日本には車窓から絶景が見られる路線がいっぱいある。
今回はそんな列車に乗って辿り着いた先で、自然遊びも満喫する旅に、出発進行ー!!
旅した人/フォトライター 矢野直美さん
釧路湿原でレンタサイクリング& 動物ウォッチ
JR釧網本線
東釧路〜網走
約166km
鉄道を仕事と趣味にしている私にとって、ローカル線そのものがソト遊びであり、スポーツであり、アウトドアです。
山岳地帯や渓谷、海岸沿いといった多彩なフィールドを走る鉄道を追いかけて、急斜面を登り、渓流を渡り、森を歩く。時には川で泳ぎながら鉄橋を渡る列車を待ち、夕景撮影ではそのまま満天の星を観察したり……。沿線にはカヌーやシャワークライミング、釣りやキャンプやサイクリングなど、地域性を生かした遊びも存在します。
そういった路線のひとつである北海道のJR釧網本線は、「一度は乗りたいローカル線」「絶景のローカル線」といったランキングで多くの場合に1位に選ばれる王道路線。
今回、旅の始まりは釧路駅。港町特有の潮風に包まれながら列車に乗り込み、町を離れ、日本一大きな湿原・釧路湿原へ。湿原の緑と青い空が車窓いっぱいに広がります。
「シカ、でかい」
そうつぶやく男性。
「蝶、可愛い」
笑顔になる女性。
「すごい、すごい」
「きれい、きれい」
窓に張り付きながら同じ単語を繰り返す人々。
人は感動すると言葉が単純になり、子供のようになってしまう。私も目の前の風景に「わぁ」と感嘆詞をリピートしながら、湿原の駅、塘路に降り立ちます。
矢野さんの旅道具
釧路駅からスタート!
駅で自転車をレンタル
「こんにちは」
駅舎内で喫茶店とレンタサイクルを経営する森田真史さんとは旧知の仲。ヒグマの目撃情報や周辺の道路事情などを聞き、自転車を借りてサイクリングを開始。湿原に生息するオジロワシやオオワシ、タンチョウといった野鳥を目にする確率が高いのは晩秋から春にかけて。勢いよく緑が生い茂る季節に姿を発見することは難しいけれど、遭える可能性がある釧路川やアレキナイ川へ。何度も川辺に自転車を止めて双眼鏡を覗きますが、発見は叶わず。それでも湿原を渡る風が最高に心地よく、キタキツネやエゾシカといった北の動物たちが姿を見せてくれます。
列車と並走!
湿原の緑と青い空に感動!スローな自転車旅がぴったり
野生の動物たちに出会う
バッタリ遭遇!
かわいいエゾシカ
国道沿いの駐車場に自転車を止め、鉄道好きにとっては撮影スポットで、それ以外の旅人にとっては湿原を見渡すビューポイントの「サルルン展望台」へ。この山道で、知識としては熟知していた「風の通らない森林には蚊が多い」を痒いほど、つまり痛いほど実感。羽音がサラウンドで聞こえるほどの蚊の群れから、ハッカ油などで身を守りつつ木立の道を登っていきます。
やがて目の前に開ける湖沼風景。その中をカタンコトンと走る鉄道。その眺めはまさに別天地。「ローカル線、最高!」と思わず拍手していました。
列車が見られるサウナでリフレッシュ!
塘路駅の横、少し高台に位置。鉄道輸送用のコンテナを改造してサウナに。入り口にはSLのハンドルをイメージした取っ手も。通称「SL風サウナ」。夜は列車が光を描いて遠ざかる銀河鉄道のような情景を目にできる。
サウナ&ゲストハウス THE GEEK
北海道川上郡標茶町塘路原野北7線49番43
1人1泊、朝食付き7,700円~(ドミトリー6,600円~)
サウナ利用3,300円~
https://thegeek.jp/
※構成/矢野直美
(BE-PAL 2022年10月号より)