【SMALL TALK】Vol.3 蓮沼執太インタビュー
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    2016.03.03

    【SMALL TALK】Vol.3 蓮沼執太インタビュー

    b*p

    蓮沼執太

    2006年、大学4年生のときにアメリカのインディーズレーベルでデビュー。電子音楽家として音楽活動を始め、エレクトロニカな作品を作っていた蓮沼執太さん。2014年には、15人編成の「蓮沼執太フィル」のアルバム『時が奏でる|Time plays-and so dowe』を発表。映画や展示、舞台での音楽を提供したり、展示発表も行ない、近年は坂本美雨、赤い公園、Negiccoへの音楽プロデュースもつとめている。

    そして2016年、蓮沼さんが新たにチャレンジするのは、自身が歌う音楽。コーラスではなく、全曲歌詞があり、彼が歌っている。

    インストや電子音楽のイメージがあった彼が新たにチャレンジする“歌もの”について、話を聞いた。

    歌うことは挑戦です

    ――『メロディーズ』を聞いたとき、すべて歌詞入りで蓮沼さんが歌われていることにビックリしました!

    「その都度、その都度、新しいことをチャレンジしようというのがいつもあって。今まで『蓮沼執太フィル』でも歌がありましたし、ラップが入っていたりする曲もあるんですけど、どちらかというと、アンサンブルの音色のひとつとして声の要素があるという感じだったんですね。歌詞もあるけれど、声はあくまでメロディーとしての要素が強くてどちらかというと、音楽的な作り方で。でも今回は、きちんと歌ものというか、歌が真ん中にドスンとくるような、アルバムを作りたいなと思ったんです。とはいえ僕は、シンガーソングライターではなく作曲家なので、歌ものを作るというより『声』という素材を使って、音楽を作った感じもありますね。

    ――ご自身で歌いたいという気持ちが芽生えたのですか?

    「それはないです(笑)。僕の場合、このアルバムに入っている全曲を別の人に歌ってもらってもいいんですよ。Feat.イルリメさんとかね。ただ今回は、自分で全部歌うということにスタイルというか、こだわりと意味があって。自分で歌うというのは、カラダと向き合うんですよね。歌っていると限界を感じるわけですよ。こんなピッチ出ないよとか。声は直接自分のカラダから空気振動になって、発せられるわけじゃないですか。当たり前のことなんですけど、そのひとつひとつの動作が重要になってくる。それを曲を書く側が自分自身でやってみるというのは、わりと音楽を作るうえで大切なことでは、と思い始めまして。

    それに、やっぱり音楽社会のなかで歌ものって中心にあるものじゃないですか。ポップスでも、民謡でも、クラシックではオペラが重要だったり。だから僕もそこに向かって発信してみたかったんです。歌いたいというより、このアルバムは挑戦という感じ」

    ――2015年は半年間、ニューヨークに行かれていましたが、その影響はありますか?

    「直接的な影響はないですね。でも、長期で海外に住むということは今までなかったし、わりと自分がやってきたことを整理する期間でもありました。ニューヨークは、コンテンポラリーアート、音楽、舞台などの芸術ごとが盛ん。そういうものをリサーチする目的でニューヨークに行っていたし、それこそ毎日遊びに行っていたので、絶対に刺激になる部分はあったと思います」

    ――毎日! それはすごいですね。とくによかったのは何ですか?

    「音楽だと、カエターノ・ヴェローゾのライブがすごかったですね。もう、おじいちゃんなんですけど、カラダがムキムキで。ノッてきたら、上半身ハダカで踊り出してました(笑)。『BAM(Brooklyn Academy of Music)』っていう、ブルックリンにあるシアターでのライブだったんですけど、昔からの古い建物をリノベーションして使っているコンサートホールで、ステージの周りにはきれいなイスがあって。普通はクラシックって座って見ると思うんですけど、僕たちが入った時点で総立ち! 音がまだ鳴っていないのに、みんな踊っているんですよ。『なんなんだこれは!』と思って(笑)。その日は、『Nonesuch Records』っていうクラシックのレーベルの50周年パーティーで。スティーブ・ライヒからデヴェンドラ・バンハートまでさまざまなコンサートの翌日だったので、その光景には驚きました」

    ――ニューヨークでは、ライブとかが日々行なわれているのですか?

