寒くなるほど自然との距離が広がっていく。雄大で可能性に満ちた大地の魅力とロマンを感じさせる本を2冊ご紹介しよう。
BOOK 01
自然本来の働きで
土壌を豊かにする方法
『土を育てる
自然をよみがえらせる土壌革命』
ゲイブ・ブラウン著 服部雄一郎訳
NHK出版 ¥2,420
近年注目を集めている「リジェネラティブ農業(環境再生型農業)」。健全な土壌を作り自然環境の再生を目指す農業のことで、化学肥料や薬剤などに頼らず、その働きをもともとの生態系機能に委ねる手法だ。
著者は、リジェネラティブ農業のパイオニアとして活躍するアメリカ・ノースダコタ州の農場主。大学で農業経済学などを学んだ著者は、結婚を機に妻の実家の農場で働き始める。後に農場の一部を受け継ぎ晴れて主となったものの、なんと4年も連続で雹に見舞われてしまう。しかし、その不作の年数が結果的に土壌を回復させる糸口となる─。
本書は著者の半生に始まり、肥沃な土壌とは一体どのようなものなのか、土の中では何が起こっているのか、土を作る具体的な方法などが経験に基づき綴られている。土壌の変化や農業における方法転換などは一朝一夕に結果が出るものではない。家畜を取り入れてみたり、種を蒔いて様子を見たり。専門書を読み込み模索し、根気強く土壌と向き合う著者はじつにパワフルだ。土壌作りとリジェネラティブ農業を中心にした本書ではあるが、生き物とのつながり、農業衰退や食糧危機などさまざまな問題側面も見えてくる。
BOOK 02
近くて遠い国、中国
「シルクロード」再び
『シルクロード・楼蘭探検隊』
椎名 誠著 産業編集センター
¥1,320
今年は日中国交正常化50周年に当たるが、著者はまだ中国旅行が一般的でなかった’80年に初めて訪中。その8年後にはテレビ番組の撮影で再び彼の地を踏む。本書はこの2回の旅を振り返り、当時書けなかったことを加えたものだ。丸見え便所、ヘビラーメン、砂漠の洗礼、突然の撮影中止。次々に降りかかる試練(!?)も面白がり柔和に対応していく。見知らぬ土地への好奇心がかき立てられる。
※構成/須藤ナオミ(BOOK)
(BE-PAL 2022年8月号より)