
新広駅~安芸阿賀駅間の黒瀬川に架かる鉄橋を走る呉線。車窓に波穏やかな瀬戸内海の多島美が展開する。
マイペースで気持ちいい旅を楽しむなら、ローカル電車で行くのがおすすめ。さらに外遊びと組み合わせれば楽しみは倍増! 今回は旅先でおいしいものを探すのが大好きな、ライターの松村由美子さんがガイドします。
町並み散策からハイキングまで
瀬戸内海欲張りトリップ
JR呉線
海田市〜三原
約87km
旅した人
ライター 松村由美子さん

旅に行く前には、必ず名物をチェックする食いしん坊。今回の旅も、途中下車をして、地元で人気のおやつをGET。ザックにしのばせ、レッツ登山!
松村さんの旅道具

SOTOのマイクロレギュレーターストーブ FUSION Trek、ユニフレームのコーヒーバネットなど、山コーヒーが楽しめる道具を準備。
JR呉線は、広島県の海田市駅と三原駅を結ぶローカル線。車窓から穏やかな瀬戸内海を眺められることから、三原駅~広駅間は、「瀬戸内さざなみ線」という愛称で親しまれている。
沿線には海軍で知られる呉や、古い町並みが残る竹原など、観光スポットも多い。アウトドア派にもオススメで、あちこちの駅から、徒歩あるいはバスを使って低山登山が楽しめる。
町歩きも自然も楽しみたい私。列車は1時間に1本程度しかないので、時刻表とにらめっこしながら、旅の計画を立てた。
まずは、広島駅からJR呉線直通の電車に乗り、50分ほどのかるが浜駅で途中下車。駅前のビーチをのんびり散策。その後、呉駅まで移動し、市民熱愛の「福住フライケーキ」と「鳳梨萬頭」をGET。1時間ほど電車に乗ったら竹原駅で下車。竹原は江戸時代には製塩、酒造、海運などで繁栄した町で、その面影を残す古い町並みが保存されている。重厚感のある商家や屋敷が軒を連ね、ここだけ時間が止まっているかのようだ。
竹原で町並み散策

"安芸の小京都"と呼ばれ、江戸時代の町並みが残る竹原を散策。竹原駅からは徒歩約15分。
竹鶴酒造でお買い物

ニッカウヰスキーの創業者、マッサンの生家へ。お酒を購入し、会長や若奥様と記念撮影。
名物でランチ

酒粕を生地に練りこんだ「純米吟醸たけはら焼」。ほのかに酒粕の香り。
竹細工体験

「まちなみ竹工房」で竹細工体験(予約不要)。複雑な作業に汗……。

四海波かごは2500円。
旅の安全を祈願

石のお地蔵様を抱えてみて、想像したより軽いと願いが叶うという「お抱え地蔵」にお参り。登山の成功を祈る(必死)。
ハイキングスタート
次の目的地は竹原駅から20分ほどの忠海駅。今回の旅の最大のイベント、標高266mの黒滝山登山が待っている。駅から登山口までは徒歩約20分。山頂まで約30分。楽そうに思えるが、駅前から見る黒滝山は高くそびえ、頂上は岩肌がむき出しだ。1000mくらいあるんじゃないの!? 不安だ~。

忠海駅で下車して、旅のハイライト、黒滝山ハイキングへ。駅から登山口までは徒歩約20分。
楽勝~♡

登山道は整備され、歩きやすく、眺めの良い場所もある。楽勝♡と思ったら、山頂手前で地獄が待っていた⁉

助けて~!

ロープ地獄を必死でクリアし、ついに山頂へ。と思ったら、その先の鎖場も登るはめに。(泣)。

鎖場まであるとは……。
瀬戸内海の多島美が楽しめる黒滝山ハイキング
その不安は的中した。登山道は整備されているが、近年、脂肪の成長著しいこの体。少し登るだけでも息が苦しくなる。途中で休憩をしながら、やっとのことで「山頂広場」へ。やったー。登り切った~。と思ったら、「ここはただの広場。山頂はもう少し上です」と、小倉カメラマン。「もういいじゃん、ここで」と主張するも、「いいわけないでしょ! さ、行きますよ」。お、鬼~!! 肩を落として小倉カメラマンのあとをついていくと、ロープが現われた。ここを直登するってか! ちぎれそうなロープに不安を覚えながら岩をよじ登ると……そこには山頂広場とは比べ物にならない絶景が広がっていた! 眼下に瀬戸内海が広がり、大久野島をはじめ小さな島々が点在している。瀬戸内海って綺麗~。
すると小倉鬼カメラマンが言った。「この先にある岩の先端まで行ってください。あの鎖場がある場所です」。くうぅ。やけっぱちな気持ちで鎖場をよじ登ると、ここはさらに絶景! 天下を取ったような気になれた。標高266m、往復2時間弱でこの景色が楽しめるなんて、コスパ最高(表現が変?)。
ちなみにロープでの直登を回避する迂回ルートもあるので、ご安心を(下山時に見つけた)。

絶景~!!!
絶景コーヒータイム

山頂で飲む淹れたてのコーヒーは格別のおいしさ。本日のおやつは、呉市名物の福住フライケーキ&鳳梨萬頭。
※構成/松村由美子 撮影/小倉雄一郎
(BE-PAL 2022年10月号より)