3年5ヶ月振りとなる新作『Extended』をリリースするユアソングイズグッド(以下YSIG)。
結成から20周年を迎えるメモリアルイヤーを前にリリースされた最新作について、リーダーのサイトウ”JxJx”ジュンさんにインタビューを敢行!
まずは前編として、新作のあれこれを根掘り葉掘り伺ってきました。
——前作『OUT』から3年5ヶ月振り。お待ちしてました。前作と比べると、最新作『Extended』はどのような方向を目指したのでしょう。
サイトウ まず『OUT』は、バンドとして1つのトーンをやっとまとめることができた作品だったんです。ただディテールを見てみると、一曲の中にいろいろな要素とアイデアが詰め込まれていた。情報が多いといいますか。僕はここ4、5年ダンスミュージックをよく聴いているんですけど、それらはもうちょっとシンプルな要素で構成されていると感じていて。自分のバンドでも、もう少しアイデアを削ぎ落としてどこかにフォーカスしたら、さらに踊れるものができるんじゃないかな、と。で、どこをフォーカスするのかじっくり探っているうちに3年半…。と、まあ、カッコつけていうとこんな感じです。実際は、どこにフォーカスすべきかわからなくて時間がかかってしまった、というのが正直なところですね。
——結果的にフォーカスしたのは、どこの部分だったのですか。
サイトウ バンドの演奏のテンションをもう少し緩めるという部分ですね。もう少し緩やかなグルーヴに持っていくこと。そのために情報を減らすこと。その要素を少なくするという作業は難しかったですね。これで本当に足りてるのかな、という不安をいつも感じながら作っていました。
——結果的に、スカッと晴れわたった天気のいい日によく似合う気持ちのいいゆる〜い感じに仕上がりましたね。
サイトウ そうですね。結果、要素を減らしたその隙間に、気持ちのいい雰囲気を入れ込むことができたかもしれません。これまでは具体的なアイデアにフォーカスすることの方が多かったのですが、今作はムードだったり、演奏の程よいテンション感だったり、もう少し抽象的なことにフォーカスしてみようと。
——タイトルは『Extended(拡張する、広がる)』と名付けられてますけど、中身としてはフォーカスしていったわけですね。あえて反対の意味のタイトルを付けた理由ってあるのですか?
サイトウ まず、こうぐーっと1つの要素に寄った方が、抜けのいいものができるんじゃないかって感覚があったんです。1つのことにフォーカスすると余計なことをしなくなる。で、同じグルーヴだけを繰り返したりしてると、余計な装飾がなくなって、結果的に空間が広がっていく感覚があって。そこが気持ちいいところだと思うんです。その感覚を表現する、何か言葉自体に広がりがあるものはないかなと考えた時に、僕らの音楽的な部分にも、表現したかったムードにもぴったりくる言葉だと思って選びました。
——今回は曲名に南の島を連想させるようなものがいくつかありますが、南国の音楽の影響っていうのはあるのですか。
サイトウ もちろん音楽的な側面もありますが、今回はどちらかと言うと、温度感だったり、抗えない気持ち良さという感覚としては影響が大きいかもしれません。僕はこの何年かハワイが好きでよく足を運んでいるんですが、3年くらいかかってようやく音楽の中にあの緩い雰囲気が落とし込めるようになった。借り物じゃなくて、自分の引き出しにちゃんと入っているものだなって感じられるようになってきたんです。
——他のメンバーのみなさんもハワイ好きなんですか?
サイトウ いやいや。僕が勝手に暴走して、何回も行っているだけで。でも実際に行ったら、みんな好きになっちゃうんじゃないかなとは思ってます。
——一緒に行って体験を共有してこれって楽しいよね、ではないならば、サイトウさんがそういうところで経験してきた気持ちのいい感覚を、メンバーに伝えるのは難しいでしょうね。
サイトウ これは、屁理屈かもしれませんが、僕はバンドの醍醐味=バンドマジックって、自分の想像を超えるレスポンスがメンバーから返ってきたときにあると考えているんです。自分が思っていたより、結果カッコよくなってしまった、みたいな。超具体的に、こういう世界観でっていうのをメンバー間で共有する方がきっとやりやすいんでしょうけど、もうちょっと抽象的なやりとりをして、自分のイメージを良い意味で裏切ってもらって、思わぬ方向に伸びていくときにこそさらに面白いものになるんじゃないかと。すごく時間かかるし、すごく面倒くさいやり方なんですけど、思いがけない形になる瞬間は苦労が報われる。自分の想像だけじゃ辿り着けないものですから。
——来年でバンド結成20年とのことですが、そのやり方は昔も今も変わらないYSIG式の方法なのでしょうか?