    「そうですね。本当、日々やっているんですよ! 小さいところから大きいところまで。ポップなところから、インデペンデントなところまでとか。地下のどうしようもない電子音楽とかもおもしろいですよ」

    ――蓮沼さんは、ジャンル問わず見る派なんですね。

    「わりと、なんでもいけますね。コレだけを集中的に聞くっていうより、振り幅を広くして聞いている感じです」

    ――音楽を始める前から、いろんな音楽を聞いていたのですか?

    「中学校のときとかって、人が知らない音楽を知ってやろうみたいな気持ちがあって。人が知らない◯◯を知りたいみたいな。それで自慢したい。お前とは違うんだぞという気持ちが強くて。ひたすら調べていましたね。お店にも行っていたし、今より圧倒的に雑誌があったからそれを読み漁っていました。そこでピックアップされているミュージシャンの音楽を『ディスクユニオン』とか『TOWER RECORD』とかに行って、聞いていました」

    ――知らない音楽の話をしたときの友だちの反応は?

    「なにそれって感じ(笑)。中学校のときは、DJブームで、ターンテーブルを持っていたので、それでみんなで聞いていたりしましたね」

    ――最初に音楽を作ったのは、DJのミックスとかですか?

    「いや、音楽はエレクトーンが最初かな。家におばあちゃんが遊び道具として買ってくれたエレクトーンがあって。リズムとかが作れたんですよ」

    ――それが楽しくて音楽活動をするように?

    「楽しくは…なかったですね(笑)。楽しかったら、もっとハマっていたと思う。それこそ、タブラの練習のためにインドへ数ヶ月行くU-zhaanのようにやると思います。でも僕は、そこまで本気にはならなかったんですよね」

    ――そうなんですか(笑)。ギターを始めたいとかの気持ちは?

    「ないないない! 音楽を聞くのは大好きだったので、とにかく聞きこんではいました。でもじつは…当時はミュージシャンがカッコ悪いと思っていて…。ロックもパンクも大好きだったんですよ! ただ僕が好きだったのは、ワシントンDCで『Dischord Records』というレーベルをやっていた、『FUGAZI』というバンドのイアン・マッケイという人で。東京でダラダラと生きている僕には、とてもその人みたいには到底なれないと思ったわけですよ。だから、ミュージシャンになりたいという気持ちは一切なかったんです」

    ――それだけ音楽が好きなのに、バンドを組もうとかは思わなかったんですね。

    「中学の学祭で友だちがライブをやるから、キーボードを弾いて欲しいと言われて参加したことはあります。オアシスをやりたいって言われて、譜面はなかったんですけどCDを聞いて弾きました」

    ――え、そんなことできるんですか!?

    「子どもの頃から鍵盤を触っていたから、音楽を聞いて覚えて弾けるでようにはなっていたんですよね」

    ――生まれ持った才能ですね! ミュージシャンにはなりたくないと思っていたのに、今音楽活動をされているのは、どういう経緯が?

