやシチューに。
香りの高いヤマドリタケは、洋食との相性がいい。本日のメニューはニンニクたっぷりのアヒージョ。残ったオイルもパンにつけて完食!
毒キノコに要注意! ドクヤマドリ
同じ環境に発生する猛毒菌。大きな違いは柄に網目模様がなく平滑で、カサに粘性がないこと。カサの裏の管孔が傷つくと青く変色する。
カラマツ林で見つかるキノコ
北海道や長野県に多く見られるほか、各地にも植林として点在する。針葉樹でありながら、冬になるとすっかり葉を落とすのが特徴。
ハナビラタケ
香り★★
食感★★★
採取難易度★★
カラマツの根腐れした部分を分解するキノコ。白色〜淡黄色でバレーボール大になり、見つけやすい。クセがなく、煮物や煮浸しなどに向く。
ハナイグチ
香り★★
食感★★★
採取難易度★★
秋に多く発生する、カラマツ林の代表種だが、高地では夏にも少量発生。赤茶色で強いヌメリがある。汁ものやうどん、佃煮にしても美味しい。
毒キノコに要注意! ヌメリイグチ
カサの下のツバが不明確で、柄が(とくに上部)黒褐色の粒点で覆われることで区別できる。体質によって、消化器系の中毒をおこす。
シラカンバ林で見つかるキノコ
北海道及び、中部以北の本州に分布し、高原樹林といえば思い浮かぶ。発生するキノコの種類も多い。ヤマドリタケが見つかることも。
ヤマイグチ
香り★★
食感★
採取難易度★★
カサは黄褐色、柄は太く白色の地に黒褐色の細かい鱗片を多数つける。シラカンバに点々と見られる。無味無臭で、天ぷらや汁物と相性が◎。
アカマツ・コナラの混成林で見つかるキノコ
コナラなど雑木林のなかにアカマツが交じっていることも多く、マツ林のキノコも見られる、キノコ狩りのもっともポピュラーな場所。
ヤマドリタケモドキ
香り★★
食感★★★
採取難易度★★
ヤマドリタケと似ているが広葉樹林に普通に発生し、それほど香りはない。傘の表面はビロード状で柄全体に網目模様があるのが特徴。
アミタケ
香り★★
食感★★★
採取難易度★★
松林に群生するキノコ。秋のキノコだが初夏にも少量発生し、黄土色で平滑。加熱すると赤紫色に変色。舌触りがよく煮物や佃煮に。
毒キノコに要注意! チチアワタケ
アミタケより管孔が細かく、若いときは白い乳液を分泌する。柄の表面が粒点で覆われている。加熱しても変色しないことでも区別できる。
キノコ×キャンプを楽しむ3か条
- キノコを知るには木を知ること
- 少量採取でその日のうちに食す
- 知らないキノコは採らない
※構成/大石裕美 撮影/柳澤牧嘉 協力/荒船パノラマキャンプフィールド https://arafune-camp.net/
(BE-PAL 2022年8月号より)