いつかは行きたい!イタリアの世界遺産ドロミティの楽しみ方
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    2022.08.28

    いつかは行きたい!イタリアの世界遺産ドロミティの楽しみ方

    ドロミティ、カティナッチョ山群のプリンチペ峠から。

    今日の舞台は2009年に世界自然遺産に登録された北イタリア3州に点在するドロミティ山塊。尖った岩山が垂直に切り立つ様はロッククライマーにとっての聖地ですが、その絶景が間近で堪能できるように登山道が整備されているため、ハイキングやトレッキングにもイチオシのスポットです。ドロミティを安全に楽しむために、イタリア登山に際して知っておくべき基本も含めてお届けします。

    点在するドロミティ山塊は難易度もピンキリ

    14万ヘクタール以上の広さを誇り、3,000mを超える山が18峰あるドロミティは、ドロマイトという鉱物が豊富なことから、その名が付けられました。尖峰や岩壁とよく表されるように、気軽に頂上を目指せる山ではありません。

    ゴツゴツした岩山の連なるドロミティ山塊。

    しかし観光地化によってリフトやロープウェイが各地に整備されたため、標高3,000m付近まで簡単に上がれる場所もあり、軽装での登山者も問題になってきています。また、今年7月には激しい熱波到来により、最高峰マルモラーダ(3,343m)で氷河が崩れ落ち、大規模な雪崩が発生。11人ものアルピニストたちが犠牲となりました。当たり前のことですが、ドロミティを訪れる際は、数多くある登山道の中から適切な難易度を選び、必要な装備等をしっかりと把握した上で望むことが重要です。

    山群に目星を付ける

    「ドロミティに行ってみよう!」と思い立ったら、まずは山群選びから。広大なドロミティでは山群ごとに名前が付けられていて拠点となる町や登山口もさまざまです。

    ドロミティで一番の人気を誇るトレ・チーメ・ディ・ラヴァレード(Tre Cime di Lavaredo)は、初心者でも簡単にトレ・チーメ(3つの頂)を周回できる。

    標高3,000m以上の頂の中で、最も低難度と言われるセッラ山群(Gruppo del Sella)。

    プエツ山群(Gruppo del Puez)の頂上Piz de Puezより(標高2,913m)。

    プエツ山群から望むセッラ山群(左)とサッソルンゴ山群(Gruppo del Sassolungo、中央)。

    ここからは、筆者が先日登ったカティナッチョ山群を例に、登山道の様子を見ていきましょう。約1.1万ヘクタールに広がるカティナッチョ山群はローゼンガルテン(独語)の名でも知られる人気のエリア。今回はリフトを乗り継いで標高2,000mまで上がり、そこから歩いてぐるっとリフト乗り場まで下山するコースを選びました。

    今回のコース: Pera(リフト乗り場)標高1,318m ⇒  3つのリフト乗り継ぎ ⇒ Ciampedie 同2,000m ⇒  Vajolet 同2,243m ⇒ Passo Principe 同2,601m ⇒ Passo di Antermoia 同2,770m ⇒ Rifugio Antermoia 同2,496m ⇒ Pera 同1,318m。

    このリング状のコースは標高2,770mの峠が最高到達地点とそれほど高くはありませんが、1,300m地点までの下りが長く、コースタイムは7時間半。疲れの溜まった終盤に急で険しい下りが続くため、決して楽ではありません。

    リフトを降りてすぐにこの絶景。

    分岐点では道標に注目!

    Rif.はRifugioの略で山小屋の意。Passo/Pasは峠のこと。Via ferrataやEEAは上級者向けなので要注意。

    登山道はそれぞれナンバリングされており、分岐点には必ず道標が立っています。そこには登山道の番号に加え、目指すべき山小屋や峠の名前、さらに目安の所要時間が書かれているため、励みにもなるものです。ただし”Via ferrata””EEA”とあったら気をつけましょう。ハーネスやロープ、カラビナ、ヘルメットなどの装備着用という主旨で、上級者向けの道であり、安易に足を踏み入れてはいけません。

     山小屋を目的地に設定する

    頂上に登るのが難しいドロミティでは、山小屋を目的地として往復する登山者もたくさんいます。カティナッチョ山群では、リフトを降りたCiampedieから1時間強で着くVajoletの山小屋までは難しい箇所もなく、初心者にもピッタリでしょう。

    初心者や子ども向けの登山道も整備されている(リフトを降りたCiampedieからRifugio Vajoletまでの道)。

    登山道からはずっと圧巻のパノラマが続くため、この山小屋でランチ休憩をとるのを目的として、リフト乗り場から往復するだけでもドロミティを満喫できるはずです。

    標高2,243m、Rifugio Vajoletからも楽しめるパノラマ。

    また、しっかり歩きたい方はこちら、標高2,601mの峠にある山小屋Passo Principe。カティナッチョ山群の中心部に位置するため、もっと上を目指す方にも最適の拠点と言えます。

    カティナッチョの中心部、プリンチペ峠(標高2,601m)に位置するRifugio Passo Principeは縦走の拠点に最適。

    なお、一般的にrifugioと呼ばれる場所は宿泊可能で、カティナッチョ山群だけでも15か所以上あります。雰囲気も良く、縦走したい方やドロミティをゆっくり堪能したい方には山小屋宿泊もオススメです。

    紅白の印を辿りながらザレ場を進む

    木々がなく、岩山の中を歩くドロミティ登山。

    岩山であるドロミティは、日陰が少なく、太陽光がジリジリと照り付けてきます。日中の暑さは厳しく湧き水もあまりないため、水を多めに持って行くのが賢明。他の山々と同様に、夏の晴れた日の日光対策及び防風・防寒は必須です。

    登山道は石がゴロゴロとしたザレ場やガレ場が続き、滑りやすい上、登山道がわかりにくい場合もあります。

    石だらけの登山道は、急で滑りやすいところも。

    道に迷わぬよう要所に紅白の印があるため、それを辿るように進んでいくのがポイント。しばらく印がない、と感じたらコース外に出ている可能性が高いので、印のある場所まで一旦引き返して慎重に確認しながら出直したほうが良さそうです。

    正しい登山道には必ず紅白のサインが記してある。

    緊急時の電話番号は112。これはドロミティに限らずヨーロッパ共通の番号です。自己責任が基本のヨーロッパでは、もし救助ヘリを要請するような事態となれば、出動時間を換算されて莫大な費用の請求が来ます。とはいえ、しっかりとした準備、無理のない計画と心構えがあれば大丈夫。この魅力たっぷりのドロミティをぜひいろんな角度から味わってみてください。

    登山の基本を押さえて、壮大なドロミティへ繰り出そう!

    私が書きました!
    イタリア・ヴェローナ在住ライター
    新宅裕子(海外書き人クラブ)

    東京のテレビ局で報道記者を務めた経験を活かして食やワイン、伝統文化、西洋美術等を取材し、ガイドブックにはないイタリアのあれこれやマンマ直伝のレシピを紹介中。訪れた国は45か国以上、47都道府県制覇の旅好きでもある。休日には登山やキャンプ、キノコ狩りなどのアウトドアを楽しみ、いつかアルプスの麓で山小屋を営むのが夢。海外書き人クラブ会員https://www.kaigaikakibito.com/

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