    「うーん。サラリーマンになりたくなかったからですね(笑)。当時は子どもなんで何も知らなかったということだけなんですが、今はサラリーマンという職業のすばらしさは当然わかっていますよ! 僕、中学から電車通学だったんですけど、毎日埼京線の満員電車に乗っていて。小さな子どもがあんなギュウギュウのなか通っているんですよ。今思っても泣けてきます。それが嫌で、大人になってもやりたくないなぁと思っていたんですね。あとは、自由でありたいっていう気持ちがずっとあって。何かに属してしまうと、インサイダーになってしまうので自由がきかなくなることがあるし。それがおもしろければいいんだけど、おもしろいことは少ないと思っているんです。いつまでもずっとフットワーク軽いほうがいいかなって、そんな理由ですかね」

    ――ニューヨークに行ってみたり、まったく新しいアルバムを作ってみたり、今の蓮沼さんは自由な感じが伝わってきます。

    「そうですね。飽き性ですから、常に新しいことを求めているかもしれません」

    音楽のルールを守って作品を作っていきたい

    蓮沼執太

    ――新しい音楽を作るときには、やっぱり新しい音楽を聞くのですか?

    「いろんなタイプがいると思うですけど、ミュージシャンって、この人いいなっていうのを参考にしたりする傾向が多いと思うんですね。それで発展してきたっていうのもあるし。90年代とかとくにそうだと思うんですけど、サンプリングもそうだし。僕はどちらかというと、そういうものよりか、マナーとか手法みたいなものを応用するという感じで作曲しているんです。ポップスなんてまさしくそう」

    ――音楽を作るときに「マナー」(流儀・しきたり)があるんですね。

    「ルール、マナーはジャンルによっても違いますよね。もちろん、それを無視したり反対のことをやってもおもしろいですけど、僕の場合は、ある程度形式にのっとってやるほうが好き。そこを壊すことで出来上がるものをオリジナリティだとは思っていないです。形式や儀式などの歴史を否定して作るというおもしろみも当然あるんですけど、僕はあまりやらないんです」

    ――マナーは、どこで学べるんですか? いろんな音楽を聞いているとわかるものなんでしょうか?

    「どこで学ぶんだろうね(笑)。単純に学術的なことは、独学で勉強していたりしますね。やっぱり、たくさん音楽と触れ合っていると、自然にわかる部分はあると思います。

    簡単な例をあげると、蓮沼執太フィルで『ZERO CONCERTO』という曲があるんですけど、7/6拍子から始まるんですよ。1楽器ずつ入ってきてスタートするんですが、拍子をズラして、ポリリズムの構造にしていくんです。全員が集まったところで4/6拍子にする。そういう発想は何も勉強をして生まれたものではない気がします。フィールドレコーディングにしても、SE(Sound Effect=効果音)を使ったり、サンプリングしたりするだけじゃなくて、音自体を変調させることによって好みの音色を作ってみたりとか。マナーだったりアイデアの発想は自然に身についているものなんでしょうね」

    ↑ZERO CONCERTOはこちら!

    ――真面目なんですね。

    「ははは、真面目だね(笑)。もっとバカらしく考えられたらいいですよね」

    ――毎回、規則正しく作っていくのですか?

    「そこまで規則正しくはないですよ。他のプレイヤーと一緒に作るときは、自由に演奏してもらったり、即興的な要素も大切にしていますよ。アルバムに参加してもらったドラムの千住宗臣さんに『この曲は全部自由にやってください』ってお願いしたら、それがめちゃくちゃよくて! 『起点』という曲は、ドラム・ソロから始まるんですけど、たまたま千住さんがバーってやっているところをそのまま録音して使っていたりします」

    自分の作品はアルバムのため、プロデュースは相手のために音楽を作る

    蓮沼執太

    ――近年はプロデュースも多くされていますが、作品の作り方に違いはありますか?

    「『メロディーズ』に関しては、自分のために作ったというよりアルバムのためにって感じです。プロデュースの場合は、その人のために作っていますね。だから、気持ちとか、作り方は当然違うかもしれませんよね。たとえば、演劇の音楽を作るときに、演劇のディレクターのためには作らないわけですよ。ディレクターもその作品を作っているので、僕も作品のために音楽を書く。プロデュースの場合は、その人のために書いている感じがしますね」

    ――アルバムのためってどういうことですか?