サイトウ なんだかんだ、これでずっと続けてきちゃってるところありますね。本当面倒臭いやり方してるなって思いますけど。
——他に今作を作るうえでメンバー全員で共有していたテーマはありますか。
サイトウ 大きくダンスミュージックですが、キーワード的なものとしては1つ、レゲエがありました。自分たちの中で、これまでの感覚とは別なものとして演奏することができた。ディスコダブのようなアンダーグラウンドなダンスミュージックだったり、いろいろな音楽をDJ的な感覚で幅広く取り込みつつレゲエってものを演奏した時に、新鮮なものとして出来上がった感覚があります。そこに次のヒントがあるんじゃないかと感じながら作っていました。初回限定盤に入っているリミックス盤も、ダンスミュージックのカルチャーを含めて、僕らの音楽をどうやって接続させることができるか考えてお願いしたい人たちに声をかけました。皆さんそれぞれすごかったです。こういうやり方が確かにあるよなって気づかされて。結構、海外のDJの方がかけてくれているって聞いたりして、うれしいですね。
——そういう意味でもすごく広がっている感じですね。そんな今回のアルバムを象徴する曲を教えてください。
サイトウ やっぱり、『Waves』っていう最後の曲ですね。前のアルバムからいろいろ探りながら出来上がった曲なんですよね。今回、進むべき形を決定づけてくれたのはこの曲だった。さっきお話ししたテンション感だったり、抗えない気持ち良さをうまく落とし込めたかなと思います。
——シンプルですが、9分オーバーという長さがあっという間に感じるくらい気持ちいい曲ですね。
サイトウ シンプルな音の構成要素、ワンアイデアでずっと広げていくというイメージを形にできました。YSIGの場合、難しいのは7人組ということ。1つの目的を持ってメンバーが集まる、例えばオルガンジャズのトリオのようにこの音を出したいから、オルガン、ドラム、ギターの編成でやるみたいにできるわけではない。友達同士で集まっちゃっているので、いろいろなところで辻褄が合わないんですね。だからこそ、このメンバーでやる必然性があるアンサンブルがやりたいというのが、今作の大きなテーマの1つでした。それがレゲエだった。この7人だからこそ出せる自然な感じを探っていて、それが上手く出たのがこの曲なんです。
——7人もいると、やはりやりたいことはバラバラ?
サイトウ 『OUT』より前は、本当にバラバラでしたね。でも、前作でバンドとしてのトーンを1つにまとめる面白さに目覚めることができた。今はだいぶスムーズです。20年たってやっと。皆さんにとっては、アルバムを出すごとに結構音が変わるバンドだなと思われてるかもしれません。でも、僕らの感覚としては、自分たちが思うかっこいいことだったり、聞きたいなと思うものを作るとか、オリジナリティがあるものにするとか、やりたいことは昔も今も変わらない。偉大なる先人の皆さんが作った素晴らしい音楽に、自分たちが持っている何かを加えて音を作っていきたい。それは永遠変わらないでしょうね。そのあたりのさじ加減は、年と共に段々上手くなってきてるのかな、と思いつつ。
さらなる境地に到達した生音ダンスミュージックの決定盤
『Extended』
初回限定盤(2CD) ¥3,348(in tax)
通常盤(1CD) ¥2,808(in tax)
YSIG式のダンスミュージックの新解釈を世に提示した、前作『OUT』から早3年5ヶ月。満を持してリリースされる最新作『Extended』は、さらに肩の力の抜けた“緩み”を加え、気持ち良く、しかも踊れる大人なダンスミュージックに仕上がっている。初回盤のみ、最高のリミキサー陣を迎えた5曲のRemix音源収録CD付き。
YOUR SONG IS GOOD Tour Information
『Extended』Release ONEMAN TOUR 2017
5/20(Sat) 名古屋 CLUB QUATTRO ジェイルハウス:052-936-6041
5/28(Sun) 仙台 enn 2nd ノースロードミュージック:022-256-1000
6/3(Sat) 大阪 梅田Shangri- La SMASH WEST:06-6535-5569
6/11(Sun) 福岡Early Believers ABOUT MUSIC:092-791-9992
7/1(Sat) 渋谷 WWWX VINTAGE ROCK:03-3770-6900
ALOHA GOT SOUL来日イベント
『SOUL TIME IN TOKYO』
5/26(Fri) a-bridge(三軒茶屋) http://www.a-bridge.jp
5/26-31(Fri-Wed) TOKYO CULTUART by BEAMS http://www.beams.co.jp/tokyocultuart/
文=池田 圭 写真=小倉雄一郎
↓ 後編はこちら!
【SMALL TALK】vol.8 YOUR SONG IS GOOD サイトウ”JxJx”ジュン インタビュー(後編)