    「自分の作品を作っていると言ってもいいんですけど、なんか違う。というのも作っている最中、何度も何度も繰り返し聞きながらチェックし作曲しているアルバムは、自分のカラダの一部みたいなところにいるんです。それが無事に完成すると親里を離れるようにアルバムは僕の元から巣立っていきます。あれだけ熱心に聞いていた音楽を一切効かなくなるんです。そう思うと、僕は自分自身のためにアルバムを作っている感じでもないんですよね。不思議ですね。『CDリリース』っていうのは、本当に自分の手元からリリース(放たれる)されるんですよ。自分と作品は直接的に関係ない存在になる。というか今、まさにそういう状態です(笑)。ライブをやると、また戻ってくるんですけど、それもまた違う感覚で。CD作品がモノとして存在するって感じもあるのかもしれません」

    ――どちらが難しいですか?

    「どっちも難しいですけど(笑)。ガシガシ職業プロデューサーとしてやっているわけでもないので。そちらは、わりと楽しくやらせてもらっているというのがありますね。でも自分じゃない誰かのために音楽を作っていく、プロデュースをしていくというのは楽しいです。坂本美雨さんもNegiccoも赤い公園も楽しくやらせていただきました。そう思うと、自分のために曲を作るほうが楽しい感覚は少ないかもしれないですね」

    ――でも、曲名からは楽しさが伝わってきますね(笑)。たとえば「クリーム貝塚」とか!

    「あれは歌詞を書いているときに、たまたま貝塚を見学する夢を見まして(笑)。そこにサワークリームがジュワ~って隅のほうで出ていたんですよ! それを覚えていたので、起床してすぐに「貝塚、クリーム」とメモを残して曲に活かしました(笑)」

    ――坂本美雨さんをプロデュースするきっかけも、坂本さんに曲を作る夢を見たからでしたよね。

    「そうそう。音楽室で美雨さんの曲を作っているという夢を見て、なんとなく断片を覚えていて、すぐにラフな感じでメロディーを弾いて、録音して送ったんですよね」

    ――音楽作りに夢が反映されちゃうのっておもしろいですね(笑)。

    「夢っていうのは、自分のなかに存在している連続したイメージみたいなものなんですよね。いいなと思うインスピレーションは大事にしています。もしかしたら、寝ているときも音楽のことを考えているのかもしれないですね」

    Staubの鍋を使って自炊しています!

    蓮沼執太

    ――『b*p』9号がゴハン特集だったので、蓮沼さんのゴハン事情も教えて下さい!

    忙しくないかぎり、自炊していますよ! Staubの16cmと20cmの鍋を2つ持っていて、それで料理を作っています。煮込みもするし、揚げ物もできるし。からあげとか作りますよ。自分で作ったほうがヘルシーですからね。あ、でも料理男子ほどじゃないですよ(笑)。U-zhaanのほうが断然上手! カレーが本当にうまいからね。手際もいいし」

    ――自炊派とは意外でした! 何系の料理が多いんですか?

    「和食かな。外食も和食が多いです。そばとかわさびとか好き。ジャンクフードも好きですけどね。そば屋だったら神田にある『神田まつや』がおすすめ。たくさん肴を頼んで、日本酒とか飲みつつ、最後にそばを頼むと。1日の終わりに帰って映画でも見るかなぁって感じに気分が良くなります。ひとりでも行くし。ひとりで呑んだりもするお店ですね」

    ●蓮沼執太(はすぬま・しゅうた) Profile

    蓮沼執太

    1983年生まれ。東京都出身。作曲家、プロデューサーとして活動。今までに7枚のソロアルバムと「蓮沼執太フィル」として『時が奏でる』をリリース。2016年2月3日にニューアルバム『メロディーズ』を発売。初めて全曲歌詞入りのポップスアルバムとなっている。3月19日の札幌を皮切りに全国ツアーを開催予定。http://www.shutahasunuma.com/

    ◎文=中山夏美 撮影=小倉雄一郎

     

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